抄録
イネいもち病の防除にすぐれた効果をもつ浸透性殺菌剤イソプロチオラン(IPT)を用いて,栄養菌糸の生育および寄主体への侵入行動に及ぼす影響を各発育過程を通じて調べた。
IPTを含んだブドウ糖-酵母エキス培地でいもち病菌を培養すると,20ppmではまったく生育せず,10および5ppmでは生育の遅延が認められた。菌糸は形態的に異常となり,厚膜胞子様の細胞が多数観察された。未発芽胞子にIPTを作用させると,2ppmでは付着器は形成されるが,菌糸の侵入はほぼ完全に阻止された。接種後経時的に菌の各発育段階,すなわち,未発芽期,発芽管伸長期,付着器形成前期,付着器成熟期および侵入初期のそれぞれの時期にIPTを作用させると,侵入および侵入菌糸の生育が強く阻害され,胞子発芽および付着器形成はあまり阻害されなかった。