日本植物病理学会報
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タバコ・モザイク・ウイルスに対する植物の感受性に及ぼす接種前の高温と低温の影響
下村 徹
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1977 年 43 巻 2 号 p. 167-174

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抄録

1. N. glutinosa,インゲン(大手亡),Xanthi-ncタバコなどTMVの局部感染宿主の鉢植を,3日間低温(14-16C)に保った後常温(22C)に移して直ちにTMVを接種し,接種後も常温に置くと,接種の前後終始常温に置いた場合に比べ形成される局部病斑の数は著しく減少した。
2. ペトリ皿内に納めたN. glutinosa切取葉の半葉を,3日間低温(17C)に置いた後25Cに移して直ちにTMVを接種し接種後も25Cに置いた場合も,終始25Cに置いた他半葉のそれに比べ病斑数は約1/3に減少した。低温に置く時間を3-8時間に短縮した場合も,病斑数は約1/2に減少した。
3. N. glutinosaの半葉を,高温(36C)に3∼8時間置いた後25Cに移して直ちにTMVを接種し接種後も25Cに置いた場合は,終始25Cに置いた他半葉のそれに比べ病斑数は2.4∼2.8倍に増加した。36Cのような高温でなくとも,30Cに8時間置き接種後は25Cに移した場合,25Cに8時間置き接種後は17Cに移した場合も,終始25Cに置いた場合に比べ病斑数はかなり増加した。半葉を36Cに,他半葉を17Cに17時間置き,接種後はいずれも25Cに移すと,前者に形成される病斑の数は後者のそれの約9倍となった。
4. 接種の前後終始36C, 30C(感染成立後はいずれも25Cに移して病斑を形成させる),25Cまたは17Cに置いた場合には,これらの間で形成される病斑の数に大きな差は認められなかった。
5. 以上の結果から,高温または低温に植物が置かれている間にウイルス感受性が増大或いは低下するわけではなく,高温から低温に或いは低温から高温に植物が移される過程で感受性が増大或いは低下するのではないかと考えられる。以上のような高温または低温処理が,ウイルス感受性に影響を与える機構について検討した。

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