日本植物病理学会報
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43 巻, 2 号
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  • 小泉 銘冊
    1977 年 43 巻 2 号 p. 129-136
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツかいよう病の病斑拡大過程における病原細菌の消長と罹病組織の変化を調べ,宿主抵抗性との関係を検討した。
    1. 感受性宿主では病斑は急速にかつ長期間拡大した。拡大初期の病斑では中心部分が著しく肥厚し,多数の細菌が肥大組織から周囲の肥大していない組織の細胞間隙に移行した。肥大細胞層は病斑中心部から病原細菌の作用で崩壊し,それにともなって病原細菌は一時的に著しく増殖した。拡大後期の病斑では周辺部で細菌の増殖が抑制され,細菌集団は不規則に分裂した細胞層の細胞間隙にしだいに封じ込められた。
    2. 抵抗性宿主では病斑は緩慢に拡大し,早期に拡大を停止した。拡大初期から病原細菌数は少なく,病変細胞は不規則に分裂したものが多く,肥大が軽微であった。病斑周辺部では早期から細菌の増殖が抑制され,分裂した細胞層に速かに封じ込められた。病斑中心部の肥大細胞は初期には感受性宿主の場合と同様に崩壊したが,後期には壊死したのち崩壊し,細菌の増殖は見られなかった。病組織中の病原細菌が死滅すると崩壊部をとり囲んでコルク形成層状の分裂組織が形成された。
    3. 急速に拡大している病斑からは病原細菌が多数溢出し,拡大が緩慢になるに従い溢出菌量は減少した。感受性宿主上の病斑からは抵抗性宿主に比べ,長期間かつ多量の病原細菌が溢出した。
  • 宇杉 富雄, 斎藤 康夫
    1977 年 43 巻 2 号 p. 137-144
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. SDVに感染し高濃度のウイルスを含むペチュニアを接種源として草本植物における寄主範囲を調べたところ,8科22種の植物が感染した。
    2. 感染ペチュニアを用い,Mg-ベントナイトおよび四塩化炭素処理による清澄化,糖密度勾配遠心によりSDVを純化した。ウイルスの凝集を防ぐためcitrate, borate bufferを用いた。
    3. SDVは2∼3時間の蔗糖密度勾配遠心では単一のzoneであったが,6時間の遠心ではTop, Middle, Bottom zoneに分離した。Top zoneは極めて微量であった。
    4. 蔗糖密度勾配遠心を3同反復し,各zoneを単離した。電顕観察の結果,Top zoneはほとんど中空の粒子より成り,Middle, Bottom zoneはいずれも完全な粒子で,両者間に形態の差は認められず,粒子の大きさは3者とも直径約26nmであった。感染性はMiddle, Bottom zoneを混合した場合が最高であった。また,活性希釈曲線はdouble hit curveを示し,MiddleおよびBottomの2成分が感染に関与するものと思われる。OD260/OD280比はBottomがMiddle zoneよりも高かった。沈降係数および浮上密度はMiddle zoneは119Sおよび1.43g/cm3, Bottom zoneは129Sおよび1.46g/cm3であった。
    5. SDVに対する抗血清を作成した。その力価は補体結合反応で640倍,寒天ゲル拡散法で320倍であった。tomato blackring virus, tomato ringspot virus, arabis mosaic virus, cherry leaf roll virus, tobacco ringspot virus, strawberry latent ringspot virus, raspberry ringspot virus, cowpea mosaic virus, bean pod mottle virus, cucumber mosaic virusおよびcitrus leaf rugose virusに対する抗血清は寒天ゲル拡散法でいずれもSDVと反応しなかった。
  • 我孫子 和雄, 岸 国平, 芳岡 昭夫
    1977 年 43 巻 2 号 p. 145-150
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    昭和48年11月頃より奈良県および三重県のポットマム栽培の温室で,オキシカルボキシン剤の白さび病防除効果に顕著な減退傾向がみられたので調査した結果,本剤の防除効果が劣った温室内には耐性菌が発生していることが確認された。白さび病菌の薬剤耐性の検定は冬胞子発芽抑制効果,小生子形成阻止効果および小生子発芽抑制効果について室内試験によって行なったが,これらの結果はポット試験によって得られた防除効果と傾向が一致した。オキシカルボキシン耐性菌はカルボキシン剤に交差耐性を示したが,マンネブ,アンバム,キャプタン,トリフォリンおよび水和いおう剤には感受性菌と同程度の感受性であった。
  • 久田 芳夫, 川瀬 保夫
    1977 年 43 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    S-7131(スミレックス®)は,液体培地中で灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の菌糸生育および分生胞子発芽を著しく抑制した。致死濃度で処理したとき,胞子および菌糸細胞の多くが破裂し,細胞内容物を吐出した。低濃度では,菌糸の節間が短縮し,細胞は異常な膨潤を示した。この細胞の破裂は,薬剤処理2∼3時間後からひき起されるきわめて初期の形態変化であった。この現象は,生育菌糸で認められたが休止菌糸または2, 4-ジニトロフェノールで処理した菌糸では認められなかった。また,S-7131処理した菌糸細胞は,高張液中でも同様に破裂した。B. cinerea菌糸のプロトプラストは,S-7131の存在下で形態的に安定であり,また浸透圧ショック後位相差顕微鏡下で観察したところ,細胞壁様の構造物を再生していた。以上の結果から,S-7131は細胞膜や細胞壁に直接的に作用するのではなく,また細胞壁合成を阻害するのではないことが示唆される。したがって,S-7131は,おそらく何らかの代謝阻害の2次的な結果として細胞の破裂をひき起していると推察される。
  • 下村 徹
    1977 年 43 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. N. glutinosaの葉の裏側表皮を剥いで露出した葉肉にTMVを接種すると,局部病斑はほとんど形成されない。着表皮部のそれに遅れて輪郭の不明瞭な大きい病斑が側脈あるいは細脈に沿ってごく少数形成されるが,これらは葉肉で増殖したTMVが接種面と反対側の表皮に到達し,その表皮との関連で形成されたのではないかと考えられる。脱表皮部に接種してから一定時間毎にその感染性をbioassayしたところ,この部でウイルスが除々に増殖していることが確められた。脱表皮部に肉眼でみえる病斑がまったくない場合にも,この部からある程度のウイルスが検出された。
    2. N. glutinosaの葉の裏側にTMVを接種してから約2時間後に剥いだ裏側表皮を培養すると,この部分でもウイルスが増殖したが,病斑は形成されなかった。
    3. 22Cに保ったN. glutinosaの葉の裏側にTMVを接種後8∼10時間以上経過してから裏側の表皮を剥ぐと,脱表皮部に着表皮部のそれと外観が同じ病斑がほぼ同時に形成された。接種5時間後に剥いだ場合には,脱表皮部に病斑は形成されないが,この部に感染性物質(TMVまたはその核酸)がすでに移行していることが明らかであった。病斑形成のため表皮と葉肉との相互作用があるとすると,それは感染性物質が葉肉に到達してからなお数時間必要であることになる。
    4. TMVを接種したN. glutinosaの葉を高温(28C)に置くとこの葉に病斑は形成されないが,高温に保っている間に短時間低温(20C)に置くと,その後再び高温に戻しても病斑は形成される。この場合,低温時に表皮を剥いでおいても病斑は形成されるから,低温時に限って表皮・葉肉間の相互作用が働くわけではないらしい。
  • 下村 徹
    1977 年 43 巻 2 号 p. 167-174
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. N. glutinosa,インゲン(大手亡),Xanthi-ncタバコなどTMVの局部感染宿主の鉢植を,3日間低温(14-16C)に保った後常温(22C)に移して直ちにTMVを接種し,接種後も常温に置くと,接種の前後終始常温に置いた場合に比べ形成される局部病斑の数は著しく減少した。
    2. ペトリ皿内に納めたN. glutinosa切取葉の半葉を,3日間低温(17C)に置いた後25Cに移して直ちにTMVを接種し接種後も25Cに置いた場合も,終始25Cに置いた他半葉のそれに比べ病斑数は約1/3に減少した。低温に置く時間を3-8時間に短縮した場合も,病斑数は約1/2に減少した。
    3. N. glutinosaの半葉を,高温(36C)に3∼8時間置いた後25Cに移して直ちにTMVを接種し接種後も25Cに置いた場合は,終始25Cに置いた他半葉のそれに比べ病斑数は2.4∼2.8倍に増加した。36Cのような高温でなくとも,30Cに8時間置き接種後は25Cに移した場合,25Cに8時間置き接種後は17Cに移した場合も,終始25Cに置いた場合に比べ病斑数はかなり増加した。半葉を36Cに,他半葉を17Cに17時間置き,接種後はいずれも25Cに移すと,前者に形成される病斑の数は後者のそれの約9倍となった。
    4. 接種の前後終始36C, 30C(感染成立後はいずれも25Cに移して病斑を形成させる),25Cまたは17Cに置いた場合には,これらの間で形成される病斑の数に大きな差は認められなかった。
    5. 以上の結果から,高温または低温に植物が置かれている間にウイルス感受性が増大或いは低下するわけではなく,高温から低温に或いは低温から高温に植物が移される過程で感受性が増大或いは低下するのではないかと考えられる。以上のような高温または低温処理が,ウイルス感受性に影響を与える機構について検討した。
  • II. 分生胞子形成の各段階に及ぼす光の影響
    生井 恒雄, 山中 達, 三沢 正生
    1977 年 43 巻 2 号 p. 175-182
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネいもち病菌の分生胞子形成現象を,分生子柄形成期と分生子の形成期の2つの段階に分け,それぞれの段階に及ぼす光の影響を検討した。
    1. 分生子柄形成期は,光に大きく依存し,光照射下では分生子柄が形成されるが,暗黒下では気中菌糸が生育した。
    2. 分生胞子の形成期も光依存性が高く,連続光照射下で分生胞子の形成が順調に進行した。しかし,光を中断すると,分生胞子の形成が抑制され,進行が遅延した。
    3. 光の中断により,分生子柄から気中菌糸への脱分化現象は認められず,暗黒下でも徐々に分生胞子の形成が行われるが,分生胞子の形成部位,分生胞子の形態等に異常が認められた。
    4. 光の中断による分生胞子形成の遅延時間は,最初の光照射時間が長い場合,すなわち,分生胞子形成の進行程度が進んでいる場合ほど短縮された。
    5. 光の中断による分生胞子形成の抑制現象は,再び光を照射することにより回復し,分生胞子の形成が進行した。
    6. 分生胞子形成は,6時間の間けつ光照射では,明期に進行し,暗期に抑制される反応様式を示し,明暗条件に制御されていたが,12時間の間けつ光照射では,暗期での抑制は明らかではなかった。
  • 朴 杓允
    1977 年 43 巻 2 号 p. 183-191
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒斑病菌Alternaria kikuchiana Tanakaの宿主特異的毒素(AK-toxin)と類似した病理学的活性を有するcitrininを二十世紀ナシ葉と長十郎ナシ葉に処理し,電子顕微鏡で観察した。処理後3時間目には,二十世紀ナシ葉はすでに原形質膜の透過性の変化が認められたが,まだえ死は現われなかった。その二十世紀ナシ葉の維管束鞘細胞は最初の微細構造変化として原形質膜の陥入を示した。処理8時間後,葉脈え死が生じている葉組織では,原形質膜の陥入が維管束鞘細胞と葉肉細胞において広範囲に認められた。原形質膜と細胞壁の間の陥入部位は,ロマゾーム様小胞とPlasmodesmaから突出したcentral coreと低電子密度物質を含む。12時間citrininを処理した二十世紀ナシ葉のえ死細胞では崩壊した細胞内膜系が観察された。Citrininは,処理後12時間においてさえ長十郎ナシ葉細胞になんら影響をおよぼさなかった。これらの結果は,citrininが,AK-毒素と同様,二十世紀ナシ葉細胞の原形質膜に作用して形態の変化をおこし,それはまた透過性の変化と相関性があることを示している。
  • II. ユウガオ種子の保菌経路について
    国安 克人, 岸 国平
    1977 年 43 巻 2 号 p. 192-198
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. 罹病株に着果した果実の果肉を,採種現地で行われている方法に順じて完全に腐敗させたのちに採種し,7か月間貯蔵した種子を殺菌土には種した結果,2.0∼16.8%の幼苗が発病し,本病の種子伝染を確認し得た。
    2. 罹病株においてはほぼ全茎にわたって病原菌の分布が認められた。幼果では果梗及び果梗基部までは菌の分布が認められたが,幼果内部では菌が検出できず,果梗基部で菌の移行が抑制される傾向がみられた。未腐熟の成果では果梗,果梗基部及び主維管束を含む果皮部からは高率に本病原菌が分離された。維管束支脈の分布する果肉部や種子からも低率ながら病原菌が検出された。果肉の腐熟の進行中である果実では果実内のほぼ全域から病原菌が検出され,種子からも高率に本病原菌が分離された。
    3. 罹病株及び果実各部位からの本病原菌の検出結果から,種子保菌経路は,果実内の道管を経由して直接種子に侵入する場合と,果肉の腐敗に伴って果実道管内に潜伏していた病原菌が果肉中で増殖し種子に侵入する場合の2つの経路が認められた。ユウガオ採種現地では果肉を腐敗させたのちに採種が行われている関係から市販種子では後者による種子保菌が主体どなると推定される。
    4. 種子表面に単に付着している菌体は極めて少なく,しかも3∼4か月間の貯蔵期間内でほとんど死滅した。種皮の組織内では表皮下層から種皮深部の海綿状組織に至るまで菌糸あるいは厚膜胞子が観察され,これらの菌体が種子伝染による発病の主要な伝染源となっている。
  • Malati MAJUMDAR, S.P. RAYCHAUDHURI
    1977 年 43 巻 2 号 p. 199-201
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • (I) Erysiphe graminisの感染によって生じるパピラ,ハローとTween 20,グリセリン噴霧によって生じる傷痍プラグ,ハローとの比較
    都築 司幸, 石崎 寛, 久能 均
    1977 年 43 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 塩見 敏樹, 家村 浩海, 藤井 溥
    1977 年 43 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Two bacteriophage isolates specific for Xanthomonas vitians (Brown) Dowson were isolated and some of their biological characteristics were elucidated. These two isolates were similar in morphology, consisting of a polyhedral head of 40nm in diameter, with a very short tail, but were different in their virulence against X. vitians isolates.
  • 高木 康至, 島田 和純
    1977 年 43 巻 2 号 p. 211-214
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Aqueous extracts from the saw dust-rice bran media with grown mycelia of Hymenomycetes (Lentinus edodes or Flammulina velutipes) strongly inhibited tobacco mosaic virus (TMV) infection. The saw dust-rice bran media with grown mycelia were good sources to obtain virus inhibitor from Hymenomycetes.
  • 高木 康至, 島田 和純, 飯田 定彦
    1977 年 43 巻 2 号 p. 215-218
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Inhibitory effect of aqueous extracts from the saw dust-rice bran media with grown mycelia of some edible fungi on tobacco mosaic virus (TMV) infection and multiplication was examined. Edible fungi used were Lentinus edodes (Berk.) Sing., Flammulina velutipes (Curt. ex Fr.) Sing., Lyophyllum aggregatum (Schaff. ex Secr.) Kühner., Auricularia auricula-Judae (Bull. ex Fr.) Quél., Tremella fuciformis Berk., Pholiota nameko (T. Ito) S. Ito et Imai, Volvariella esculenta Bres. and Agricus bisporus (Lange) Sing. The extracts from the saw dust-rice bran media with grown mycelia of L. edodes or F. velutipes strongly inhibited TMV infection. However, no significant effect on TMV muliplication was noted in all extracts examined here.
  • 西山 幸司, 酒井 隆太郎, 江塚 昭典, 市原 耿民, 白石 久二雄, 坂村 貞雄
    1977 年 43 巻 2 号 p. 219-220
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 下村 徹, 大橋 祐子
    1977 年 43 巻 2 号 p. 221-223
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    When midribs of leaves of local lesion hosts were inoculated with TMV, necrosis appeared on the midribs. However, necrosis did not appear on the midribs when they were detached from the leaf tissues and were inoculated with TMV, although TMV multiplied in the midribs. It is postulated that necrotization of the inoculated midribs is caused by some chemical substances, probably by polyphenol or by other low molecular substances which have moved from adjacent green tissues.
  • 下村 徹, 大橋 祐子
    1977 年 43 巻 2 号 p. 224-227
    発行日: 1977/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    When detached leaves of local lesion hosts inoculated with a high concentration of TMV were incubated at 30C for 4-5 days and then transferred to 22C, apparent necrosis did not appear on the inoculated leaves. It is suggested that necrotization does not occur in leaf tissues in which TMV has fully multiplied at 30C, even if they were then transferred to 22C, the optimal temperature for necrotization.
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