日本植物病理学会報
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ビワがんしゅ病に関する研究 第2報
ビワがんしゅ病菌の色素産生性と病原性による系統類別
森田 昭
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1978 年 44 巻 1 号 p. 6-13

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抄録

ビワがんしゅ病菌(P. eriobotryae (Takimoto) Dowson) 109菌株を全国のビワ産地の罹病樹から分離採集し,それらの色素産生性と病原性によって系統類別を行い,各系統菌の病原性,地域性およびビワ品種との関係について検討した。
1. 本病原細菌はPSA培地上での褐色色素産生性および,その病原性,特に葉(葉肉部)に接種した場合のハロー病斑形成の有無によって次の3系統に分けられた。
A系統:褐色色素を産生せず,葉に病原性を示さない。
B系統:褐色色素を産生せず,葉に病原性を示す。
C系統:褐色色素を産生し,葉に病原性を示さない。
2. これらの各系統菌株の分布には地域,品種および宿主部位に関連して特異性がみられ,A・C系統は全国各地から,B系統は長崎県のビワ集団栽培地からのみ分離された。またA系統は茂木・田中両品種の葉以外の各部位から分離され,B系統は品種茂木の葉,枝,芽から分離されたのに対し,C系統は両品種の枝のみから分離された。
3. 各系統に属する菌株の病原性にはビワ品種およびその部位と関係がみられた。A系統に属する菌株は田中・茂木両品種の枝に対してのみ強い病原性を示した。B系統に属する多くの菌株は枝では両品種に強い病原性を示し,葉では茂木種に強い病原性を,田中種に弱い病原性を示した。C系統に属する菌株は枝に対してのみ病原性を示し,一般に田中種に強く,茂木種に弱い病原性を示した。

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