日本植物病理学会報
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さび菌感染に対するエンバク葉の非宿主反応
谷 利一山本 弘幸大麻 敬剛山下 洋子
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1978 年 44 巻 3 号 p. 325-333

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抄録

イネ科植物を宿主とするさび菌6種およびそれ以外のさび菌8種を供試して,夏胞子の侵入に対するエンバク子苗初生葉(品種勝冠1号)の非宿主反応について検討した。前者のグループに属するさび菌は,シバさび菌を例外として,すべて高頻度に付着器を気孔上に,気孔下のうを気孔下にそれぞれ形成し,エンバク冠さび菌の動向と大差がなかった。一方,後者に属するさび菌は,例外なく,発芽管が気孔にむかって伸長する頻度が低く,したがって,感染構造体(infection structure)を多く形成する菌でさえも,気孔侵入は稀にしかみられなかった。イネ科植物に病原性のある5種のさび菌の侵入後の発育はエンバク冠さび菌不親和性レース226よりも劣っていた。両者間には吸器形成期以前にすでに有意差が認められた。これらのさび菌を前接種したエンバク葉では,エンバク冠さび菌親和性レース203の発育が著るしく抑制された。また,接種葉では,12または16時間後に3H-ウリジンおよび14C-ロイシンの酸不溶区分へのとり込みが無接種対照区よりも増加した。さらに,あらかじめRNA合成阻害剤(コルジセピン)または蛋白質合成阻害剤(ブラストサイジンS)を吸収させた接種葉では菌体発育の促進がみられた。以上の諸結果から,イネ科植物を宿主としないさび菌はエンバク葉面と特異的関係を欠くために気孔侵入ができず,一方,イネ科植物を宿主とするさび菌に対しては,エンバク葉の誘導抵抗発現が伸長阻害の一因であろうと推定する。

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