日本植物病理学会報
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Bdellovibrio細菌の生理生態学的研究 (4)
Bdellovibrio細菌の溶菌斑形成率の異なった宿主通過による可逆的変化
植松 勉大畑 貫一
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1979 年 45 巻 2 号 p. 147-155

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抄録
Bdellovibrio細菌BdN6801の溶菌斑形成率が指示細菌の種類によって異なる原因と変異の性質についてXanthomonas oryzae, Erwinia carotovoraおよびEnterobacter aerogenesを用いて検討した。
E. carotovoraを指示菌とした場合の溶菌斑形成率は指示菌の培養温度に著しく影響された。20Cで培養したE. carotovoraを用いた場合,溶菌斑形成率は高く,X. oryzaeを指示菌とした場合と変らなかったが,30Cで培養したE. carotovoraを指示菌とした場合著しく低下した。
E. aerogenesを指示菌とした場合の溶菌斑形成率は至適条件下でもX. oryzaeおよびE. carotovoraに比較して低率であった。
X. oryzaeを宿主細菌として単一溶菌斑から得られた単一分枝系のBdellovibrio細菌を単一宿主細菌で継代培養し,溶菌斑の形態および形成率の変化について調べた。
X. oryzaeを宿主として継代培養した場合,他の2菌種上での溶菌斑形成率の著しい変化はみられなかった。E. carotovoraを宿主として継代培養した場合,X. oryzae上での溶菌斑形成率は著しく低下した。しかし,再びX. oryzae上で戻し培養することによって,X. oryzae上での溶菌斑はやや不鮮明であったが,X. oryzae上とE. carotovora上での溶菌斑形成率はほぼ近い値に回復した。また,E. aerogenesで継代培養して得られたBdN6801はX. oryzae上で継代培養したBdN6801と比較してE. carotovora上により鮮明な溶菌斑を形成した。以上の結果は,Bdellovibrio細菌の指示菌の差異による溶菌斑形成率および溶菌斑形態の変化は単一宿主細菌上での継代培養によっても起ること,そしてこの変化は可逆的であることを示唆する。
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