日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
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45 巻, 2 号
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  • 谷口 武, 後藤 孝男
    1979 年 45 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Chenopodium amaranticolorに生ずる活性の強い感染阻害物質の純化方法を検討した。凍結葉を中性緩衝液で磨砕し,ガーゼでしぼった。搾汁液を低速で遠心し,得た上清に固体硫安をゆっくり加えて50%飽和とし遠心した。さらに得た上清に硫安を加えて100%飽和として遠心した。つぎに生じた沈殿から阻害物質をSephadex G100, G50ゲル濾過法およびDEAE-Sephadexイオン交換カラムクロマトグラフィーで精製した。純化した阻害物質溶液の紫外線吸収スペクトルは、約280nmに極大吸収をもつ典型的な蛋白質の吸収の型を示した。阻害物質の分子量を2種の物理的方法で測定した。この蛋白質は分子量が約32,000で1本のポリペプチド鎖より成るものと推定され,低濃度の硫安で沈殿する阻害物質の分子量12)より大きかった。また,この物質の等電点を測定するためにエレクトロフォーカシングをおこなった。pH 2.5-4領域のアンフォラインを用いて泳動したときに,阻害物質は等電点がpH 1.7と3.4の2つのピークに分離した。
  • Multi-dish tray法について
    仙北 俊弘, 李 淳〓, 小島 誠, 四方 英四郎
    1979 年 45 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    植物ウイルスの血清学的方法のひとつであるmicroprecipitin testの改良を試み,この改良法をmulti-dish tray法とした。反応容器として径6mmの平底の穴が横に12列,縦8列の計96並んでいる組織培養用のプラスチック製Multi-dish disposo tray (Linbro Chemical社製)を使用し,ピペットはMicro selectapette (Clay Adams社製)を用いた。抗原と抗血清を各0.025mlずつ混合し,その上に乾燥を防ぐため流動パラフィンを0.03ml滴下し反応させた後,暗視野顕微鏡を用い16倍あるいは25倍で観察した。PVX, PVY, PVS, CGMMV, RDVの5種のウイルスについて各罹病植物粗汁液,または純化ウイルス試料を用いて本法を試みた。その結果,この方法は従来の重層法と同様に,反応を容易に判読できることがわかった。Multi-dish tray法は操作が簡便で,1枚のtrayで多数の反応を試みることができ,使用する抗原,抗血清の量は極めて少量ですむ利点がある。暗視野顕微鏡を用いることにより,その反応は明瞭かつ正確に判読でき,また抗血清の力価の判定も容易である。
  • Bdellovibrio細菌の溶菌斑形成率の異なった宿主通過による可逆的変化
    植松 勉, 大畑 貫一
    1979 年 45 巻 2 号 p. 147-155
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Bdellovibrio細菌BdN6801の溶菌斑形成率が指示細菌の種類によって異なる原因と変異の性質についてXanthomonas oryzae, Erwinia carotovoraおよびEnterobacter aerogenesを用いて検討した。
    E. carotovoraを指示菌とした場合の溶菌斑形成率は指示菌の培養温度に著しく影響された。20Cで培養したE. carotovoraを用いた場合,溶菌斑形成率は高く,X. oryzaeを指示菌とした場合と変らなかったが,30Cで培養したE. carotovoraを指示菌とした場合著しく低下した。
    E. aerogenesを指示菌とした場合の溶菌斑形成率は至適条件下でもX. oryzaeおよびE. carotovoraに比較して低率であった。
    X. oryzaeを宿主細菌として単一溶菌斑から得られた単一分枝系のBdellovibrio細菌を単一宿主細菌で継代培養し,溶菌斑の形態および形成率の変化について調べた。
    X. oryzaeを宿主として継代培養した場合,他の2菌種上での溶菌斑形成率の著しい変化はみられなかった。E. carotovoraを宿主として継代培養した場合,X. oryzae上での溶菌斑形成率は著しく低下した。しかし,再びX. oryzae上で戻し培養することによって,X. oryzae上での溶菌斑はやや不鮮明であったが,X. oryzae上とE. carotovora上での溶菌斑形成率はほぼ近い値に回復した。また,E. aerogenesで継代培養して得られたBdN6801はX. oryzae上で継代培養したBdN6801と比較してE. carotovora上により鮮明な溶菌斑を形成した。以上の結果は,Bdellovibrio細菌の指示菌の差異による溶菌斑形成率および溶菌斑形態の変化は単一宿主細菌上での継代培養によっても起ること,そしてこの変化は可逆的であることを示唆する。
  • 白田 昭, 高橋 幸吉
    1979 年 45 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. クワを含むクワ科木本植物4属7種の枝を3月に中間伐採し,3ヵ月後に幹から出ている枝の木部内の変化を調べた。その結果,すべての供試枝の木部は切口付近に淡褐色あるいは褐色を呈し,それぞれのアセトン抽出液はBipolaris leersiaeに対し健全木部ではみられない抗菌活性を示した。
    2. クワ枝を4月に中間伐採し,クワ芽枯病菌Fusarium solani f. sp. moriの分生胞子を切口に塗布接種し,7月に木部内における菌糸侵入と抗菌性物質の生成を調べた。切口付近および側枝がでた部位の2か所に淡褐変がみられ,それらのアセトン抽出液は抗菌活性を示した。なお,その活性は病斑拡大の停止がみられた側枝部において特に強かった。また,菌糸侵入は側枝部付近まで認められたが,抗菌性物質の生成の方が菌糸侵入よりも約1cmほど先行していた。
    3. クワ科7種の枝木部を1cmの長さに切断して20Cの湿室に保ったところ,それぞれの木部は,F. solani f. sp. moriの接種の有無にかかわらず健全木部にはほとんどみられない抗菌性物質を生成した。
    4. クワ科4属7種の枝木部に生成される抗菌性物質をシリカゲル薄層クロマトを用い,エチルエーテル展開により分離し,Bipolaris leersiaeで生物検定した。その結果,抗菌性物質はそれぞれ1∼3個に分かれ,その個数およびRf値は同属間ではほぼ同じであった。
  • 白田 昭, 高橋 幸吉
    1979 年 45 巻 2 号 p. 162-167
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. クワの新梢および前年生枝をそれぞれ6月および3月に採取し,それらの木部切片にFusarium solani f. sp. moriの分生胞子を接種して20Cに保ったところ,新梢では主として接種した場合に,また,前年生枝では接種の有無にかかわらず健全木部には認められない抗菌性物質の生成がみられた。また,前年生枝における抗菌性物質の生成は,5∼30Cの範囲では高温ほど速く,その生成は木部の褐変化に先だってみられた。
    2. 6月に採取した新梢を5Cあるいは30Cに12日間保ってから木部切片とすると,その木部切片は菌を接種せずに湿室に保つだけで抗菌性物質を生成した。
    3. 木部切片を55C10分または-60C60分処理するか,あるいは0.1mm以下に細断すると,抗菌性物質の生成はみられなくなった。
    4. 抗菌性物質はクワ枝の病原菌を含む糸状菌7種,細菌2種に抗菌活性を示し,活性の強さは菌種によって異なった。クワ芽枯病菌Fusarium 3種の間では,病原力と抗菌性物質に対する耐性力とは比例する傾向がみられた。
    5. 抗菌性物質は,乾燥木部からメタノール,エタノール,アセトンで抽出され,水,酢酸エチル,塩化エチレン,エーテル,クロロホルム,n-ヘキサン等で抽出されなかった。
    6. 本抗菌性物質は,シリカゲルTLCのエチルエーテル展開により3つに分離され,そのRf値は0.10, 0.27, 0.45であったが,主たるものは0.27のスポットであった。
    7. 以上のことから,上記抗菌性物質はクワ枝の木部組織が生成するファイトアレキシンであることを論じ,またRf値0.27および0.45に相当するものは高杉ら(1978)によってoxyresveratrolおよび4'-prenyloxyresveratrolと同定されたことを述べた。
  • 脇本 哲, 香月 康子, 松尾 憲総, 上運天 博
    1979 年 45 巻 2 号 p. 168-173
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病菌株N5828は菌体表面から繊維状構造物を放出する。同細菌の懸濁液遠心上清は同菌株N5850に対し溶菌斑を作る能力を有しており,その構造物が一種の繊維状ファージであると想定し,以下の方法により実験を行った。菌株N5828の培養液の遠心上清を感受性菌株N5850の培養液に加えることによりファージを増強した。この培養液の遠心上清に2%ポリエチレングリコールを加え,低速遠心でファージを沈澱濃縮し,更にしょ糖密度勾配遠心法を応用してファージを純化した。溶菌斑形成能を有する分画は典型的な核蛋白のUV吸収を示し,260nmにおけるUV吸収と溶菌斑形成能とは密接な相関があった。また純化標品は900-1000nmの長さの繊維状構造物のみを含んでいることが電顕観察により明らかになった。これらの結果からイネ白葉枯病菌株N5828の菌体から放出される繊維状構造物はバクテリオファージであると結論した。
  • 上運天 博, 脇本 哲
    1979 年 45 巻 2 号 p. 174-181
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    二種類の繊維状ファージがイネ白葉枯病菌から放出されることを発見し,それらのいくつかの性質を明らかにした。イネ白葉枯病菌株N5828から放出される繊維状ファージは宿主域,溶菌斑の大きさ,血清学的性質および粒子の長さが1967年Kuo等によって報告されたXfと類似しており,Xfファージと同定した。しかし,菌株N5845から放出されるファージはXfと全く異っており,Xf2と命名した。Xf2の宿主域はXfと比べて非常に狭く,またXfおよびXf2はいずれも他の供試xanthomonadsを侵すことはできなかった。Xf粒子の長さの中央値は965nmであったが,Xf2は1573nmであった。両ファージとも60C, 60分の熱処理に対し比較的安定であった。Xfはクロロホルム,メチルアルコール,およびアセトンには感受性でエチルエーテルには耐性であった。しかし,Xf2はエチルエーテルに感受性であり,Xfと比較するとクロロホルムに対してもより感受性であった。イネ白葉枯病菌50菌株のうち26菌株はXf2を,他の3菌株はXfを放出しており,またN5804菌株はXfとXf2の両ファージを同時に放出していた。
  • 田中 良高, 村田 伸夫, 加藤 肇
    1979 年 45 巻 2 号 p. 182-191
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    シコクビエいもち病菌相互のヘテロタリックな5組合せの交配と,イネ(8組合せ)またはシナダレスズメガヤいもち病菌(3組合せ)とシコクビエいもち病菌との交配における子のう胞子形成過程中の核および染色体の行動を塩酸-ギムザ染色により観察した。いずれの交配でも,子のう内で5回の核分裂があり,減数分裂(I, II)の後,4核となり,その後体細胞分裂で8核となり,それぞれに細胞壁が形成される。さらに,各細胞で2回の体細胞分裂が起り,各回に隔膜ができて,4細胞の子のう胞子が8個となる。減数分裂(I, II),それに続く体細胞分裂(I)時に遅滞染色体が観察されることがある。遅滞染色体は分裂時の1核について,多くても1個の割合である。すなわち,第1減数分裂で1または2個,第2減数分裂で1∼4個,第1体細胞分裂で1∼4個出現した。その頻度はイネ菌×シコクビエ菌で極めて高く(全組合せをまとめると76.7%,観察子のう数387個),シナダレスズメガヤ菌×シコクビエ菌で低かった(14.7%)。シコクビエ菌相互の交配でも発現し,その割合は13.8%であった。イネ菌よりもシナダレスズメガヤ菌の方が遺伝的にシコクビエ菌に近縁であると推察される。イネ菌×シコクビエ菌のある組合せでは,子のう当りの子のう胞子数が少ない例,子のう胞子に無核細胞のある例が高頻度で認められた。このような例はシコクビエ菌相互の交配でも観察されることがあるが,低率である。減数分裂および体細胞分裂中期に観察される単相染色体数は,いずれの組合せでもn=6である。
  • 岩田 道顕, 鈴木 幸雄, 近藤 泰光, 猪原 健夫, 渡辺 哲郎, 関沢 泰治
    1979 年 45 巻 2 号 p. 192-200
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    新しいイネ白葉枯病防除剤を創出するために,放線菌培養液を用いてスクリーニングを続けてきた。スクリーニングは,in vitroにおける選抜を行なわずに,培養ろ液をイネの根部に直接施用する方法により行なった。その結果,静岡県の土壌から分離されたStrepomyces zaomyceticus strain SF-1836の培養ろ液中に,抗イネ白葉枯病因子の存在を認めた。この培養ろ液は,ジャガイモ半合成等の培地上ではXanthomonas oryzaeに抗菌作用を示さなかった。従って,精製の際の生物検定は,全てイネの根部浸漬法によって行ない,イオン交換樹脂等を用いた方法により,その因子を単離することができた。この物質は,C5H7NO2の分子式を持ち,文献記載例のない新規なアミノ酸であることが判明した。その後,この抗イネ白葉枯病物質は,最少培地等の栄養源の制限された培地上でのみXanthomonas属,Bacillus subtilisの1系統およびEscherichia coliの1系統に抗菌作用を示す事が明らかとなった。この抗菌作用は,培地中へL-プロリンを添加することにより消失するので,本物質はL-プロリン拮抗物質であると思われる。しかし,in vivoにおける試験では,本物質とL-プロリンとの間に,拮抗現象を認めることはできなかった。この抗イネ白葉枯病物質の,最少培地上における抗菌メカニズム,L-プロリンとの拮抗現象および,イネ白葉枯病防除作用等の生物活性に興味がもたれる。
  • 矢野 博, 藤井 溥, 向 秀夫, 福安 嗣昭, 寺門 誠致, 伊佐山 康郎
    1979 年 45 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas lachrymansから高頻度に検出されるdihydrostreptomycin (DHSM)耐性の伝達性について検討した。伝達試験は混合培養法を用いた。その結果,供試したDHSM耐性109菌株中,13菌株において,DHSM感受性菌P. lachrymans 7563 (rifampicin耐性)への伝達が顕著に認められた。伝達頻度は,混合培養後急増し,24時間後には10-1であった。この伝達は耐性株の培養ロ液においては認められず,Resistance (R) plasmidの存在が推測された。しかしながら,acriflavine, acridine orange, ethidium bromideおよび,sodium dodecyl sulfateなどの処理によって,耐性脱落株は得られなかった。そこで更に伝達が認められた耐性株75101について,R plasmidの抽出を試みた。抽出方法は,cleared lysate法を用い,agarose gel電気泳動法で分析した。その結果,耐性株には少なくとも2種類のplasmid DNAが存在し,その分子量は,86×106および,58×106 daltonと推定された。しかしながら,これらplasmid DNAは,transconjugantには認められず,またP. lachrymans 7563, P. aeruginosaPAO 9501および,Escherichia coli Cへのtransformationも不成功に終った。以上の結果,DHSM耐性がR plasmidの支配であるか否かについては更に検討を要し,また得られた2種類のplasmid DNAは,“cryptic plasmid”の範ちゅうに属するものと判定せざるを得ない。
  • 国永 史朗, 横沢 菱三, 生越 明
    1979 年 45 巻 2 号 p. 207-214
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    R. solaniの新しい菌糸融合群AG-6, AG-BIの完全時代の形態,菌糸幅,菌糸細胞の核数,生育温度,チアミン要求性などの諸性質を調査し,またAG-BIとAG-2-1, AG-2-2, AG-3, AG-6の各菌糸融合群間で,菌糸融合頻度を比較した。
    1. AG-BIは,AG-2-2と最も高い菌糸融合頻度を示し,AG-2-1, AG-3の順に頻度が低下し,AG-6とは非常に低頻度であった。
    2. AG-6の担子柄は,平均7.5-17.0×5.5-10.0μm,小柄は1担子柄あたり3∼5本,長さ4.5∼18.8μm,担子胞子は5.0-10.0×2.8-5.2μmである。菌糸幅は平均8.6μm,核数は3∼15個,生育最適温度は25∼30Cで適温幅は広い。チアミン非要求性である。
    3. AG-BIの担子柄は,平均8.8-19.0×7.0-11.3μm,小柄は1担子柄あたり3∼5本,長さ4.0∼12.0μm,担子胞子は5.0-10.0×3.7-6.7μmである。菌糸幅は平均10.2μmで太く,核数は5∼23個で,どの細胞部位でも多く,生育最適温度は23∼25Cと好低温性である。チアミン要求性である。
    4. AG-6, AG-BIの完全時代の形態から,両菌糸融合群菌株は,Thanatephorus cucumeris (Frank) Donkに属する。
  • 古市 尚高, 冨山 宏平, 道家 紀志, 野末 雅之
    1979 年 45 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ疫病菌を接種してからジャガイモ細胞が過敏感細胞死を起こすまでの時間の長短は,過敏感反応能力の強弱の程度を示していると考えることができる。被感染細胞の過敏感死が速やかに起これば過敏感反応能力は高い。ジャガイモ塊茎を厚さ3mmのスライスにし,切断後種々の異なった時間18Cの保温室に置き,そのあと非親和性ジャガイモ疫病菌を接種し,宿主細胞の過敏感死に至るまでの時間を観察した。切断後接種までの時間が長くなるにつれて過敏感細胞死に要する時間は短縮し,切断後16-20時間置いてから接種した宿主組織は最も速やかに過敏感反応を起こした。すなわち菌接種後約5時間で50%細胞死を起こした。また切断後スライスを種々の異なった時間に5ppmの蛋白合成阻害剤ブラストサイジンS (BcS)を処理し,切断後16.5時間めにそれぞれのスライスに同時に非親和性疫病菌を接種し,被感染細胞の過敏感死に至る時間を比較観察した。組織切断後BcS処理までの時間が長くなればなるほどそれに対応して,細胞死は速やかに起こった。切断16時間後にBcS処理したものは,最も速い過敏感反応を示し,接種後約6時間で細胞死が起こった。以上の結果は,BcS処理によって推定された塊茎切断後の過敏感反応能力獲得に要する時間が,ほぼ菌接種後(BcS無処理)のそれに一致することを示している。BcS無処理の方がBcS処理の場合より若干速やかに反応が起こるのは,前者では接種後もエージングが進行するためと考えられる。したがってBcS処理によって各々の段階の過敏感反応能力は相当時間にわたって固定維持できると結論した。また塊茎切断後過敏感反応能力が獲得され始めるまでに約4時間のラグが見られた。この間,切断傷害代謝反応は進行しているが,過敏感反応に必要な酵素系がまだ完成していないと考えられる。
  • 西山 幸司, 山本 勉, 梅川 学, 江塚 昭典
    1979 年 45 巻 2 号 p. 221-227
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1976年1月,徳島県下でトマトの葉身,葉柄,がく片および茎を侵す一種の細菌病が発生した。本病はハウス栽培では12月から翌年5月にかけて発生し,12∼3月には主として葉身およびがく片に,3∼5月には茎および葉柄に発生する。露地栽培では5∼6月に茎および葉柄に発生する。葉身では3∼4mmの不整形の黒色斑点を生じ,茎では大型の暗褐色の病斑,葉柄では暗褐色で陥没した条斑を生じて内部の柔組織は腐敗する。
    罹病トマトの葉身,葉柄および茎から分離した細菌は細菌学的性質が斉一で,自然発病の病徴を再現したほか,インゲン,キュウリ,レタスおよびナスにも病原性を示した。病原細菌の細菌学的性質および病原性は対照細菌のP. viridiflavaと一致したので,これをPseudomonas viridiflava (Burkholder 1930) Dowson 1939と同定した。
    病名は葉に生じた病徴から黒斑細菌病(Bacterial black spot)とすることを提案した。
  • 日比野 啓行, Nasir SALEH, Martoadmojo ROECHAN
    1979 年 45 巻 2 号 p. 228-239
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネのragged stunt罹病株は萎縮し;葉は短かく,先端がまき,葉縁が切れこみ,葉脈上にgallを生じ,茎は分枝し,穂は異常となり,空籾を生ずる。
    Ragged stunt罹病イネの葉およびgall組織のdip法観察により,直径55-60nmのreovirus様粒子を認め,同様の粒子は保毒した媒介虫Nilaparvata lugensのまさい液中にも認められた。グルタルアルデヒド固定した組織からdip法によって得た粒子はspikeを持ち,1-6本のひも状構造物が粒子から伸びていた。Gallは篩部組織の異常増生により生じ,gallの細胞内には光顕観察により封入体が認められた。超薄切片観察によればウイルス様粒子は篩部およびgall組織内の細胞にのみ認められ,直径約65nmで,直径約45nmのcoreと電子密度の低い外被からなり,viroplasm様封入体内および細胞質内に散在していた。罹病株上で飼育したトビイロウンカの30-90%はウイルス様粒子を持ち,これらの保毒虫の1/2-1/3が病気を伝搬した。病気を伝搬した媒介虫を超薄切片法により観察したところ,ウイルス様粒子がだ腺,神経組織,筋肉,脂肪体,および前腸細胞内のviroplsma様封入体中に認められた。粒子はだ腺および脂肪体細胞に多く,結晶配列をしていた。一列に並んだウイルス様粒子の入ったさや状構造物が脂肪体細胞で認められた。
  • 第1報 白葉枯病菌I∼V群菌に対する二つの新しい反応型品種群の発見
    山田 利昭, 堀野 修, 佐本 四郎
    1979 年 45 巻 2 号 p. 240-246
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ白葉枯病抵抗性遺伝子源の探索を目的として,日本産のイネ白葉枯病菌I∼V群菌を多数の内外稲品種に接種して抵抗性検定を行った。その中に従来の金南風群,黄玉群,Rantai Emas群,早稲愛国群およびJava群のいずれにも属さない二つの新しい反応型を示す品種群が発見された。
    一つはI∼V群菌に対して順にSRRSR,他の一つは同様にSRRSSという反応型を示す品種群であった。前者をElwee群,後者をHeen Dikwee群と命名した。これら両品種群の抵抗性遺伝子型は日本産のイネ白葉枯病菌に対する既知の抵抗性遺伝子型とは異なることが推察された。また,このような二つの新しい品種群が発見されたことの意義について,イネ白葉枯病抵抗性に関する病理的および育種的観点から,若干の考察を加えた。
  • 大橋 祐子, 下村 徹
    1979 年 45 巻 2 号 p. 247-254
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1. XanthiタバコまたはSamsunタバコにTMVを接種して2-3日後葉を切りとり,葉の表面に紫外線(UV)を照射して低照度(200lux以下)の照明下に置くと,1日後にこの葉のUV照射面に局部病斑類似の壊死斑が形成された。N. glutinosa, Samsun NNタバコおよびXanthi-ncタバコなどTMVの局部感染宿主も,接種後高温(30C)に置くと全身感染して局部病斑は形成されないが,このような葉に接種2日後UVを照射して低照度の照明下に置くと壊死斑が形成された。全身感染宿主でも局部感染宿主でも,UV照射後葉を高照度(6,000lux)の照明下に置くと壊死斑は形成されなかった。キュウリ・モザイク・ウイルス(CMV)とペチュニア,ポテト・ウイルスXとN. glutinosaの組み合わせ(いずれも全身感染する)でもUV照射によって壊死斑が形成された。
    2. TMVを接種したのち23-30Cに2-3日置いたXanthiタバコまたはSamsunタバコ,30Cに1-2日置いたN. glutinosaまたはXanthi-ncタバコの切りとり葉に,30C下10時間以上の暗処理を加えると壊死斑が形成された。CMVとN. glutinosaの組み合わせ(全身感染する)でもこの処理によって壊死斑が形成された。
    3. UV照射および暗処理がTMVに全身感染したN. glutinosaの葉の核蛋白への3H-ウリジン14C-ロイシンのとり込みに与える影響を調べた。これらの処理はいずれもTMV画分での核酸と蛋白のとり込みをあまり阻害せず,細胞質リボソームでのそれを強く阻害した。この傾向は壊死斑形成能をもつアクチノマイシンDを全身感染したN. glutinosaの葉に処理した場合と同じであった。これらの処理による壊死斑形成の機構について考察した。
  • 李 淳〓, 仙北 俊弘, 小島 誠, 四方 英四郎
    1979 年 45 巻 2 号 p. 255-257
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 古賀 博則, 豊田 秀吉, 真山 滋志, 獅山 慈孝
    1979 年 45 巻 2 号 p. 258-260
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 時本 景亮, 小松 光雄
    1979 年 45 巻 2 号 p. 261-264
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 大橋 祐子, 下村 徹
    1979 年 45 巻 2 号 p. 265-267
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 草刈 真一, 辻 博美, 山田 貴義, 田中 寛
    1979 年 45 巻 2 号 p. 268-271
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pyhium sp. was isolated from spinach seedlings, severely affected with damping -off during midsummer. Isolated Pythium sp. grew well at high temperature, and its optimum temperature was 38C. The fungus was morphologically distinguishable from Pythium aphanidermatum in the size of oogonium and antheridium formation. According to the key proposed by Waterhouse (1967), it was identified as Pythium butleri Subramaniam.
  • 内藤 秀樹
    1979 年 45 巻 2 号 p. 272-274
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Leaves of rice variety Sasanishiki were previously inoculated with virulent race N-1 of rice blast fungus. After development of susceptible lesions, the infected leaves of Sasanishiki were reinoculated with avirulent race C-3. Conidia produced on the lesions contained a few conidia of race C-3 pathogenic to variety Fukei 69 or Tachihonami.
  • 城野 洋一郎, 野津 幹雄, 糸井 節美
    1979 年 45 巻 2 号 p. 275-278
    発行日: 1979/04/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Twelve hours after inoculation, bacterial cells of Agrobacterium tumefaciens were observed at following three sites. (1) Epidermal cells injured by carborundum rubbing (Fig. 1). (2) Intercellular spaces of palisade parenchyma (Fig. 2). (3) Middle lamella of palisade parenchyma (Fig. 3). Forty-eight hours after inoculation, some plant cells in close proximity to A. tumefaciens showed a course of cell division (Fig. 8).
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