抄録
1978年に千葉県野栄町の越冬栽培のピーマンにタバコ・モザイク・ウイルス(TMV)の1系統によるとみられるモザイク病が多発した。発病株は新葉が黄化し著しいモザイクを生じ,ときに果実に黄色の斑紋や条斑を生じた。本病の病原ウイルスは,粒子の形態,耐熱性,耐希釈性,耐保存性などの面ではTMVのトマト系や普通系と区別できない。しかし, TMVに抵抗性とされている品種を含むピーマン・トウガラシの供試したすべての品種に激しいモザイク症状を起こし,トマトには全く寄生性がなく, N. glutinosaには極めて小形の局部病斑を生じ, Samsunタバコには無病徴感染した。また,このウイルスはTMV-トマト系, TMV-普通系の各抗血清に対し反応したが,その反応はTMV-トマト系とTMV-普通系の相互関係に比べはるかに弱かった。
以上から,本ウイルスはわが国および海外でこれまでに報告されたどの系統とも異なると考えられたのでTMV-トウガラシ系と呼ぶことを提案した。