日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
Xanthomonas campestris pv. oryzaeの性状に及ぼす繊維状ファージXf2感染の影響
上運天 博脇本 哲
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 47 巻 5 号 p. 627-636

詳細
抄録

繊維状ファージXf2の感染がX. campestris pv. oryzae N5850菌株の性状に及ぼす影響について検討した。X. campestris pv. oryzae N5850にXf2ファージを感染させて,振盪培養すると,培養液中に放出されるファージ濃度は感染48時間後に最高の約1×1011PFU/mlに達した。33.5Cよりも低い温度ではXf2感染菌の増殖は非感染菌よりもかなり遅れた。しかし,その後,非感染菌と同じか,あるいはそれ以上の濃度に達した。Xf2感染菌は35Cでもある程度,増殖することができたが,非感染菌はほとんど増殖できなかった。30, 33.5および35Cの各温度で72時間振盪培養したXf2感染菌と非感染菌の超薄切片を作成し, Xf2感染による構造的変化を電顕により調べた結果,細胞質では両者の間に著しい差が認められなかったが, Xf2感染菌では菌体表面における小胞の形成または細胞壁の一部が変性あるいは剥離した状態が観察された。イネ葉組織中における増殖については接種後,初期数日間はXf2感染菌の芳が非感染菌に比べて遅かったが,その後,菌数は逆転した。また,同濃度の菌液を接種した場合, Xf2感染菌の方が非感染菌よりも早く病徴を現わし,病斑の長さも大であった。培養ろ液中に含まれるキシラナーゼ,セルラーゼ,リパーゼの活性についてはXf2感染菌および非感染菌の間にほとんど差が認められなかったが,菌体外多糖類の産生量は非感染菌よりもXf2感染菌の方が多く,この産生量と病原力との間の相関が示唆された。

著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top