日本植物病理学会報
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クワ枝皮部切片の抗菌作用とその変動要因
白田 昭
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1982 年 48 巻 2 号 p. 147-152

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抄録

クワ枝の皮部切片をイネごま葉枯病菌,Bipolaris leersiaeの分生胞子を混入させたPDA培地上に置くと,切片の周囲に阻止帯が形成される。そこで,切片の示す抗菌作用の発現条件と変動要因を調べ,下記の知見を得た。
1. 抗菌作用が発現するには,切片の長さが0.2∼0.4mm以上必要であり,0.1mmの長さの切片を7枚重ねても抗'菌作用は全くみられなかった。
2. 切片を湿室に保存したのち検定したところ,抗菌作用は保存温度とその期間によって変動した。その抗菌力は,高温保存では一時高まりをみせ直ちに減少するが,低温保存では経時的に増加した。
3. この様な抗菌力の変動幅は枝の部位により異なり,先端>中央>基部の順に大きかった。また,クワ枝の乳液はこの変動を抑制した。
4. 切枝でも保存により抗菌力の変動が認められたが,その変動は切断面から約3mm以内に限られた。5. 表皮除去処理は抗菌力を強めた。
6. 切片の抗菌作用は,切片にしてから6時間後に認められ,18∼24時間でほぼピークに達した。
7. 切片を40∼70C, 10分間温湯処理あるいは-20C, 60分間凍結処理したところ,抗菌作用がみられたのは40∼55C処理切片だけであった。それらの抗菌力は処理後一時減少したが,25Cの湿室に保つとやがて回復し,その回復は高温ほど遅れた。

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