日本植物病理学会報
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チャ樹の芽圏細菌の氷核活性
牧野 孝宏
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1983 年 49 巻 1 号 p. 32-37

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抄録

チャ樹の新芽から氷核活性細菌の分離を試み,チャの芽圏に比較的優勢な集団を形成する黄色細菌に高い氷核活性が認められた。毛細管法による氷核形成温度は,最高値-2C,平均値,-2.7Cであった。本細菌は芽圏で初霜時期から晩霜期まで検出された。特に晩霜期に菌数が多く,生芽重1gあたり106個以上に達した。一方氷核活性は懸濁液の細菌数と正の高い相関関係があり,106個/mlまでは高い活性が維持された。このことから本細菌が芽圏の結露液中に懸濁された場合,高い氷核形成温度が得られるものと推定される。-8∼-12Cで作用する氷核には,特に細菌の存在は必要でなく,氷核物質の一部が水中に放出しているものと推定された。-3C前後の氷核活性は細菌懸濁液を40C前後で加熱すると急激に低下し,80C以上に加熱するとほぼ完全失活した。細菌染色剤,界面活性剤および殺菌剤の中には氷核活性低下作用を示すものがあり,特に次亜塩素塩カルシウムには強い低下作用が認められた。しかし過酸化水素水には全くその作用がなかった。

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