ポリオキシン処理区および無処理区(対照区)の
Alternaria kikuchiana Tanaka菌糸をNaOH, H
2SO
4および溶解酵素で処理し,菌糸細胞壁の形態的変化を組織化学および電子顕微鏡で検討した。NaOH-H
2SO
4-NaOHの一連の処理によって,ポリオキシン処理菌糸は無処理菌糸との間に顕著な差があることが認められた。すなわちポリオキシン無処理菌糸の酸,アルカリ処理の結果,その細胞壁内層には多くの微小繊維が認められる。この微小繊維は酵素処理によりキチン,β-1, 3グルカンおよびタンパク質などから構成されていることが示唆された。これに対して,ポリオキシン処理区の菌糸細胞壁は酸,アルカリ,酵素処理によってほとんど変化をうけなかった。ポリオキシン無処理区では薄い外層のみが酸,アルカリ,酵素処理によって分解されなかったが,ポリオキシン処理区では隔壁および細胞内菌糸の細胞壁も含めて,細胞壁全体が酸,アルカリ,酵素処理によって分解されなかった。キトサン呈色反応の結果,ポリオキシン処理区および無処理区とも,菌糸細胞壁にはキチンが含まれるが,NaOH-H
2SO
4-NaOH処理後に,キチナーゼあるいは塩酸処理をするとキチンは溶解する。以上の結果は,i)ポリオキシン処理によって,菌糸細胞壁とくに内層の構成成分に差異が生じ,ii)ポリオキシン処理区では細胞壁内層に存在するメラニン様色素により,菌糸細胞壁が溶解酵素によって分解されない可能性を示唆している。
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