1984 年 50 巻 4 号 p. 476-482
長崎県内のジャガイモ栽培ほ場で秋作後期,定期的に罹病植物体からPseudomonas solanacearumを分離し,そのbiovarを調べた。分離した209菌株のうち37菌株はbiovar II, 1菌株がbiovar III, 171菌株はbiovar IVであったが,発病後期になるほどbiovar II系統の分離比率が増加する傾向が認められた。静置培養条件下で両系統の増殖を比較した結果,16.5Cではbiovar IV系統に比べてbiovar II系統の増殖が速かった。また,biovar IV系統の35C, 4日間の増殖は24C, 7日間および16.5C, 14日間のそれに比較して良好であったのに対して,biovar II系統では16.5C, 14日間培養と35C, 4日間培養との間に増殖量の明瞭な差は認められなかった。なお,接種試験による病徴発現までの潜伏期間もbiovar II系統とbiovar IV系統の間には差異が認められなかった。P. solanacearumにはレース1のほか主にジャガイモを侵し,低温でも病原性を示すレース3が存在し,かつ,レース3はbiovar IIに当ると報告されているが,本試験で分離されたbiovar II系統は,我国で未報告のレース3に相当するものと考えられる。