日本植物病理学会報
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カンキツかいよう病菌の感染前過程におけるカンキツ葉組織への付着と菌体外多糖質の役割
高橋 敏房道家 紀志
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1984 年 50 巻 5 号 p. 565-573

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抄録

菌体外多糖質(EPS)を除去していない,カンキツかいよう病菌非洗浄菌体は,カンキツ葉の傷害部に特異的に付着するが,無傷部にはほとんど付着しなかった。EPSを遠心法で除去した洗浄菌体,およびEPS非生産変異株菌体は,傷害部にもほとんど付着しなかった。
非洗浄菌体の葉組織への付着は,D-グルコサミン,プロナーゼあるいはpH 4.0のクエン酸緩衡液で組織を前処理した場合に,阻害された。非洗浄菌体は,各種の非宿主植物葉の傷害部にも付着したが,この付着にはD-グルコサミンによる阻害はみられなかった。
これらの結果から,カンキツかいよう病菌は,そのEPSがカンキツ葉傷害部に存在するEPS凝集素と選択的に付着し,その付着がカンキツかいよう病における宿主-寄生菌関係の成立初期段階に深く関っていることが推察された。

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