日本植物病理学会報
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グルコース添加湛水土壌におけるFusarium oxysporum f. sp. raphaniの死因について
岡崎 博
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1985 年 51 巻 3 号 p. 264-271

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抄録

Fusarium oxysporum f. sp. raphaniを接種して調製した筑波,宇都宮および豊橋の各病土は1.8%から2.4%以上のグルコース液で湛水処理すると土壌中のFusariumが著しく減少した。200mlの三角フラスコに筑波病土(または非接種土壌)10gと3%グルコース液10mlを入れたグルコース添加湛水土壌の系をつくり,これを用いてその死因を検討した。グルコース添加湛水処理によって土壌の酸化還元電位は処理後2日目に-308mVに低下した。pHは2日目から下がりはじめて5日目に4.5に達した。Fusarium菌数は処理後3日目から減りはじめて7日目には処理前の1,000分の1以下になった。処理後5日目のグルコース添加湛水土壌に接種したFusariumの厚膜胞子は1日後には55%, 2日後には99%が死滅した。処理後5日目のグルコース添加湛水土壌を入れた容器の気相に厚膜胞子浮遊液をおくと,厚膜胞子の発芽は完全に抑制され,2日後には99%が死滅した。この気相の殺菌力は土壌の殺菌力に匹敵した。以上の結果からグルコース添加湛水土壌におけるFusariumの死滅は処理土壌中に産生する揮発性抗菌物質によるものであると結論した。

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