日本植物病理学会報
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酵素結合抗体法(ELISA)によるトビイロウンカおよびイネからのイネグラッシースタントウイルスの検出
岩崎 真人中野 正明新海 昭
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1985 年 51 巻 4 号 p. 450-458

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抄録
イネグラッシースタントウイルス感染水稲から径6-12nmのひも状粒子を純化し,抗血清を作製した。寒天ゲル内二重拡散法によって抗血清の性状を調べたところ,感染水稲汁液,保毒トビイロウンカ磨砕液およびHibino et al. (1985)の方法で純化したfilamentous nucleoproteinと特異的に反応し,沈降線は融合した。本抗血清から精製したγ-グロブリンは,感染葉汁液の感染性を中和した。ひも状粒子は,酵素結合抗体法(ELISA)によって1個体/8mlまで希釈した獲得吸汁虫集団の磨砕液および10-5に希釈した感染葉汁液から検出され,無毒虫磨砕液および健全葉汁液から検出されなかった。純化したfilamentous nucleoproteinは,A260=1.0×10-5に希釈した場合もELISAで反応が認められた。25Cで1か月保存した媒介虫および室温で4か月保存した感染葉も陽性であったが,凍結保存および新鮮な材料と比較すると反応は低下した。獲得吸汁虫を個体別に媒介の有無とELISAでの反応を調べたところ,ともに陽性であった個体は40%, ELISAが陽性で媒介の認められなかった個体は41%,ともに陰性であった個体は19%であった。1982年に1,126頭の海外飛来トビイロウンカを供してELISAによって本ウイルスの保有の有無を検定した。陽性の反応が認められた個体は1頭(約0.1%)であった。
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