日本植物病理学会報
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イネ縞葉枯ウイルスの細胞内所在
山下 修一土居 養二與良 清
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1985 年 51 巻 5 号 p. 637-641

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抄録

イネ縞葉枯ウイルス(rice stripe virus, RSV)の細胞内所在様式を自然感染のイネ,エンバク,トウモロコシ病葉の超薄切片を作製し,電顕観察した。RSV粒子はその純化標品の切片で高電子密度の顆粒状あるいは砂状の不斉一な微細構造を示したが,個々の粒子の識別はできなかった。これらの所見は病葉の切片でも同様であったが,これは本ウイルスの特異的な形状が関係しているものと思われた。病葉におけるRSV粒子は各植物とも類似した所在様式を示し,各種細胞で通常細胞質や液胞内に散在あるいは集塊して多量に観察された。細胞質内ではしばしば大集塊が認められ,これがその大部分を占めることもあった。この場合,RSV粒子はリボソームや細胞質基質と容易に区別された。感染細胞ではときに核内に電子密度の低い領域が観察され,その内部にRSV粒子が集塊する像も多く認められた。RSV粒子が原形質連絡糸に近接した例も観察され,これはその細胞間移行を示唆すると思われた。ウイルス粒子のほかに,電子密度の高い特異蛋白質が各種細胞で集塊あるいは束状に観察された。細胞のえ死は各種細胞でごく一般的に認められ,それらにRSV粒子が残存することも多く観察された。

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