抄録
本邦未報告のPythium okanoganense Lippsによるムギ褐色雪腐病の発生を確認した。病徴はP. iwayamaiおよびP. paddicumによる既知の褐色雪腐病の場合と同様であった。1982年から1984年にかけて福井県北東部地帯で調査したところ,本菌は157圃場のうち10圃場で分離され,うち2圃場では最優占種であった。本菌は乾田で分離され,湿田では分離されなかった。コムギ1品種(ナンブコムギ)とオオムギ2品種(べんけいむぎ,ミユキオオムギ)に対して接種したところ,いずれの品種も雪腐症状を呈したが,ナンブコムギはべんけいむぎ,ミユキオオムギに比べて発病程度が低かった。P. iwayamaiとP. paddicumに比べて病原力はやや弱いが,本菌はわが国におけるムギ褐色雪腐病菌の一つと考えられた。