日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
52 巻, 1 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 草刈 眞一, 田中 寛
    1986 年 52 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    蒸留水中においてPythium butleriの遊走子をホウレンソウ苗に接種し立枯病の発病率を調べたところ,遊走子濃度6個/mlより発病が認められ, 6.5×102個/mlの濃度まで遊走子濃度と発病率に相関が認められた。
    水耕培養液を用いて,遊走子接種によるホウレンソウ苗立枯病発病率を調べたところ,水耕培養液中では蒸留水中に比較して発病率が低くなる傾向があった。
    水耕培養液中でホウレンソウに遊走子を接種した場合,培養液濃度が2単位以上となると発病率が低くなり, 3単位の培養液濃度では,遊走子濃度が5.2×10個/mlにもかかわらず,立枯病の発生が著しく低下した。2単位以上の培養液濃度中では,ほとんどの遊走子が被のうし,培養液中に浮遊した状態にあり,ホウレンソウ子苗の根に対する付着が認められなかった。
    遊走子の被のう現象は,水耕培養液を構成している無機塩類それぞれの0.02~0.05M以上の濃度の溶液中で認められた。また,サッカロース,マンニット,グルコースの0.2M以上の溶液中においても認められた。
    以上のことから,高濃度の水耕培養液中における発病抑制現象は,遊走子が形成された場合においても培養液の浸透圧により遊走子が短時間で被のうし,根部侵入感染が抑制される結果によって起るものと推察される。
  • 山本 昌木, 黒岩 常祥
    1986 年 52 巻 1 号 p. 8-14
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    疫病抵抗性ジャガイモ種間雑種グレータ(R1R3R4因子)から抽出した核DNAを,罹病性品種男爵薯(r因子)葉上に塗布後疫病菌レースOを接種したところ,罹病型病斑以外に抵抗性の過敏型病斑の混在を認めた。propidiumiodide (PI)または4'-6-diamidino-phenylindole(DAPI)と結合させた核DNAを罹病性品種葉上に綿楔で塗布後螢光顕微鏡で観察すると,塗布1時間で核内への取り込みが認められたが,葉緑体DNAは塗布2時間後でもこれを確認することができなかった。核DNAを電気泳動して得られた分子量1,750-2,550kdの画分は,過敏型病斑形成を誘導した。このDNA画分を制限酵素EcoRIで処理後SalIで処理した画分は過敏型病斑形成を誘導したが, EcoRI処理後KpnI処理したものでは過敏型病斑形成能は消失した。
  • 小川 奎, 駒田 旦
    1986 年 52 巻 1 号 p. 15-21
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    非病原性F. oxysporumとサツマイモつる割病菌との対峙培養において,両菌の間に抗生は認められなかった。発病抑制は,苗の切口をパラフィンおよび非病原性F. oxysporumの死菌体で閉鎖した場合には生じず,生菌体の接種によってのみ生じた。非病原性F. oxysporumを前接種した部位から離れた組織で病原菌の感染が起こった場合にも,発病が抑制された。このことは全身的な抵抗性の誘導を示している。また,本菌と病原菌との同時接種でも発病は抑制された。前接種された非病原性F. oxysporumは苗基部に局在し,導管を通じた上方への移動はほとんどみられなかった。一部は苗基部の皮層および柔組織のごく一部に侵入し,部分的な壊死を起こした。前接種直後に苗の基部切口を切除すると発病抑制効果は消失したが前接種2日後に切除すると,その効果は消失しなかった。非病原性F. oxysporumの発芽液は,僅かながら,発病抑制を示した。このように本交叉防御における全身的な抵抗性は,苗の基部切口に接種された非病原性F. oxysporumがサツマイモ組織に局部的かつ軽度の感染を起こすことによって,生じるものと考えられた。
  • Pissawan POOLPOL, 井上 忠男
    1986 年 52 巻 1 号 p. 22-30
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キュウリモザイクウイルス(CMV)とズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)を同時にキュウリに接種すると, CMV単独感染株よりも激しい病徴が現われた。一方ZYMVによる病徴は軽減された。混合感染株と単独感染株のCMV濃度を生物検定法で調べたところ,混合感染株では単独感染株に比べてCMV濃度の増加が認められた。これに対し, ZYMVの濃度はELISA法で検定した結果,混合感染株で有意に減少していることが明らかになった。混合感染株と単独感染株でのCMVの濃度差は接種後3週間で最も大きかった。CMVの濃度増加はCMVの接種をZYMVの接種前あるいは接種後1週間あるいは2週間のいずれにした場合でも認められた。混合感染細胞の電顕観察では多量のCMV粒子の集塊が細胞質中に認められた。感染葉から単離したプロトプラストを螢光抗体法で調べた結果,混合感染葉でのCMV濃度の増加は,感染細胞当りのウイルス濃度の増加および感染細胞数の増加の両方によることが示唆された。
  • 内野 浩克, 神沢 克一, 宇井 格生
    1986 年 52 巻 1 号 p. 31-38
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1974年7月下旬,北海道常呂町のテンサイ圃場で,未知の斑点性病害が発生した。本病の発生は,ニンニク葉枯病の発生するニンニク圃場に隣接する圃場に限られ,その病原菌はPleospra herbarum (Fries) Rabenhorst(分生子世代: Stemphylium botryosum Wallroth)と同定された。本病をテンサイのステムフィリウム斑点病と命名することを提唱した。
  • 第4報 黒点病斑中に生成される抗菌物質について
    有本 裕, 本間 保男, 見里 朝正
    1986 年 52 巻 1 号 p. 39-46
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツ果皮および新梢に感染した黒点病菌は病斑内に封じ込められ,ついには死滅する理由を知るために本実験を行なった。まず,葉に黒点病斑を形成させ,その上に新たにD. citri柄胞子を接種したところ,発芽率は約7%であり,健全部位におけるそれ(98%)に比べ著しく抑制された。黒点病斑のエタノール抽出画分が柄胞子の発芽を強く抑制することを確認した。そこで,抗菌物質の単離を試みたところ,強い活性を示す1成分と,それよりも弱い活性を示す4成分が得られた。これらのうち,最も強い抗菌活性を示す成分(抗菌成分D)の結晶化を試み,アセトンー水系から針状結晶を得た。抗菌成分Dは健全なカンキツ組織からは検出されないことからファイトアレキシンと考えられた。なお,抗菌成分Dはそうか病斑,かいよう病斑,スターメラノースおよび虎斑症部からも検出された。一方,健全組織には抗菌成分Dが存在しないにもかかわらず,その抽出物は柄胞子の発芽を阻害した。これはシトリノールなどのpre-inhibitinの作用によるものと考えられた。
    以上の結果から,カンキツ組織内に侵入したD. citriの生育が抑制され,その後死滅するのはpre-inhibitinおよびファイトァレキシンの作用によるものと推察された。またこの現象は化学的防衛反応と考えられ,先に報告した物理的防衛反応とともに,カンキツは黒点病菌の侵入に対して2種の防衛反応を行なっていることが明らかとなった。
  • 小池 賢治, 小嶋 昭雄, 羽柴 輝良
    1986 年 52 巻 1 号 p. 47-52
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ紋枯病の発病調査に必要な標本数を知るため, 1981年~1983年に新潟県頸城村の発病程度のことなる3筆と水田1,500haから任意系統抽出した30筆について調査し,病斑高率と発病株率を用いて検討した。標本数を変えた抽出実験による病斑高率の平均値とその信頼限界の変動から求めた必要標本数およびt2σ2/L2式(ただし, tはt表の各確率に対する値, σは母標準偏差, Lは許容誤差範囲である)によって平均値の±15%の誤差を許容した場合の必要標本数の両者から, 1筆内の発病株率および平均病斑高率を求めるための必要標本数は100株,発病株の病斑高率調査に必要な標本数は10株,また,1地域の発病調査に必要な圃場数は20筆となった。調査株は圃場内の任意のa条から15株おきに20株,次にb, c, d, e条からも同様に系統抽出する方法で実用的に満足できる精度が期待できた。
  • 平松 基弘, 一瀬 勇規, 白石 友紀, 奥 八郎, 大内 成志
    1986 年 52 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウ褐紋病菌の生産するエリシターによるピサチン生合成の誘導とサプレッサーによるその抑制について,ピサチンの前駆体である14C-フェニールアラニンをエンドウ葉組織に与えてしらべた。放射能のピサチンへのとりこみは,エリシター処理4.5~6時間後に検出可能となり,その後増加した。エリシター溶液(500ppm)に50ppmのサプレッサー(F5)が共存するとピサチンの生含成が起らなかった。エリシターで,ピサチン生合成系を活性化したエンドウ葉にF5を与えると,ピサチン生合成は低下し,一方,その中間産物である桂皮酸への放射能のとりこみが増加した。 F5はピサチン生合成系に関与する酵素, PALとcinnamate 4-hydroxylaseをin vitroで阻害した。ピサチン生合成系活性化に対するF5の阻害作用は可逆的であると考えられる。
  • 後藤 正夫, 松本 邦彦
    1986 年 52 巻 1 号 p. 59-68
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ワサビ根茎の内部黒変症状は, 1)維管束の黒変, 2)髄部の斑点状黒変,および3)表皮および浅い皮層の黒変,の3型に分けられた。髄黒変部からは病原菌は検出されなかった。一部の表層黒変部からはPhoma sp.が分離されたが標本数が少なく結論するに至らなかった。維管束黒変型は墨入病に代表される最も普遍的な病徴であるが,この症状株からはPhoma sp., Erwinia spp., Pseudomonas spp.,および一種のcoryneform bacteriumが分離された。これらの微生物は何れも病原性を有し,黒色中心柱をもつ根からも検出された。分離されたPhoma sp.は柄胞子および柄子殻の形態からP. wasabiaeと同定された。Erwinia spp.およびPseudomonas spp.は何れも軟腐性細菌で,軟腐症状のみられない黒変組織から腐生性細菌とともに比較的低濃度ながら高率に分離された。これらはPhoma wasabiaeと同時に分離される場合もみられた。ErwiniaおよびPseudomonas軟腐病菌は,それぞれ数種の異なった細菌からなり,夏季にはErwiniaの比率が著しく高まるのに対し,冬期には逆にPseudomonasの比率が高まって,季節による交替現象がみられた点で注目された。これに対しCoryneform bacteriumは組織内菌濃度が著しく高く,ほぼ純粋状態で分離された。外観的に識別し難い症状の根茎および根から,微生物が全く検出されない例がしばしばみられ,生理的原因による内部黒変症状の存在が示唆された。根茎の維管束黒変症状は,従来墨入病として取扱われてきたが,その原因は輪腐病をも含めて複雑で,更に今後の検討が必要である。
  • 後藤 正夫, 松本 邦彦
    1986 年 52 巻 1 号 p. 69-77
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ワサビの罹病根茎および根から分離したErwinia属軟腐病菌68菌株およびPseudomonas属軟腐病菌78菌株を用いて分類学的研究を行なった。Erwinia属軟腐病菌は細菌学的性質から4群に分けられた。第1群菌株はE. rhaponticiと同定されたが,何れの菌株も紅色色素を生産しない点で一般のE. rhaponticiと異なった。第4菌群はE. carotovora subsp. carotovoraと一致した。第3菌群はトレハロース利用性など2, 3の性質で第4菌群と異なったが,その他の性質では完全に一致し, subsp. carotovoraと同定した。第2群菌株はラクトースからの酸生成の遅延,β-ガラクトシダーセの欠落,メリビオースおよびラフィノースの非利用性, KCNブロス, 5% NaClブロスおよび36Cにおける非増殖性などの諸性質でsubsp. carotovoraと異なり,新しい分類群に所属するものと考えられた。Pseudomonas属軟腐病菌は細菌学的性質によって5群に分けられた。このうち第1, 2および5群は相互にレバン生成,タバコ過敏感反応などで異なったが,その他の性質で高い類似性を示し,それらの比較からP. marginalisと同定した。第4菌群は若干の性質の相違はみられたが, LOPAT試験を含むその他の細菌学的性状の高い類似性からP. viridiflavaと同定した。第3菌群はLOPAT試験ではP. viridiflavaの反応に一致したが,その他の生理・生化学的性状で大きく異なり,これまでに記載されたいかなる. Pseudomonas属軟腐病菌とも一致しなかった。この群の分類学的所属については今後の研究によって明らかにしたい。
  • 大森 薫, 渡辺 豊
    1986 年 52 巻 1 号 p. 78-81
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    A new soil fungicide, methasulfocarb [S-(4-methylsulfonyloxyphenyl) N-methylthiocarbamate, Kayabest®, NK-191] 10% dust was good for control of bacterial seedling rot of rice caused by Pseudomonas glumae Kurita et Tabei. Better control effect was obtained when the air temperature was suitable for rice seedlings during the nursery period or when inoculum concentration was low. The soil application procedure was the same as that for control of the seedling blight of rice plant caused by several different pathogens.
  • 高松 進, 一谷 多喜郎
    1986 年 52 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本邦未報告のPythium okanoganense Lippsによるムギ褐色雪腐病の発生を確認した。病徴はP. iwayamaiおよびP. paddicumによる既知の褐色雪腐病の場合と同様であった。1982年から1984年にかけて福井県北東部地帯で調査したところ,本菌は157圃場のうち10圃場で分離され,うち2圃場では最優占種であった。本菌は乾田で分離され,湿田では分離されなかった。コムギ1品種(ナンブコムギ)とオオムギ2品種(べんけいむぎ,ミユキオオムギ)に対して接種したところ,いずれの品種も雪腐症状を呈したが,ナンブコムギはべんけいむぎ,ミユキオオムギに比べて発病程度が低かった。P. iwayamaiP. paddicumに比べて病原力はやや弱いが,本菌はわが国におけるムギ褐色雪腐病菌の一つと考えられた。
  • 野津 祐三, 宇杉 富雄, 西森 敬
    1986 年 52 巻 1 号 p. 86-89
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    純化したSDVで, BALB/Cマウスを免疫し,得られた脾細胞をマウス骨ズイ腫細胞と融合させた。SDV粒子に対する抗体産生細胞をスクリーニングするため,培養上清をSDV粒子と反応させ,抗原の中和の有無を, ELISA法で検定した。その結果2株が抗体産生を示した。そのうち7F9由来株は, SDVとカンキツモザイクウイルス(CiMV)の両者に反応する抗体を産生し, 1F6由来株は, SDVのみに反応する抗体を産生した。それぞれ単一クローン化した後,マウス腹腔内に接種した。1F6由来株接種により得られた腹水は,約10,000倍の抗体価(補体結合法)を示した。この腹水よりγ-グロブリンを精製し, ELISA法を行い, CiMVとは反応せず, SDVにのみ高い特異性を示す抗体が得られたことを確かめた。
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 90-103
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 104-111
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 112-120
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 121-136
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 137-144
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1986 年 52 巻 1 号 p. 145-154
    発行日: 1986/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
feedback
Top