日本植物病理学会報
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アスパラガスから分離されたPotexvirus: asparagus virus III
藤澤 一郎
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1986 年 52 巻 2 号 p. 193-200

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抄録
北海道内のアスパラガスから分離された長さ500-600nmのひも状ウイルスの寄主範囲と諸性質について調べた。本ウイルスは汁液接種した11科37種の植物のうち8科26種に感染が認められ,ナス科,アカザ科の多くの植物に感染し,アスパラガスには無病徴感染した。本ウイルスの粗汁液中での不活化限界は,耐熱性(10分)55~60C,耐希釈性5,000-10,000倍,耐保存性(20C)21~23日であり, dip法で電顕観察したウイルス粒子の多くは,長さ580nm,巾13nmの形態を示した。感染葉の超薄切片像ではウイルス様粒子の集団は細胞質中にのみ観察され,感染による細胞器官の変化は認められなかった。純化ウイルスを用いて作製した抗血清の力価は1/1024(重層法による)で, SDSを含む寒天ゲル内で本ウイルスと明瞭に反応した。また,本ウイルスとPotexvirus群の数種ウイルスとの血清学的関係を免疫電顕法で調べた結果,本ウイルスはcactus virus Xおよびnarcissus mosaic virusの各抗血清とは陽性の反応を示した。以上の諸結果から,本ウイルスはPotexvirus群に属する未記載のウイルスと考えられasparagus virus IIIと命名した。
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