日本植物病理学会報
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テンサイそう根病ウイルスとPolymyxa betae Keskinの菌株との関係
阿部 秀夫玉田 哲男
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1986 年 52 巻 2 号 p. 235-247

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抄録
他報に報告した北海道のテンサイそう根病発生土壌から分離された宿主範囲の異なるPolymyxa betae数菌株を用い,種々の植物に接種を行なった結果,本病の病原ウイルス(BNYVV)の伝搬はテンサイに寄生性のあるテンサイ,ホウレンソウ, Chenopodium murale菌株に認められたが,テンサイに寄生性のないシロザ,アオビユ,スベリヒユ菌株には認められなかった。ウイルス保毒のテンサイ菌株はコアカザで増殖することによってウイルスフリー化した。このウイルスフリー化株は汁液接種によってBNYVVを全身感染させたテンサイで増殖したとき,再びウイルスを獲得した。BNYVVの感染性は室内で15年間風乾および湿潤でそれぞれ保存した土壌中でもP. betaeの生存と共に保持されていた。さらにP. betae休眠胞子および遊走子をBNYVV抗血清液に浸漬してもウイルスの感染性は保持されていた。BNYVV粒子はP. betaeの変形体に接したテンサイ根の細胞質中,未熟遊走子の液胞および原形質中に認められた。また本ウイルスは根の組織片を含まない休眠胞子塊の磨砕液からELISA法によって検出された。これらの結果から, BNYVVの伝搬はP. betaeの系統とその菌が増殖した植物に依存していることが明らかになった。さらに本ウイルスはP. betaeの菌体内に長期間保持されているが,菌体内では増殖していないと考えられる。
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