日本植物病理学会報
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日木で発生したニンジンしみ腐病(2)培養と同定
渡辺 恒雄長井 雄治深見 正信
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1986 年 52 巻 2 号 p. 287-291

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抄録
千葉県産のニンジンしみ腐病罹病株から同一とみられる多数のPythium菌が分離された。その代表の2菌株(A-1とA-4)は,ニンジンの根だけに病原性を有し,菌糸の生育速度は非常に遅い。PDAやコーンミール培地上でのコロニー半径(1日当り)は最適温度の28C下で8mmにも達しない。胞子のう(hyphal swellings)は球形,亜球形あるいは落花生形で, PDAほか各種培地上でたやすく形成するが,遊走子のうや遊走子は観察できなかった。雌雄同菌糸性がほとんどで,雄精器は通常1~2個,まれに3~4個が各蔵卵器に付着する。雄精器細胞は,棍棒状,かぎ型など様々な形をし,外壁の一部に切れこみやくぼみを有する。卵胞子は未充満で,卵胞子膜は薄い。本菌は,生理的および形態的特徴から, Pythium sulcatum Pratt and Mitchellと同定した。
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