日本植物病理学会報
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タバコモザイクウイルス感染数種ニコチアナ植物におけるβ-1, 3-グルカンハイドロラーゼ活性の比較
真田 正幸松下 亀久下川 英俊伊東 理世子
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1986 年 52 巻 2 号 p. 320-329

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抄録

タバコモザイクウイルス(TMV)の普通系(TMV-OM)およびトマト系(TMV-T)を接種した数種のNicotiana属植物におけるβ-1, 3-glucan hydfolase活性の変化を調べた。TMV-OMに感染したN. glutinosaN. tabacum var. Xanthi-nc,およびTMV-Tに感染したWhite Burleyでは,局部病斑の出現と共に著しい酵素活性の増加がみられたが, TMV-OMに感染したWhite BurleyとXanthiでは,その増加はみられなかった。局部感染性の植物における酵素活性は,高濃度のTMVを接種したときに高く,また,局部病斑域はその周辺組織より高かった。しかし,物理的(高熱白金耳処理)および化学的処理(3N塩酸処理)で人工的に壊死斑を形成させた葉では,その酵素活性の変化は見られなかった。つぎに, N. glutinosaの感染葉を切りとり,連続25Cと初あ35Cに保ち,その後25Cに移して培養したとき,その酵素活性は顕著に増加し,その場合には局部病斑が形成された。しかし,連続35Cで培養したときには酵素活性の増加も局部病斑の形成も認められなかった。また, N. glutinosaの感染葉を蒸留水に浮べて暗黒,または10-4M DCMU溶液に浮べて連続照明(5,000 lux)下, 25Cで培養したとき,その酵素活性と局部病斑数は減少したが,暗黒下でglucoseを与えると,両者は連続照明下で培養したときとほぼ同じ値を示した。一方, laminarinを含むポリアクリルアミドゲル電気泳動において,本酵素はTMV-OM感染のN. glutinosa, XanthiおよびWhite Burleyでは1本のバンドとして確認されたが, TMV-OM感染のXanthi-ncおよびTMV-T惑染のWhite Burleyでは移動度の異なる新しいバンドがさらに1本認められた。
本研究において, TMV strainsの接種により局部病斑を形成するNicotiana属植物ではβ-1, 3-glucan hydrolase活性の特異的な増加が認められた。TMVの感染によって起こるβ-1, 3-glucan hydrolase活性の急激な増加は, Local lesionの形成に必要なGlucan合成のために起こるものと推察されるが,これは今後の研究によって検討する。

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