日本植物病理学会報
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カーネーション斑紋ウイルスの保存に及ぼす各種添加物の影響
福本 文良栃原 比呂志
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1986 年 52 巻 4 号 p. 636-642

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抄録

カーネーション斑紋ウイルス(CaMV)について簡便で長期間安定な保存方法を確立するため,各種添加物を加えて凍結および凍結乾燥保存を行い以下の結果を得た。10mMりん酸緩衡液pH7.0に懸濁した純化ウイルスでは凍結1時間の処理によってウイルス活性に変化が認められなかったが, -20Cで凍結保存した標品はしだいに活性が低下した。しかし,ペプトン,グリセリンなどを添加した標品では長期間高い活性が維持された。-70C保存では無添加の標品でも高い活性が維持された。pH5.5-8.5ウイルス液を凍結乾燥処理すると, pH5.5-6.0の範囲では復水によって著しく凝集し, pH7.5以上では膨潤するようになり,それらの活性は著しく低下した。しかし,リジンを添加した標品では顕著な保護効果が認められ,粒子の構造変化は少なくなり,活性も高く維持された。無添加で凍結乾燥した標品を65Cで保存すると, 1日で活性がほとんど失われたが,リジンを添加した標品には7日後でも高い活性が認められた。CaMVの保存条件は,粒子の物理化学的性質が類似しているインゲンマメ南部モザイクウイルスのそれに類似していた。

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