日本植物病理学会報
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52 巻, 4 号
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  • 土屋 貞夫, 梁川 真弓, 生越 明
    1986 年 52 巻 4 号 p. 577-584
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Phytophthora vignaeのアズキからの17菌株およびササゲからの4菌株を用いて,アズキおよびササゲに対する病原性を比較した。アズキ菌はアズキに対して病原性を示したが,ササゲにはほとんど病原性がなかった。一方,ササゲ菌はササゲに病原性を示したが,アズキに対してはほとんど病原性がなかった。これらの分離株のたんぱく質と酵素の電気泳動パターンを比較した。両菌間にはほとんど質的な差がなく,また量的な差はごくわずかであった。アズキ菌もササゲ菌もPhytophthora vignaeとされているが,病原性の相違から,アズキ茎疫病菌に対してはP. vignae Purss f. sp. adzuleicola Tsuchiya,Yanagawa et Ogoshi, ササゲの茎腐病の病原菌に対してはP. vignae Purss f. sp. vignee Tsuchiya, Yanagawa et Ogoshiを提案する。さらにアズキ6品種に対する病原性試験からf. sp. adzukicolaの中にはrace 1, race 2, race 3が存在することが判明した。
  • 近藤 則夫, 児玉 不二雄, 赤井 純
    1986 年 52 巻 4 号 p. 585-589
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道のトウモロコシ連作土を用いて,低温条件下(10C)でトウモロコシを栽培すると発芽率が著しく低くなり,不発芽種子からは5種のPythium属菌(P. Paroecandrum, P. spinosum, P. sylvaticum, P. ultimum, 未同定のPythium属菌)が分離された。接種試験の結果,これら5種のPythium属菌はすべてトウモロコシに対し病原性を示した。北海道においてはトウモロコシ苗立枯病は主としてPythium属菌が起こすと考えられる。
  • 一谷 多喜郎, 小玉 孝司, 堀本 圭一, 池田 彰弘
    1986 年 52 巻 4 号 p. 590-598
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    促成切花用とその球根養成畑のダッチ・アイリスにAphanomyces属菌による黄化腐敗病が発生した。本病は葉先が黄化し,地際の葉身は水浸状に軟化,腐敗する。本菌の形態はA. euteichesA. raphaniに近似し,かつ培養的性質もA. euteichesに類似していた。しかし,本菌はこれら2種と異なり,蔵精器細胞の背面に見られるのう状胞様のもの(dorsal outgrowths)は認められず,またマメ科(インゲンマメ,エンドウ各3品種を含む9種16品種),アブラナ科(ダイコンを含む2種4品種)の幼植物に寄生性を示さなかった。本菌はダッチ・アイリス幼植物に強い病原力をもち,病徴を再現した。一方,常に比較のために用いたA. euteiches f. sp. pisiはダッチ・アイリスに寄生性を示すことはなかった。以上の結果から,本菌をダッチ・アイリスに病原性をもつ新しい種と認めAphanomyces iridis Ichitani & Kodamaと命名し,菌株IMI280194を基準株としたい。
  • 橋本 章, 佐野 慎亮, 村上 昭, 水野 晶己, 西川 博明, 安田 康
    1986 年 52 巻 4 号 p. 599-609
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トリフルミゾール(triflumizole, NF-114)の抗菌特性について検討した。本剤は,子のう菌と不完全菌類に対し強い菌糸伸長阻止作用を示した。抗細菌性は概して弱いが, Corynebacteriumに抗菌力を示した。本剤は数種糸状菌分生胞子の発芽を100ppmにおいても阻止しないが,発芽管の膨化,異常分岐をひきおこし,奇形となった発芽管の伸長は停止した。本剤はキュウリうどんこ病およびナシ黒星病の病斑上の胞子形成を阻止し,キュウリうどんこ病に対し,予防ならびに治療効果を示した。薬液を土壌かん注したり,キュウリ第1本葉処理による第2本葉のうどんこ病を防除する効果は弱いが,キュウリ葉裏に点滴処理すると葉表の本病を葉縁にむかつて扇状に防除する効果を示した。また,本剤は揮散効果を示し,キュウリ本葉上でアルミニウム円盤上に処理した薬剤により,その周辺部でうどんこ病の病斑形成を抑制した。
  • 宿主細胞膜に対するAF毒素の作用の電気生理学的解析
    並木 史郎, 岡本 尚, 加藤 潔, 山本 幹博, 西村 正暘, 中塚 進一, 後藤 俊夫, 甲元 啓介, 尾谷 浩, Anton NOVA ...
    1986 年 52 巻 4 号 p. 610-619
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    電気生理学的方法を用いて, AF毒素を処理したイチゴおよびナシ葉柄細胞の膜機能の変化を調査した。また,感受性イチゴへの毒素Iの作用に対する毒素IIの保護効果について再検討した。AF毒素Iは3.2×10-6Mという低濃度で感受性イチゴの光依存性および非依存性の膜電位成分を急激に減少させた。AF毒素IIは感受性イチゴに何らの作用もおよぼさなかった。なお,抵抗性イチゴはいずれの毒素にも反応しなかった。次に,イチゴおよびナシ葉柄を用いて道管灌流法によって道管-生細胞間の界面膜電位差を測定した。毒素Iはイチゴとナシの,毒素IIはナシの,それぞれ感受性品種のみに起電性イオンポンプ活性の阻害をひきおこし,呼吸依存性の膜電位差が急激に減少した。また,両毒素とも抵抗性品種には何ら作用をおよぼさなかった。感受性イチゴにあらかじめ毒素IIを24時間処理してから毒素Iを灌流すると,初期において呼吸依存性の膜電位差の急激な減少はみられなかった。以上の結果から, AF毒素の初期作用は感受性植物の原形質膜の機能喪失であり,毒素Hはイチゴに対して毒素Iによる原形質膜への初期作用を著しく遅延させることがわかった。
  • 有本 裕, 本間 保男, 大澤 富彦
    1986 年 52 巻 4 号 p. 620-625
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツ黒点病菌(Diaoorthe citri (Faw.) Wolf)の侵入をうけると,それが刺激となってカンキツに自己防衛反応が起こり,黒点病斑が形成される。一方,侵入病原菌は病斑内に封じ込められ,ついには死滅することを明らかにした。病原菌が死滅する理由を知るために一連の実験を行い,カンキツは病原菌の感染により抗菌因子を生成することを見出し,黒点病斑からファイトァレキシン, inhibitor D,を単離した。本物質は物理化学的諸性質ならびに黒点病菌に対する抗菌活性が標品と一致することから.その化学構造は6, 7-dimethoxy coumarin (scoparone)と同定された。
  • 大橋 祐子, 下村 徹, 松岡 信
    1986 年 52 巻 4 号 p. 626-635
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    TMV感染や,ある種の薬剤処理によってタバコ葉に多量の感染特異的タンパク質(Pathogenesis-related proteins)が新たに誘導される。誘導の経時変化を, TMVに感染したサムスンNNタバコ葉から精製した本タンパク質の一つPR 1aに対する特異抗体を用いて定量した。また,薬剤処理によって獲得されるTMVに対する抵抗性の程度と,この処理によって誘導された感染特異的タンパク質の量との関係を,同じ系を用いて検討した。サムスン,サムスンNN,キサンチ,キサンチNNを用いた4種の実験結果により,葉に含まれる本タンパク質の量が多いほど, TMVの増殖または拡大が阻害されることが明らかになった。
  • 福本 文良, 栃原 比呂志
    1986 年 52 巻 4 号 p. 636-642
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カーネーション斑紋ウイルス(CaMV)について簡便で長期間安定な保存方法を確立するため,各種添加物を加えて凍結および凍結乾燥保存を行い以下の結果を得た。10mMりん酸緩衡液pH7.0に懸濁した純化ウイルスでは凍結1時間の処理によってウイルス活性に変化が認められなかったが, -20Cで凍結保存した標品はしだいに活性が低下した。しかし,ペプトン,グリセリンなどを添加した標品では長期間高い活性が維持された。-70C保存では無添加の標品でも高い活性が維持された。pH5.5-8.5ウイルス液を凍結乾燥処理すると, pH5.5-6.0の範囲では復水によって著しく凝集し, pH7.5以上では膨潤するようになり,それらの活性は著しく低下した。しかし,リジンを添加した標品では顕著な保護効果が認められ,粒子の構造変化は少なくなり,活性も高く維持された。無添加で凍結乾燥した標品を65Cで保存すると, 1日で活性がほとんど失われたが,リジンを添加した標品には7日後でも高い活性が認められた。CaMVの保存条件は,粒子の物理化学的性質が類似しているインゲンマメ南部モザイクウイルスのそれに類似していた。
  • 吉川 信幸, 井上 忠男
    1986 年 52 巻 4 号 p. 643-652
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Strawberry pseudo mild yellow edge virus (SPMYEV)がイチゴ(品種;宝交早生)から分離された。SPMYEVは汁液伝搬されなかったが,イチゴケナガアブラムシとワタアブラムシによりFragaria属植物に容易に伝搬された。感染葉のdip試料および超薄切片を電顕観察すると,ひも状のウイルス様粒子が検出された。この粒子は健全葉では検出されないことからSPMYEVと考えられた。本ウイルスは,感染アルペンイチゴからショ糖クッション上での分画遠心とショ糖密度勾配遠心,塩化セシウム平衡密度勾配遠心により精製された。精製標品は長さ625nm,巾12nmのひも状ウイルスからなり,最大吸収260mm,最小吸収246nmの核タンパク質特有の紫外線吸収曲線を示し, A260/A280は1.19であった。塩化セシウム中での本ウイルスの浮遊密度は1.32g/cm3であった。本ウイルスの核酸は一本鎖RNAで,その分子量は2.5×106ダルトン,また外被タンパク質は分子量33,500ダルトンの一種類であった。本ウイルスはカーネーション潜在ウイルスと弱い血清関連が認められた。以上の結果から, SPMYEVはCadavirus群に所属する新しいウイルスであると結論された。
  • Susamto SOMOWIYARJO, 佐古 宣道, 野中 福次
    1986 年 52 巻 4 号 p. 653-659
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    本研究では,ウサギから作製した抗体の他に,ニワトリとウズラの卵黄から採取した抗γ-グロブリンを中間抗体として用いる間接ELISA法によって, ZYMVの検出試験を行った。その結果,ウサギ抗体を処理し,次にウズラ抗体を処理した場合,その検出限界は純化ウイルスで10~50ng/ml,罹病葉汁液では104~105倍希釈で,ウサギ抗体を処理しなかった区と差はみられなかった。中間抗体としてニワトリ抗体を用いて,ウサギ抗体処理区と無処理区の比較を行ったところ,罹病葉汁液ではそれぞれ105~106倍, 106~107倍希釈まで検出可能であったが,純化ウイルスでは両区とも5~10ng/mlであった。供試した各種の抗体処理のうちでは,ウサギ抗体を処理せずにニワトリ抗体を処理した時に,健全葉汁液による非特異反応が最も高かった。ウサギ抗体を処理しないでウズラ抗体のみを処理する間接ELISA法は,その検出限界が低いが,比較的簡便であり,圃場試料の診断法にも有用であろう。ウズラは本ウイルスだけでなく,他のウイルスの本法による検出に必要な抗体を作製する動物として使用に耐えると考えられる。
  • 兼平 勉, 篠原 正行
    1986 年 52 巻 4 号 p. 660-668
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オオムギ,コムギおよびエンバクに寄生する4種のUstilago属菌を供試し, 7種類の酵素,エステラーゼ,ペルオキシダーゼ,ロイシンアミノペプチダーゼ,酸性ホスファターゼ,リンゴ酸脱水素酵素,グルタミン酸脱水素酵素およびグルコース-6-リン酸脱水素酵素の電気泳動パターンを比較した。その結果, U. nuda, U. tritici, U. hordei, U. avenaeの分離菌株はそれぞれ種内でほぼ同一の電気泳動パターンを示した。また, U. avenaeU. hordei間ではエステラーゼ,ロイシンアミノペプチダーゼおよびリンゴ酸脱水素酵素の電気泳動パターンに差はなく,その類似度は約70%であった。U. nudaU. triticiの間では電気泳動パターンに差が認められ,その類似度は約10%であった。以上のことからU. nudaU. triticiは分類上区別するのが妥当であると考える。
  • 劉 進元, 寺岡 徹, 細川 大二郎, 渡辺 実
    1986 年 52 巻 4 号 p. 669-674
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キャベツの重要細菌病である黒腐病に対する抵抗性の機作を解明する目的で,黒腐病細菌Xanthomonas campestris pv. campestris (Xcc),キャベツに非病原性のインゲン葉焼病菌X. campestris pv. phaseoli (Xcp),及び腐生細菌の霊菌Serratia marcescens (Sm)を用い,キャベツ葉組織におけるこれら細菌の増殖と接種組織における抗菌活性の変化との関係を比較検討した。
    1. 3種類の細菌をキャベツ葉に針接種及び注入接種した場合, Xccは対数的によく増殖して発病に至ったが, XcpSmの2細菌は,増殖が強く抑制されて徐々に減少した。しかし,健全キャベツ葉から採取した細胞間汁液中では3細菌とも同等によく増殖し,非病原細菌がとくに増殖阻害を受けるということはなかった。
    2. Xcpを注入接種後3日目の接種葉から得た水抽出液及び酢酸エチル粗抽出物は,健全葉からのものよりXccXcpに対して高い抗菌活性を示し,その抗菌物質は低分子性の物質であろうと推定された。
    3. 供試3細菌を接種後,経時的に細菌の増殖経過と酢酸エチルで抽出される抗菌物質の生成量とを比較検討した結果, Xcp接種葉では,抗菌物質が1日後にすでに多量に生成され, 7日目まで高濃度で推移することが明らかとなった。組織内の細菌の増殖は抗菌物質の生成量と対応して接種当初から著しく阻害された。これとほぼ同様のパターンが腐生細菌Smの接種葉でもみられたが,抗菌物質の生成量はかなり低かった。一方, Xcc接種葉では,抗菌物質の生成より先行して細菌が急速に増殖し,病徴を発現した。抗菌物質は感染初期には全く増加せず,発病期ごろからわずかに増え始め,発病末期にはかなりの生成量に達した。なお,健全葉からも微量の抗菌物質が検出された。
  • 比留木 忠治
    1986 年 52 巻 4 号 p. 675-682
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    マイコプラズマ様微生物(MLO)による一新病害Brugmansia candidaの萎縮病がオーストラリア国クイーンズランド州ブリスベン市において発見された。罹病B. candidaおよびその健全植物ならびに接木接種したトマトと非接種のトマトから採取した葉柄と茎について,組織化学的検査と電子顕微鏡観察をおこない,本病とMLOとの関連について検討した。罹病組織の篩管部にはMLOが見出されたが,健全植物には同様のものは認められなかった。DNA染色剤DAPI (4', 6-diamidino-2-phenylindole・2HCl)を用いた螢光顕微鏡観察では,これらのMLOにDNA特有の螢光発色がみられた。罹病植物の篩管部にaniline blue染色によりcalloseの異常集積による螢光が見出された。
  • 有本 裕, 本間 保男
    1986 年 52 巻 4 号 p. 683-689
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツ黒点病斑は黒点病菌の侵入により誘起される防衛反応の結果として形成される。本実験は黒点病菌の侵入を受けた宿主で細胞の異常分裂が起こる理由を知るために行なったものである。
    り病葉から得た褐変組織はカンキツの付傷水洗部(WW)の細胞に異常分裂および異常伸長を誘導した。細胞の異常分裂ならびに異常伸長を誘導する成分(細胞分裂誘導成分: CD)は褐変組織の50%エタノール溶液により抽出された。本成分は高濃度(100mg生体重相当/ml:n)の場合には細胞に異常伸長を,また,低濃度(n/100)では異常分裂を誘導した。さらに,細胞の周囲で本成分の濃度が異なる場合,細胞は濃度の高い側に伸長し,また濃度の高い側と低い側の中間に細胞壁が形成された。周囲の濃度がほぼ同じ場合には細胞は肥大した。本成分はその作用ならびに健全カンキツ組織からは検出されないことから,いわゆるきずホルモンと考えられた。
    本成分による細胞の異常分裂はD. citri感染後に見られる細胞の分裂と同-であった。これらの結果から,黒点病り病部における細胞の異常分裂は感染後に生じる細胞分裂誘導成分の作用によるものであり,本成分は病原菌侵入に対する物理的防衛組織形成に寄与していると考えられた。
  • 柘植 尚志, 小林 裕和, 西村 正暘
    1986 年 52 巻 4 号 p. 690-699
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宿主特異的毒素(以下HST)依存の病原性を示すA. alternata群病原菌では,完全世代が発見されておらず,病原性を支配するHST生成の遺伝解析はなされていない。そこで,ナシ黒斑病菌(AK毒素生成菌) No. 15A菌株とその毒素生成能失活株No. 15B菌株を用い,遺伝子レベルでの比較検討を行なった。両株菌体よりDNAおよびRNAを調製し,それらの相同性を利用したコンペティティブハイブリダイゼーションを行なった結果, 15A菌株のみに特定のRNAが多量に存在することが明らかとなった。なお,このRNAは, 15B菌株のDNAに対しても相補性を持つmRNAであることを確認した。そこで, 15A菌株のcDNAクローニングを試みた。その全RNAからポリ(A)+RNAを調製し, cDNAを作成した。これをpBR322のPstI部位に挿入して,大腸菌RR1菌株を形質転換した。得られた586の形質転換体から, 15A菌株および15B菌株のRNAによるコンペティティブコロニーハイブリダイゼーションにより, 8個のポジティブクローンを選抜した。各種A. alternata菌株を用いて,プラスミドに組み込まれたcDNAと相補性を持つmRNA量を,そのうち4クローンについて検定した。その結果, AK毒素生成菌株,その他のHST生成菌株および腐生的菌株に比べ, AK毒素生成能失活菌株においてのみ,著しく転写量の少ないmRNAが見いだされた。
  • 奥 尚, 山下 修一, 土居 養二, 日浦 運治
    1986 年 52 巻 4 号 p. 700-708
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギ品種のイネ科植物うどんこ病菌(Erysiphe graminis DC.)の分化型(formae speciales)に対する抵抗性の遺伝様式を, f. sp. tritici(コムギ菌)菌系t2×f. sp. agropyri (カモジグサ菌)菌系A1, t2×f. sp. secalis(ライムギ菌)菌系S1間の各雑種菌系およびf. sp. tritici菌系t4を用いて検討し, f. sp. tritici, f. sp. agropyriおよびf. sp. secalisのコムギ品種に対する寄生性の差異について考察した。雑種菌系のコムギ品種に対する病原性は,親のt2に比べ若干低下し,特にt2およびt4に罹病性の品種Hard Federation, Little Club, Mayo 64, Sinvaluchoなどに対して非病原性となり注目された。これら品種の雑種菌系に対する抵抗性は, F2試験により,既知遺伝子Pm1, Pm2, Pm3aおよびPm4aとは異なる遺伝子支配であった。雑種菌系を用いることによってのみ検出された抵抗性遺伝子は, f. sp. agropyri菌系A1またはf. sp. secalis菌系S1由来の非病原性遺伝子に対応するもので, A1またはS1は, t2のコムギ品種に対する病原性遺伝子座に相当する座に非病原性遺伝子を持つと考えられた。Axminster×Cc8はt2に罹病性であったが, t4および雑種菌系AT-C8に抵抗性で,両菌系を用いて既知遺伝子Pm1が検出された。よって, Pm1に対するAT-C8のf. sp. agropyri菌系A1由来の非病原性遺伝子はf. sp. tritici菌系t4のそれと同一であり, f. sp. triticiのレースに対する抵抗性遺伝子が,他の分化型に対する抵抗性にも関与することが判明した。以上の知見により,コムギ品種に対する各菌系の病原性遺伝子数は多数持つものからt2, t4,雑種,A1またはS1の順と推定され, E. graminis DC.の分化型のコムギ品種に対する寄生性の差異は,各々のコムギ品種に対する病原性遺伝子の集積度の差によるものと推定された。
  • 津野 和宣, 脇本 哲
    1986 年 52 巻 4 号 p. 709-720
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネに対して非親和性のカンキツかいよう病菌,アブラナ科そ菜黒腐病菌および腐生性細菌(Pseudomonas fluorescens)をイネ葉柔組織細胞間隙へ注入し,イネ葉柔細胞と細菌との相互反応を電顕観察により検討した。カンキツかいよう病菌の場合には,注入後3日目までに細胞間隙に液域(FS)が形成され,細菌はその中に観察された。FSに接するイネ柔細胞では,細胞質の断片化,原形質膜の小胞化や陥入,さらに,細胞壁と原形質膜との間に高電子密度物質(EDM-p)の集積が認められた。その後,菌体はイネ柔細胞間隙で繊維状物質,高電子密度物質(EDM-i),または,顆粒状高電子密度物質(GEDM-i)などに包まれ,異常形態を示したものが高頻度に観察された。菌体に接するイネ柔細胞においては,多量のEDM-pの集積が高頻度に観察された。アブラナ科そ菜黒腐病菌では, FSの形成は低頻度, EDM-Pの集積は高頻度に認められた。その後における微細構造の変化はカンキツかいよう病菌の場合と類似していた。P. fluorescens注入試料では,FSはほとんど形成されず, EDM-iや網目状構造物に包まれて異常形態を呈した菌体が高頻度に認められた。その他, EDM-Pの集積,原形質膜の波状化,小胞状構造物の出現などが観察された。非生物であるポリスチレン・ラテックスを注入した試料においては,何ら顕著な反応は認められなかった。これらの観察結果より,イネ葉組織とそれに非親和的な細菌との間には,細菌の種類によって質的および量的に異なる複雑な相互反応が存在することが示唆された。
  • 白根 昇, 八田 隆行
    1986 年 52 巻 4 号 p. 721-724
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Botrytis cinereaからプロトプラストを高収量に分離する条件を検討した。2%セルラーゼ“オノズカ”RS, 2%β-グルクロニダーゼH-2, 1%ドリセラーゼおよび0.25%ザイモリアーゼ20Tを含む0.6Mマンニトール液(pH5.3)を, B. cinereaの若い菌糸体に2時間反応させることにより, 1g生体重当り, 107から108個のプロトプラストを分離できた。このプロトプラストをSH寒天(0.6Mシュークロース, 5mM HEPES; pH5.3, 0.5%寒天)に移植し, 24-48時間, 20C下に静置したところ, 40-60%のプロトプラストが菌糸体に再生した。
  • 富樫 二郎
    1986 年 52 巻 4 号 p. 725-727
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    From May to June in 1983 and 1984, some of the scallion plants (Allium chinense G. Don.) raised in the farm of Yamagata University wilted followed by yellow discoloration. The small water-soaked soft rot lesions were observed on the leaf sheath near the soil level and developed to the leaf blade and scale bulb. Forty seven bacterial isolates were obtained from 21 diseased plants. On the basis of their pathogenicities and 75 bacteriological characteristics, the present isolates were identified as Erwinia carotovora subsp. carotovora.
  • 吉川 信幸, Pissawan POOLPOL, 井上 忠男
    1986 年 52 巻 4 号 p. 728-731
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Dot immunobinding assay (DIBA)によるイチゴからのStrawberry pseudo mild yellow edge virus (SPMYEV)の検出条件を検討した。SPMYEV特異的抗体(8,000倍希釈)を一次抗体に,アルカリフォスファターゼ標識抗ウサギIgG-ヤギIgG (Tago社製)を二次抗体として本法の検出限界を調べたところ,精製ウイルスでは50-5pg,粗汁液では5,000倍希釈まで検出が可能であった。イチゴ葉の磨砕に使用する緩衝液には0,1Mホウ酸, pH8.2 (0.01M EDTA, 2% PVPを含む)が最適であった。本法は結果の判定まで3時間程度しか要せず,しかも検出感度が高いことから,イチゴからのSPMYEVの検出に非常に有効な方法であることが明らかになった。
  • 太幡 展司, 本間 保男, 有本 裕, 下山 守人
    1986 年 52 巻 4 号 p. 732-734
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    For observing the growth stages of Botrytis cinerea, a simple method using petals of primula or petunia was developed. When the petals were inoculated with conidial suspension prepared from the culture of B. cinerea, conidial germination began by 5 hr after inoculation. Hyphal penetration occurred by 8 hr, when conidial germination was attained to about 50%. Conidiophores were developed within 3 to 4 days after inoculation, and sporulation was observed on the following day. The symptoms appeared by 11 hr after inoculation, and the number of lesions reached the maximum level by 16 hr (about 180 lesions at inoculum concentration of 105 conidia/ml). Since the life cycle of the fungus is so quick and symptom appears so rapidly on petals, the present method is expected to be applicable for screening chemicals.
  • 池上 正人, 森永 傳, 三浦 謹一郎
    1986 年 52 巻 4 号 p. 735-739
    発行日: 1986/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    bean golden mosaic virus (BGMV)感染葉から,フェノール・SDS法,ヒドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィーおよびシヨ糖密度勾配遠心法によって, BGMVに特異的な2本鎖(ds) DNAを精製し,その感染性について調べた。0.1μ9~10μ9のBGMV dsDNAをインゲンに接種したところ・接種後約2週間目に黄斑モザイク症状が観察された。このような罹病葉内には, BGMVゲノムDNAと雑種形成する分子およびBGMV粒子が検出された。以上の結果から,インゲンに接種したBGMV dsDNAは接種葉内で複製を開始し,ウイルス粒子を形成するものと思われる。
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