キャベツの重要細菌病である黒腐病に対する抵抗性の機作を解明する目的で,黒腐病細菌
Xanthomonas campestris pv.
campestris (
Xcc),キャベツに非病原性のインゲン葉焼病菌
X. campestris pv.
phaseoli (
Xcp),及び腐生細菌の霊菌
Serratia marcescens (
Sm)を用い,キャベツ葉組織におけるこれら細菌の増殖と接種組織における抗菌活性の変化との関係を比較検討した。
1. 3種類の細菌をキャベツ葉に針接種及び注入接種した場合,
Xccは対数的によく増殖して発病に至ったが,
Xcpと
Smの2細菌は,増殖が強く抑制されて徐々に減少した。しかし,健全キャベツ葉から採取した細胞間汁液中では3細菌とも同等によく増殖し,非病原細菌がとくに増殖阻害を受けるということはなかった。
2.
Xcpを注入接種後3日目の接種葉から得た水抽出液及び酢酸エチル粗抽出物は,健全葉からのものより
Xccと
Xcpに対して高い抗菌活性を示し,その抗菌物質は低分子性の物質であろうと推定された。
3. 供試3細菌を接種後,経時的に細菌の増殖経過と酢酸エチルで抽出される抗菌物質の生成量とを比較検討した結果,
Xcp接種葉では,抗菌物質が1日後にすでに多量に生成され, 7日目まで高濃度で推移することが明らかとなった。組織内の細菌の増殖は抗菌物質の生成量と対応して接種当初から著しく阻害された。これとほぼ同様のパターンが腐生細菌
Smの接種葉でもみられたが,抗菌物質の生成量はかなり低かった。一方,
Xcc接種葉では,抗菌物質の生成より先行して細菌が急速に増殖し,病徴を発現した。抗菌物質は感染初期には全く増加せず,発病期ごろからわずかに増え始め,発病末期にはかなりの生成量に達した。なお,健全葉からも微量の抗菌物質が検出された。
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