抄録
いもち病菌胞子からのプロトプラストはザイモリアーゼとβ-グルクロニダーゼを,また,菌糸からのプロトプラストはドリセラーゼとセルラーゼを用いることにより効率よく分離できた。胞子及び菌糸プロトプラストは細胞壁を再生後,直接菌糸復帰する場合とイースト様に出芽する場合が認められた。培養時のpHが高い(pH7.0)場合は液体中で大半のプロトプラストは直接菌糸復帰したが, pHが低い(pH5.0)場合は大半が出芽様発芽をした。pHが低い場合でも寒天中(1%以上)で培養すると直接菌糸復帰する細胞が増大した。カルコフロールホワイトで染色すると,細胞壁再生細胞と出芽様細胞の螢光強度は培養液のpHが高くなるに従って増大したが,復帰菌糸のそれはpHに影響されなかった。このことは細胞壁再生過程がpHにより影響を受けること,また,その結果,発芽形態の差となって表れる可能性を示唆している。