1984年夏,福岡県糸島郡においてハウス栽培のシンビジウム葉身に水浸状ハローを伴う褐色斑点病が発生した。罹病組織からは常に螢光色素非産生性
Pseudomonas属菌が分離され,収集した分離細菌11菌株はいずれも人工接種によりシンビジウムに病徴を再現したほか,
Dendrobium sp.,
Paphiopedilum spp.などのラン類にも病原性を示した。これらの菌株はオキシダーゼ活性陽性で,いずれもpoly-β-hydroxybutylateを集積し, 41Cで生育可能であるが,アルギニンジヒドロラーゼ活性,硝酸塩還元性および脱窒反応は陰性であり, Bergey's Manual (1984)の
Pseudomonas属RNA group II (section II)に所属した。さらに,
m-hydroxybenzoate, 2, 3-butylene glycolおよびamylamineの利用性,およびD-酒石酸,イタコン酸およびメサコン酸の非利用性などを含む細菌学的性質において
P. cepaciaと約95%以上の類似性を示した。また本菌はタマネギりん茎に対して腐敗能を有し,血清学的にも
P. cepaciaに類似していた。以上の結果から病原細菌を
P. cepaciaと同定した。
P. cepaciaによるシンビジウム病害の報告は初めてであり,病名として「シンビジウム褐色斑点細菌病(Bacterial brown spot disease of
Cymbidium)」を提唱する。
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