日本植物病理学会報
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Rhizoctonia solani Kühn菌核を摂食するジャガイモクロバネキノコバエPnyxia scabiei(Hopkins)とテンサイ根腐病発生畑におけるその密度変動
内藤 繁男牧野 俊一杉本 利哉
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1988 年 54 巻 1 号 p. 52-59

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抄録

1985年秋,北海道農業試験場(札幌市)のテンサイ根腐病発生圃場で,病原菌Rhizoctonia solani Kühn AG-2-2の菌核と菌糸を摂食し,崩壊させる双翅目昆虫ジャガイモクロバネキノコバエPnyxia scabiei(Hopkins)を見いだした。幼虫は菌核にい集し,摂食も旺盛であった。すなわち室内実験では,菌核15個と幼虫30頭を直径6cmシャーレに入れると,菌核は24時間以内にほとんど食い尽くされ,消失した。摂食温度は10~30C,最適は25Cであった。R. solani菌糸融合群間では,菌核に対する摂食はAG-2-2, AG-3およびAG-5で活発で, AG-1, AG-2-1およびAG-4は劣った。圃場では,本種昆虫はテンサイ根腐病の発病・蔓延に伴って急増した。激発株では1株当たりの幼虫数が5,000頭を超える場合もあった。幼虫の多くは腐敗部根面および付着土壌に集中して分布した。AG-2-2菌核を10または250μmフィルター付きの容器内に入れ,激発株周囲に3週間埋めると,菌核の崩壊は250μm区だけに起こった。また菌核15個,幼虫30頭を無殺菌土壌を詰めたテンサイ育苗用紙筒に埋めると, 9日後菌核はまったく回収されなかった。以上の結果から,本種昆虫は根腐病発生後根圏のR. solani AG-2-2菌核の密度を低下させる一要因となる可能性が示唆される。

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