日本植物病理学会報
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54 巻, 1 号
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  • 本間 保男, 有本 裕
    1988 年 54 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツ果実は黒点病の激しい被害を受けても腐敗に至らない。これは果皮に存在する先在性抗菌物質とファイトアレキシンの誘導などによるものと考えられる。種々の器官と果実内組織からの溶媒抽出液とを用いて柄胞子発芽,発芽管伸長ならびに発病抑制効果を検討した。葉,枝,果皮,果肉の各抽出液のなかで,柄胞子発芽および発芽管伸長抑制の最も強かったのは果皮抽出液であり,ついで葉,果肉,枝の順であった。果実果梗基部から果実内部の維管束系を同様に調べたところ,果盤下組織からの抽出液の抑制力が強く,ついで果盤抽出液であった。しかし果実内部の維管束抽出液でも抑制効力を有していた。ナツミカンの外果皮,中果皮,じょうのうおよび果肉からの各抽出液の活性を比較したところ,果肉および外果皮抽出液はその100倍希釈液まで抑制したが,ほかの部位からの抽出液は抑制しなかった。収穫後2ヵ月以上経過した果実では,果肉抽出液の抑制力は徐々に低下した。果皮からの抽出液は, 102倍では黒腐病,灰色かび病,炭そ病,黒斑病に対して抑制効果を示し, 102-104倍に希釈しても黒点病に対して抑制効果を示した。
  • 藤田 佳克, 池田 良一, 鈴木 穂積
    1988 年 54 巻 1 号 p. 9-14
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ツルマメの紫斑病抵抗性の遺伝子分析を行った結果,抵抗性は作用力が異なる二つの優性遺伝子によって支配されると推定された。二つの抵抗性遺伝子は,単独でも栽培品種のなかでもっとも抵抗性強品種の花嫁より強い抵抗性を示し,硬実性,草丈,種皮色, 100粒重とはほとんど連鎖していないと推察された。したがって,ツルマメの抵抗性遺伝子は,紫斑病に対し高度な抵抗性をもつダイズ品種の育成にとって有効と考えられた。
  • 鮫島 信隆, 一谷 多喜郎
    1988 年 54 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    高圧滅菌したキュウリ茎片を高圧滅菌後微生物相を回復させた土壌に埋没し,その周辺部におけるPythium butleriP. zingiberumの行動を比較した。P. zingiberumに比べ, P. butleriの卵胞子は茎片の周辺部で高い発芽率を示した。また, P. butleriの菌糸は土壌中をより速く伸長し,より少数の卵胞子によっても茎片に定着することができた。したがって,両菌のキュウリ茎片への定着率の違いは,土壌に埋没した茎片周辺部における卵胞子の発芽能と菌糸の伸長速度の差に起因すると考えられた。さらに, P. zingiberumに比べ, P. butleriは定着した後の茎片から長期にわたって分離され,土壌中におけるより高い生存能が認められた。P. butleriは茎片周辺部でより多くの卵胞子を形成した。しかし,両菌菌糸の土壌中における生存能には差が認められなかった。したがって,土壌中に埋没されたキュウリ茎片に定着した後に示す両菌の生存能の差異は,同茎片内における卵胞子形成能の違いによると推察された。
  • 佐藤 守
    1988 年 54 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イタリアンライグラスかさ枯病菌Pseudomonas syringae pv. atropurpurea NIAES 1309株の植物毒素(コロナチン)産生能は, pCOR1と命名された58メガダルトンのプラスミドの支配を受ける。この菌株にP. syringae Pv. tabaci BR2の伝達性プラスミドpBPW1:: Tn7を導入したのち, NIAES 1309の非病原性変異株と混合し,イタリアンラィグラスに接種した。その結果,両菌株は植物内で接合をおこし, pBPW1:: Tn7は高頻度で非病原性株に移行した。これらトランスコンジュガント894株のうち20株は, pCOR1をも共に保有していた。これら20株は,すべてコロナチン産生能力を有し,かつイタリアンライグラスに病原性を示すようになった。すなわち,植物病原Pseudomonasとしては初めて植物内での病原性遺伝子の菌株間移行が確認された。
  • Surang KARNJANARAT, 土屋 健一, 松山 宣明, 脇本 哲
    1988 年 54 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/04/03
    ジャーナル フリー
    日本およびタイの各種軟腐野菜から分離・収集したErwinia carotovora 79菌株の加熱抗原を供試し, E. c. subsp. carotovora (Ecc)のbiovar B, CおよびDに属する7菌株,およびE. c. subsp. atroseptica (Eca)に属する1菌株の非加熱菌体を用いて作成した計8種の抗血清に対する反応を寒天ゲル内拡散法によって比較した。その結果,各抗血清は相同の抗原との間にそれぞれ特異的なa~gのうちのいずれか1本の沈降帯を形成したが,すべての抗Ecc血清はEca抗原と反応せず,抗Eca血清はすべてのEcc抗原と反応しなかった。また, biovar D~Gに属するEcc各菌株はbiovar BおよびCのいずれの菌株に対する抗血清とも特異的な沈降帯を形成せず,また一部の細菌学的性質においてEcaと類似しているEccのbiovar A~Cの各菌株(中間型菌株)は,いずれもbiovar D (菌株7129)の抗血清との間に沈降帯を形成しなかった。これらの結果から, Eccの中間型菌株(biovar A~C)は血清学的にも典型的なEccおよびEcaとは異なることが明らかになった。
  • 津野 和宣, 脇本 哲
    1988 年 54 巻 1 号 p. 32-44
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ条斑細菌病菌,イネ白葉枯病菌,アブラナ科野菜黒腐病菌,およびPseudomonas fluorescensをイネ葉柔組織の細胞間隙に注入した際,宿主-細菌相互反応の結果としておこる微細構造の早期における変化を電子顕微鏡で観察した。すべての供試細菌において,大部分の菌体は注入後5時間までにはイネ細胞の表面に吸着した。イネに病原性のある条斑細菌病菌と白葉枯病菌では,注入後10時間までには菌体近くのイネ細胞の原形質膜を変形させ,菌体の周囲に液域(FS)を形成させた。このFSはしだいに拡大し,2日後には多くの細胞間隙を満たし,そのなかで細菌の増殖がみられた。FSはイネ細胞の細胞壁と原形質膜が注入細菌に侵されることによるイネ細胞からの漏出液と考えられた。FSはイネに対して病原性を示さないカンキツかいよう病菌およびアブラナ科野菜黒腐病菌の場合にも形成されたが,形成までに長時間を要し,形成頻度および拡がりの程度はイネの病原細菌の場合に比較してわずかであった。これらの細菌に接したイネ細胞では,ペリプラズマ領域に高電子密度物質(EDM-P)が集積し,膜構造の小胞化が観察された。P. fluorescensの場合には, FSの形成はみられず,一部の菌体はゆるい網状の繊維状物質にとり囲まれ,近くのイネ細胞では注入1~2日後までにEDM-Pの集積が認められた.これらの結果から, FS形成は親和的な現象であり, EDM-pの集積は非親和的な現象と考えられ,両現象の速度と程度とは宿主細胞と注入細菌との親和性の程度によって異なることが示唆された。
  • 古市 尚高, 鈴木 譲一
    1988 年 54 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ疫病菌から病原性因子とされているグルカンを高速液体クロマトグラフィーにより精製・純化した。レース1, 2, 3, 4より純化したグルカンは分子量4,700であり,本物質はレース0のグルカン成分中に存在が確認された。次にε-DNP-リジンを共有結合したグルカンを抗原にしてウサギ抗体を作製した。本菌発芽液中のグルカンを特異的に高感度に検出するために,固相化酵素抗体法(ELISA)の適用を試みた。その結果ウェル当り43ピコモルのグルカンが検出でき,また疫病菌の発芽液中には,レース1, 2, 3, 4, レース1, レース0ともに同一のエピトーブをもつ分子量4,700のグルカンが生産されることが明らかになった。グルカンの生成量は,本菌の被のう胞子発芽後5時間までは,親和性菌,非親和性菌ともに増加した。また疫病菌の親和性および非親和性レースのグルカンの過敏感反応抑制効果を検討した結果,いずれのグルカンも過敏感細胞死を抑制した。しかし,親和性菌のグルカンは非親和性菌のそれよりリシチンの集積を若干強く阻害した。グルカンの感染初期における生理的意義について議論した。
  • 内藤 繁男, 牧野 俊一, 杉本 利哉
    1988 年 54 巻 1 号 p. 52-59
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1985年秋,北海道農業試験場(札幌市)のテンサイ根腐病発生圃場で,病原菌Rhizoctonia solani Kühn AG-2-2の菌核と菌糸を摂食し,崩壊させる双翅目昆虫ジャガイモクロバネキノコバエPnyxia scabiei(Hopkins)を見いだした。幼虫は菌核にい集し,摂食も旺盛であった。すなわち室内実験では,菌核15個と幼虫30頭を直径6cmシャーレに入れると,菌核は24時間以内にほとんど食い尽くされ,消失した。摂食温度は10~30C,最適は25Cであった。R. solani菌糸融合群間では,菌核に対する摂食はAG-2-2, AG-3およびAG-5で活発で, AG-1, AG-2-1およびAG-4は劣った。圃場では,本種昆虫はテンサイ根腐病の発病・蔓延に伴って急増した。激発株では1株当たりの幼虫数が5,000頭を超える場合もあった。幼虫の多くは腐敗部根面および付着土壌に集中して分布した。AG-2-2菌核を10または250μmフィルター付きの容器内に入れ,激発株周囲に3週間埋めると,菌核の崩壊は250μm区だけに起こった。また菌核15個,幼虫30頭を無殺菌土壌を詰めたテンサイ育苗用紙筒に埋めると, 9日後菌核はまったく回収されなかった。以上の結果から,本種昆虫は根腐病発生後根圏のR. solani AG-2-2菌核の密度を低下させる一要因となる可能性が示唆される。
  • 柿島 真, 佐藤 昭二
    1988 年 54 巻 1 号 p. 60-63
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アマドコロ類(アマドコロ,ナルコユリ,ミヤマナルコユリ)およびマイヅルソウに精子・さび胞子世代を形成するさび病菌について,接種試験ならびに形態観察を行い,その生活史と病原菌の形態を明らかにした。すなわち,これらの夏胞子・冬胞子世代はクサヨシに形成され,病原菌はPuccinia sessilisであることが明らかとなった。
  • 後藤 正夫
    1988 年 54 巻 1 号 p. 64-67
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Vibriosの分類・同定に広く用いられているプテリジン誘導体0/129に対する植物病原細菌の感受性を調べた。Pseudomonas pseudealcaligenes subsp. konjaci, Erwinia ananas(氷核活性茶葉面細菌), E. milletiae, E. herbicola, E. rhapontici, およびCurtobacterium flaccumfaciens pv. oortiiでは10μg/discで阻止帯が形成され,とくにE. milletiaeは高い感受性を示した。またP. marginalis pv. marginalis, E. carotovora subsp. carotovora, subsp. atroseptica, subsp. betavasculorum, subsp. wasabiae, Xanthomonas campestris pv. theicola, およびE. chrysanthemi pv. zeaeは150μg/discで阻止帯が形成された。この結果, 0/129感受性は,植物病原細菌においても,分類・同定上有効な鑑別性状となりうることが明らかとなった。
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 68-80
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 81-93
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 94-103
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 103-110
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 111-118
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
  • 1988 年 54 巻 1 号 p. 119-130
    発行日: 1988/01/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
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