日本植物病理学会報
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北海道におけるユリのウイルス病
萩田 孝志児玉 不二雄赤井 純
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1989 年 55 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

北海道内の食用および観賞用ユリの主要栽培地におけるウイルス病発生の実態を調査した。全般的にウイルスフリー球を植え付け,寒冷紗を被覆したほ場においては発生が少なかったが,それらを使用していない露地栽培したほ場においては発生が多く,その発生状況は地域および品種間差が認められた。病徴はモザイク症状が多く,えそ条斑症状は少なかった。食用ユリのモザイク株から病原ウイルスを分離,同定した結果,キュウリモザイクウイルス(CMV),ユリ潜在ウイルス(LSV)およびチューリップモザイクウイルス(TBV)の発生が認められた。CMV, LSVおよびTBVの各抗血清を用いて,ELISA法により病原ウイルスの検出を行った結果,食用ユリからはCMVが最も多く,また広く北海道各地から検出された。観賞用ユリからはLSVが最も多く検出された。ユリ(食用および観賞用)のモザイクおよびえそ条斑株はほとんどのものがウイルスに感染しており,その種類別には食用ユリからCMV,観賞用ユリからLSVが最も多く検出された。一方,多数の無病徴株からCMVおよびLSVが検出された。これらのことから,ユリのウイルス病は無病徴感染が多く,その診断法としては,ELISA法など血清学的検定法の導入が重要である。

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