九州地方の土壌に生息する
Pythium菌の種名と分布を明らかにするため,キュウリとルーピン種子による捕捉法を用いて菌を分離し,調査した。供試した25ヵ所の土壌(4∼9/県)中,24試料から1試料当り1∼7種の
Pythiumが分離されたが,福岡県の1試料からはまったく分離できなかった。分離した合計433菌株は,H-Zs(糸状胞子嚢から遊走子を形成するが,生殖器官は未形成の一群)を含む16種に分類・同定できた。最も一般的に分布していたのは,
P. sylvaticumで,22ヵ所から201菌株が分離された。次いで,
P. ultimumと
P. aphanidermatumの分布が広く,13∼17ヵ所から51∼91菌株が分離された。寒天培養覆土接種法を用いて16種の36菌株(未同定菌を含む)の接種試験を行ったところ,
P. sylvaticumと
P. ultimumの各3菌株を含む合計10菌株はキュウリの萌芽率を60%以下に低下させ,また,
P. aphanidermatum, P. sylvaticumおよび
P. ultimumの各2菌株を含む9菌株は萌芽後の子苗の40%以上を枯死または罹病させた。コマツナでは,いずれの処理区でも85%以上の萌芽率を示し,萌芽前の被害は認められなかった。しかし,
P. sylvaticum, P. ultimum, P. irregulareなど8菌株はいずれも萌芽後に40%以上の被害率を引き起こした。他の供試菌の病原性は,かなり強いものからまったく認められないものまで,さまざまであった。
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