抄録
ウンシュウミカンの樹上果の果梗部へD. citriを接種し,一定期間後に収穫して貯蔵すると,その後期に軸腐病の発生することを認めた。同様の方法で果梗部へ病原菌を接種した果実では,果梗および果梗基部内部に菌糸の進展することを認めたが,果盤から果盤下組織にかけてはある種の針状結晶が多量に分布し,このあたりには菌糸の存在はみられなかった。アセトン抽出を行って抗菌活性を調べた結果,粗結晶の4,620倍から462倍にかけて,菌糸の伸長を阻害したが,その範囲では高濃度ほど強く阻害した。幼果期の果梗基部には粗結晶は観察されなかったが,10月以降には多くが観察された。しかし貯蔵末期になるとそれがまったくみられなくなり,自己消費したものと考えられた。抗菌活性では砂じょう抽出液でも似た傾向がすでに認められている。同一と思われる結晶は果実内維管束系や葉にも存在し,とくに成葉に多く含まれていることが明らかとなった。