抄録
1984年,京都農総研のほ場でトマト(豊竜)の茎葉・果実に激しいえそ条斑やえそ斑点を現したのち,ほとんどの株が枯死する病害が発生した。この病株から分離されたキュウリモザイクウイルス(CMV)をトマト14品種の幼苗に接種したところ,全品種にえそ症状が現れ,発病株はすべて枯死した。ナス,ピーマン,タバコではえそ症状を示さず,モザイク症状のみが認められた。本CMVの血清型はY型で,核酸にはサテライトRNA (SATR)を含んでいた。電気泳動で分離したSATRをトマトにえそ症状を示さない他のCMV (CMV-C)のRNAとともにトマト(福寿2号)に接種したところ,えそ症状が再現された。本SATRは北海道でトマトえそ症状株CMV-P(n)から分離されたSATR(吉田ら,1985)とは7.5%ポリアクリルアミドゲル電気泳動で異なる泳動度を示したことから,わが国で未報告のSATRと考えられた。