日本植物病理学会報
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トリフルミゾール低感受性Gibberella fujikuroi (Fusarium moniliforme)の諸性質
濱村 洋川原 正見下田 進
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1989 年 55 巻 3 号 p. 275-280

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抄録

トリフルミゾール(triflumizole,トリフミン®:エルゴステロール生合成阻害剤)に対して低感受性を示すGibberella fujikuroi (Fusarium moniliforme)の諸性質,とくに病原性およびジベレリン生産能について検討した。自然感染籾および発病苗から分離した500菌株のうち433菌株(86.6%)は,トリフルミゾールに対してMIC値が10ppm以下であったが,30菌株(6.0%)は1,000ppm以上であった。1,000ppm以上のMIC値を示す菌株を低感受性菌とした。しかし,これらの低感受性菌のEC50値は1.3ppm以下で,感受性菌と近似していた。感受性菌と低感受性菌の形態的諸性質は類似していた。感受性菌の分生子懸濁液に籾を浸漬した場合,あるいはイネの開花期に分生子を接種した場合は,いずれも著しい徒長苗を生じたが,低感受性菌ではほとんど見られなかった。リチャード液体培地で培養した感受性菌は,低感受性菌よりも多量のジベレリン様物質を生産することが“イネ苗テスト”より明らかになった。また,高速液体クロマトグラフィーで調べた結果,感受性菌は低感受性菌の3倍以上のジベレリン(GA3)を生産した。しかし,フザリン酸については両者の間に差異は認められなかった。低感受性菌のジベレリン生産能の低さが病原力の弱さを反映した。

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