日本植物病理学会報
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55 巻, 3 号
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  • 安藤 康雄, 成澤 信吉
    1989 年 55 巻 3 号 p. 261-266
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    最近発生の多いチャの新梢枯死症状の病原はチャ輪斑病菌Pestalotia longisetaであり,またそのP. longisetaは前茶芽の摘採後に形成される輪斑病病斑からおもに供給されることから,摘採後の輪斑病発病葉数と次期茶芽での本症状の発生数との間には正の相関がみられてもよいと想定される。しかし,実際には両者間には正の比例関係を示さないことが多く,逆に発病葉数が多くなると枯死新梢数が減少する場合がある。そこで,その原因について検討した結果,チャ赤葉枯病菌Glomerella cingulataが本症状の発生を抑制していることが推測された。新梢に対しP. longisetaの接種と同時に,または接種前あるいは接種後にG. cingulataを接種したところ枯死新梢数はかなり減少し,新梢枯死症状のG. cingulataによる発生抑制が示された。茶園内ではP. longisetaによる輪斑病の発生にともなってG. cingulataの密度も増加し,この増加したG. cingulataP. longisetaによる新梢枯死症状の発生を抑制するため,発病葉数と枯死新梢数との間に必ずしも正の相関が認められなくなると考えられた。
  • 安藤 康雄, 成澤 信吉
    1989 年 55 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    チャ葉でのチャ輪斑病菌Pestalotia longisetaの病斑形成に対するチャ赤葉枯病菌Glomerella cingulataの影響を検討した。品種「やぶきた」の成木園において,本品種に対し強病原性のP. longisetaと弱病原性のG. cingulataを重複接種することにより,P. longisetaによる病斑形成が非常に抑制された。P. longisetaの接種に対しG. cingulataを前接種しても後接種しても,P. longisetaによる病斑形成が抑制された。G. cingulataによる抑制機構として,二つが考えられた。一つは,P. longisetaからG. cingulataへの病斑形成菌の交代によるものである。P. longisetaにより形成された病斑周縁にG. cingulataが入りこみ,P. longisetaの増殖を抑えるとともに,G. cingulataと宿主が相対することになるため,ついには病斑の拡大は停止する。これによって形成された病斑では,中心にP. longiseta,周囲にG. cingulata,周縁には半透明あるいは暗紫色の阻止帯が認められた。P. longisetaの感染後におけるG. cingulataの関与の有無,程度あるいは時間的遅速,さらに宿主の生理活性状態によって,病斑内における両菌の分布割合やその大きさが決定されると考えられた。もう一つは,G. cingulataP. longisetaより先に接種することによる宿主の抵抗性の誘導であり,これによってP. longisetaの感染は不成立に終わると考えられた。
  • 濱村 洋, 川原 正見, 下田 進
    1989 年 55 巻 3 号 p. 275-280
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トリフルミゾール(triflumizole,トリフミン®:エルゴステロール生合成阻害剤)に対して低感受性を示すGibberella fujikuroi (Fusarium moniliforme)の諸性質,とくに病原性およびジベレリン生産能について検討した。自然感染籾および発病苗から分離した500菌株のうち433菌株(86.6%)は,トリフルミゾールに対してMIC値が10ppm以下であったが,30菌株(6.0%)は1,000ppm以上であった。1,000ppm以上のMIC値を示す菌株を低感受性菌とした。しかし,これらの低感受性菌のEC50値は1.3ppm以下で,感受性菌と近似していた。感受性菌と低感受性菌の形態的諸性質は類似していた。感受性菌の分生子懸濁液に籾を浸漬した場合,あるいはイネの開花期に分生子を接種した場合は,いずれも著しい徒長苗を生じたが,低感受性菌ではほとんど見られなかった。リチャード液体培地で培養した感受性菌は,低感受性菌よりも多量のジベレリン様物質を生産することが“イネ苗テスト”より明らかになった。また,高速液体クロマトグラフィーで調べた結果,感受性菌は低感受性菌の3倍以上のジベレリン(GA3)を生産した。しかし,フザリン酸については両者の間に差異は認められなかった。低感受性菌のジベレリン生産能の低さが病原力の弱さを反映した。
  • いもち病菌(Pyricularia oryzae)の代謝に及ぼす影響
    奥野 哲郎, 古澤 巌, 松浦 一穂, 獅山 慈孝
    1989 年 55 巻 3 号 p. 281-289
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    フェリムゾン(TF-164)はPyricularia oryzaeHelminthosporium oryzaeなどによるイネ病害防除のために開発された新しい浸透性防除剤である。フェリムゾンはいもち病菌におけるタンパク質,DNA, RNA,細胞壁合成を阻害しなかった。フェリムゾンは14C-酢酸や14C-ピルビン酸の菌糸細胞内への取込みを阻害し,これらの前駆物質の脂質画分への取込みを見掛け上阻害した。その取込み阻害は脂質のいずれの成分においても均一に認められた。フェリムゾンはいもち病菌菌糸より調製した脂肪酸合成酵素活性をまったく阻害しなかった。一方,3H-ロイシンなどのいくつかのアミノ酸の酸不溶性画分への取込みは,フェリムゾンにより促進される傾向にあった。このように,フェリムゾンの作用点が,いもち病菌の生体構成成分の生合成系でないことが示唆された。フェリムゾンが,いもち病菌菌糸からの酸性電解質の漏出を起こすこと(既報)および,酢酸やピルビン酸の細胞内への取込みを特異的に阻害したことより,イオンを含む酸性電解質の透過性に関与する膜機能に影響を及ぼすことが,フェリムゾンの作用点の一つであることが示唆された。
  • 朴 杓允, 大野 藤吾, 西村 正暘, 甲元 啓介, 尾谷 浩
    1989 年 55 巻 3 号 p. 290-295
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒斑病菌毒素(AK毒素)を処理した感受性ナシ葉細胞では1時間以内に原形質膜の変性が引き起こされるが,抵抗性ナシ葉細胞では10時間後においても膜変性をはじめとする細胞の異常は観察されなかった。感受性細胞では,原形質膜の陥入と断片化,原形質膜外に不定形物質の集積,原形質連絡糸の管状構造の突出といった構造上の変化が認められるが,加えて毒素処理の1∼6時間後にはゴルジ小胞の数の増加が誘導された。アルカリビスマス液に強陽性を示すゴルジ小胞は,陥入原形質膜直下の辺縁細胞質に多数認められた。これらの小胞は,陥入原形質膜と融合し,さらに小胞内部から糖陽性物質が原形質膜外に放出されることが観察された。しかし,陥入した原形質膜近くの細胞壁に構造上の変化は認められなかった。以上の結果から細胞壁と陥入原形質膜間に多量に認められる糖陽性物質は,細胞壁の変性による結果ではなく,むしろ毒素処理した感受性細胞で誘導された多糖類の合成の促進と輸送,さらに原形質膜外への沈着によって形成されたことを本研究は示している。
  • 佐野 義孝, 小島 誠
    1989 年 55 巻 3 号 p. 296-302
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カブモザイクウイルス(TuMV)とキュウリモザイクウイルス(CMV)の重複感染はダイコンに激しいモザイク病を引き起こす。ダイコンにおける両ウイルス間の相互作用について比較・考察を行った。TuMVは,単独感染した場合でもダイコンに軽微なモザイク症状を引き起こしたが,CMV単独の感染植物は無病徴であった。また,これら2種のウイルスを接種された植物は,TuMVの単独感染の場合よりもさらに激しいモザイク症を呈した。間接ELISAにより,ダイコン葉におけるCMVの増殖量はTuMVの存在により高まることが示されたが,一方,TuMVの濃度はCMVとの重複感染による影響をほとんど受けなかった。TuMVと重複感染したダイコンにおけるCMV濃度の増加は,接種葉よりも全身感染した上位葉において顕著に観察されたことから,CMVのダイコン葉における全身的な移行と拡散がTuMVの存在により助長されることが示唆された。
  • 真宮 靖治, 池田 武文, 庄司 次男
    1989 年 55 巻 3 号 p. 303-308
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    6∼8年生アカマツから切り取った1年生枝を各種濃度の安息香酸水溶液に4日間さして安息香酸(BA)を吸収させた。その後切り枝は水道水に移して,マツノザイセンチュウを接種した。接種後,切り枝の水分状態の変化および病徴の発現経過を追った。BAの0, 50, 100ppm各濃度溶液で処理した切り枝では,線虫接種により100%の枯死率であったが,300ppmでは枯死率0∼12%と発病抑制効果が明らかであった。BA 300ppm処理区切り枝のBA吸収量は,乾燥重1g当り3.1mgであった。濃度500ppmの処理では,安息香酸吸収による直接的影響で切り枝は枯死した。この場合のBA吸収量は,乾燥重1g当り4.4mgであった。線虫接種による枯死切り枝すべてにマツノザイセンチュウが多数検出された。BA 300ppm処理の健全切り枝では,線虫接種後実験期間中を通じマツノザイセンチュウが生息していたが,増殖活動は認められなかった。BA 300ppm処理区の切り枝では吸水量が多く,含水率の高いのが特徴的であった。また,木部圧ポテンシャルで示される切り枝の水分状態も最高であった。
  • 梅本 清作, 村田 明夫, 長井 雄治
    1989 年 55 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒星病菌分生子懸濁液を遠心処理により効率的に濃縮する方法について検討した。懸濁液をそのまま遠沈管に取り遠心処理を行うと,分生子は浮く性質が強く,遠沈管の底部に効率よく集めることはできなかった。しかし,分生子懸濁液に薄い寒天液を少量添加した後,遠心処理を行ったところ,底部に寒天が集まり,その中に効率よく分生子が捕えられた。その効率は,10mlの分生子懸濁液に0.1%寒天液を0.5ml添加した場合,理論値がもとの胞子濃度の50倍に対して実測値は41倍,同様に1ml添加した場合には理論値の25倍に対して22.1倍であった。秋季にナシの枝を流下する雨水を採取し,本法により濃縮し,雨水中の分生子数を光学顕微鏡で調査したところ,十分調査可能であり,分生子数を定量的に把握することが可能であった。寒天液は約5Cの冷蔵庫中に保存すれば約6ヵ月以上腐敗しなかった。本濃縮法を寒天液濃縮法(ASC)と呼称することにしたい。
  • 石川 浩一, 大村 敏博, 土崎 常男
    1989 年 55 巻 3 号 p. 315-323
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ縞葉枯ウイルス(RSV)の粒子および核酸について検討した。RSV粒子は電顕下で環状のひも状粒子として観察された。純化RSVより抽出した核酸をコンポジットゲル(2%ポリアクリルアミド-0.5%アガロース)で電気泳動したところ4本の一本鎖RNA (ss-1, 2, 3, 4)の他に同数の二本鎖RNA (ds-1, 2, 3, 4)が検出された。未変性条件下における一本鎖RNAの分子量は3.1, 1.5, 1.2および1.0×106,二本鎖RNAの分子量は5.0, 2.8, 2.1および1.7×106であった。ショ糖密度勾配遠心(10∼40%)を繰り返して粒子を分離したところ従来報告のM成分は2成分から成り,合計4成分(nB, B, M2, M1)であった。単離成分から核酸を抽出したところnB成分よりss-1とds-1, B成分よりss-2とds-2, M2成分よりおもにss-3とds-3,およびM1成分よりおもにss-4とds-4が検出された。ds-RNAを変性させて得たss-RNAの分子量が各成分中のss-RNAに対応すること,およびds-RNAをプローブとしたハイブリダイゼイションの結果から二本鎖RNAの片方は同一成分より検出される一本鎖RNAと同一であることが示唆された。
  • 高浪 洋一, 新田 直人, 久保 進
    1989 年 55 巻 3 号 p. 324-329
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコ葉肉プロトプラストへのウイルスRNA接種に好適な塩基性ポリマーを探索する過程で,ポリエチレンイミン(PEI)がキュウリモザイクウイルス(CMV)ならびにタバコモザイクウイルス(TMV) RNAの感染効率を著しく高めるとともに,CMVやタバコえそ萎縮ウイルスの接種にもきわめて有効であることを見いだした。RNA接種にはpH 5.0の25mMリン酸緩衝液,ウイルス接種にはpH 5.5の10mMクエン酸緩衝液が適していた。0.2∼0.3μg/mlのTMVあるいはCMV RNAを接種することによって,90%以上の感染率が安定して得られた。接種の際のRNAとPEIの比率は非常に重要であり,接種液中のウイルスRNA濃度を高くしすぎると,感染効率は大幅に低下した。
  • 後藤 正夫, 後藤 孝雄, 稲葉 忠興
    1989 年 55 巻 3 号 p. 330-335
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1988年1月および2月に香川県で凍霜害の被害を受けたブロッコリー,カブおよびエンドウの葉から氷核活性細菌の分離を行い,前2者から75菌株を得た。このうち60菌株(80%)がPseudomonas viridiflava, 9菌株(12.0%)がP. syringae, 2菌株(2.7%)がP. fluorescens, 4菌株(5.3%)がErwinia ananasど同定され,P. viridiflavaの比率が高い点が注目された。P. syringaeの9菌株は健全野菜葉から分離した氷核活性P. syringaeと2, 3の性質で異なった。P. viridiflavaおよびP. syringaeの一部の菌株にはライラックの若葉に弱い病原性を示すものがみられた。P. fluorescensの性質はbiovar Vのそれに類似した。凍霜害の被害を受けたブロッコリーの葉では,調査した75葉中,64葉(85.3%)から表生細菌が分離され,このなかで10葉(13.3%)から氷核活性菌が分離された。表生細菌に占める氷核活性細菌の割合は,採集地点,植物の種類によって7.6∼12.6%であったが,個々の被害葉についてみると0∼100%と大きな変異がみられた。
  • 正子 朔, 吉川 正明, 松本 高郎, 勝本 正夫, 緒方 仁美, 岸辺 ゆかり
    1989 年 55 巻 3 号 p. 336-343
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Phytophthora属菌(疫病菌)16種34分離株の可溶性蛋白は,2次元電気泳動法により100から200個の濃淡の異なる蛋白スポットとして分離することができた。この蛋白の泳動パターンは,種の異なる疫病菌株の間では明確に異なっていたが,それぞれの種においては特徴的なパターンを示した。同じ種に属する疫病菌株の間では,その分離場所,分離植物,または病原性レースなどの違いにかかわらず,淡く染色される小さな蛋白スポットの泳動パターンには若干の差異が認められる場合もあったが,濃く染色される主要な蛋白スポットの泳動パターンはまったく同一であるかまたはきわめて類似していた。このように,疫病菌の可溶性蛋白の2次元電気泳動パターンは種に特異的であり,疫病菌の種の分別および同定に有効な補助的手段になりうると考えられる。
  • 萩田 孝志
    1989 年 55 巻 3 号 p. 344-348
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Cucumber mosaic virus (CMV) and lily symptomless virus (LSV) were readily detected from bulb scales of infected Maximowicz's lily (Lilium leichtlinii var. maximowiczii Baker) plants by enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA). However, tulip breaking virus (TBV) was not efficiently detected from them by ELISA. The concentration of CMV and LSV appeared to be higher in the outer and inner bulb scales than in the middle ones. To detect both viruses reliably in Maximowicz's lily bulbs, it was necessary to homogenize two or more outer and/or inner bulb scales and to test the extracts by ELISA.
  • 渡辺 恒雄
    1989 年 55 巻 3 号 p. 349-352
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    南西諸島の土壌に生息するPythium菌を,キュウリ種子などによる捕捉法と直接接種法を用いて分離し,種と分布を調査した。供試した21ヵ所の土壌から計207菌株,1試料当たり1∼6種のPythium菌を分離し,H-Zs(糸状胞子嚢から遊走子を形成するが,生殖器官は未形成の一群)を含む14種に分類・同定した。最も多く分離されたのは,P. aphanidermatum,次いでP. sylvaticum, P. vexans, P. delienseなどであった。
  • 佐藤 善司, 小磯 邦子, 岩崎 成夫, 松田 泉, 白田 昭
    1989 年 55 巻 3 号 p. 353-356
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Two compounds which were identified as fervenulin and toxoflavin were isolated as toxins produced by Pseudomonas glumae, the causal agent of bacterial grain rot of rice. These toxins produced a chlorotic spot on leaves of rice seedlings at a concentration of about 10μg/ml or more. It was also observed that the growth of leaves and roots of rice seedlings was reduced when they were treated with these toxins.
  • 白石 友紀, 宮崎 貴央, 山田 哲二, 奥 八郎, 大内 成志
    1989 年 55 巻 3 号 p. 357-360
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    健全オオムギ葉磨砕液から遠心分離によって調製した上澄液をオオムギ葉に添加したところ,オオムギうどんこ病菌非親和性レースの感染が顕著に増高した。本活性の程度は,抽出に用いた二品種間あるいは異なる葉位においてもほとんど差が認められなかった。活性因子は酢酸エチルに転溶されなかった。水層部で処理したオオムギ葉にErysiphe graminisの分生胞子を接種したところ,オオムギうどんこ病菌の親和性および非親和性レースのみならずコムギうどんこ病菌の感染が顕著に増加した。しかし,エンドウうどんこ病菌は感染せず,また,処理コムギ葉にオオムギうどんこ病菌が感染することもなかった。以上の結果から,健全オオムギ葉中の感染促進因子はオオムギとE. graminisという種-種レベルで特異的に作用していることが強く示唆された。
  • 田辺 憲太郎, 柘植 尚志, 西村 正暘
    1989 年 55 巻 3 号 p. 361-365
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    鳥取県会見町,鳥取市および愛知県安城市の二十世紀ナシ園から採集したナシ黒斑病菌13菌株について,リボソームrRNA遺伝子(rDNA)の制限酵素断片長多型(RFLP)を調査した。プローブには本菌No.15A菌株の2種類のrDNA XbaI断片を用いた。その結果,異なるナシ園由来の菌株間,さらには同一ナシ園由来の菌株間で多型が検出され,RFLP分析により本菌個体群中の変異を同定することが可能となった。
  • 國武 幸子, 松山 宣明
    1989 年 55 巻 3 号 p. 366-368
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Pseudomonas avenaeはPS培地中でタンパク性の抗糸状菌物質を産生する。Ps. avenae, H8201株を30Cで7日間振盪培養後,遠沈上清に活性炭を加え活性物質を吸着させた。メタノール-水(1:1)およびアセトン-水(1:1)により溶出した活性分画を濃縮後,Sephadex G-50によりゲル濾過し,DEAEセルロースカラムクロマトグラフィーにより粗純化した。この試料をさらにポリアクリルアミドゲル電気泳動または調整用液体等電点電気泳動法により純化し,透析後,凍結乾燥保存した。Protease K処理後の試料には活性はまったく認められず,電気泳動像からのバンドの消失が観察された。本物質の等電点はpH 3.5∼4.0であり,分子量は約10万ダルトンと推定される。
  • 高橋 義行, 亀谷 満朗, 匠原 監一郎, 鳥山 重光
    1989 年 55 巻 3 号 p. 369-372
    発行日: 1989/07/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    スイカ系キュウリ緑斑モザイクウイルス(Wa)を検出するために,特異性が高く,高力価で均質な抗体を大量に得ることを目的としてモノクローナル抗体を作製し,診断への利用について検討した。Waで免疫したマウスから常法によりハイブリドーマを作製し,14株の抗体産生細胞を得た。これらの抗体は,すべてWaに対してのみ反応し,他の系統(キュウリ系,余戸系)やタバコモザイクウイルスの各系統とは反応しなかった。高力価の抗体を産生する株から得た腹水を用いてELISA法によるWaの検出を行った結果,IgMをcoating Ig, IgG1をconjugateとして用いた場合,高感度に検出でき,Waの実用診断に使用することが可能であった。
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