日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
ニホンナシ黒星病の第一次伝染源の種類と初発生における重要性
梅本 清作
著者情報
ジャーナル フリー

1990 年 56 巻 5 号 p. 658-664

詳細
抄録
ナシ黒星病の第一次伝染源の種類と初発病における重要性について検討した。りん片および花そう基部病斑上に形成された分生子は通常4月中旬からの採取降雨中に確認され,その後,分散数は徐々に増加した。また,分散した分生子の発芽率は非常に高かった。しかし,花そう基部病斑上分生子の感染時期が長十郎の開花初期(1988年4月21日)であれば発病は明らかに少なく,開花終了期(1988年4月27日)以降の長期間に及ぶときは多発した。一方,子のう胞子の分散開始は幸水の開花を基準にすると,早い年は3月26日(1988年)で22日前,遅い年は4月10日(1986年)で10日前であった。2種の第一次伝染源を単独または組み合わせて設置した場合の発病の推移は,罹病落葉を伝染源に含む実験区では初発時期が早く,しかもその後多発したが,りん片および花そう基部病斑を伝染源とした実験区の初発時期は遅く,しかもその後も少発傾向を示す年が多かった。以上の結果から,黒星病の初発病に大きく関与している第一次伝染源は,落葉上の子のう胞子であると判定された。
著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top