抄録
いもち病菌感染によりイネ葉中にはジテルペン系ファイトアレキシン(PA)が生成されるが,その経時的変化は非親和性および親和性組合せで明らかに異なっている。ガスクロマトグラフィーによる検出では,接種後36∼48時間目に非親和性組合せでのみPA生成が観察された。また,ときには12時間目に検出される場合が認められた。しかしこのレース特異性は胞子の加熱殺菌処理により消失し,親和性,非親和性にかかわらず48時間目にPA生成がみられた。一方,菌体プロトプラストで処理した場合にはまったく生成が認められなかった。また,いもち病菌菌体壁分画にはPA生成のエリシター活性が認められるが,なかでも菌体を磨砕後リン酸緩衝液中でオートクレーブ処理した難溶性分画にきわめて高い活性がみられた。これらの結果はエリシターが菌体壁に存在することを明らかに示している。