日本植物病理学会報
Online ISSN : 1882-0484
Print ISSN : 0031-9473
ISSN-L : 0031-9473
アブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子の蛍光色素染色性と発芽との相関関係
高橋 賢司
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 57 巻 2 号 p. 160-164

詳細
抄録
2種類の蛍光色素で染め分けたアブラナ科野菜根こぶ病菌休眠胞子の染色性がその病原活性と相関することはすでに報告している。今回,この染色性と発芽との相関関係について検討した。休眠胞子懸濁液にカブの根を浸漬し(根浸漬区)または浸漬しない(根非浸漬区)で10日間,25°Cで培養した。休眠胞子懸濁液を経時的に,カルコフルオール・ホワイトM2Rと臭化エチジウムの蛍光色素混合液で染色後に蛍光顕微鏡で観察し胞子の染色性,またオルセインで染色後に微分干渉顕微鏡で観察し胞子の発芽について調べた。内部が赤く染色された胞子(赤染胞子)の割合は根非浸漬区ではほとんど増加しなかったが,根浸漬区では培養日数の経過とともに5日後まで顕著に増加した後ほぼ一定となった。一方,空殻胞子の割合は根非浸漬区ではわずかな増加にとどまったが,根浸漬区では培養7日後まで顕著に増加した後ほぼ一定となった。赤染胞子率と空殻胞子率との間には,根浸漬区において高い正の相関が得られた。この結果,休眠胞子を2種類の蛍光色素で染め分け染色性を調べる方法で,休眠胞子の発芽すなわち活性を評価できることが明らかとなった。この方法は,土壌中における休眠胞子の発芽検定法としての利用が期待される。
著者関連情報
© 日本植物病理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top