日本植物病理学会報
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ペフラゾエートのイネばか苗病防除機構
和田 拓雄平松 基弘竹中 允章
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1991 年 57 巻 4 号 p. 477-484

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抄録

ペフラゾエートはイネの主要種子伝染性病害であるイネばか苗病,ごま葉枯病およびいもち病に高い種子消毒効果を示した。イネばか苗病に対する防除機構を,薬剤の種籾付着保持量および玄米部位への移行量との関係で調べた。20倍10分間浸漬処理した種籾での付着保持量は,浸種後で約140ppm,玄米部位では浸種中に徐々に増加し浸種終了時に約30ppmに達した。200倍24時間浸種処理では,種籾で約70ppm,玄米部位で23ppmであった。ペフラゾエートのイネばか苗病菌に対するMIC値は0.78∼12.5ppmの範囲にあるので,両処理法とも玄米部位でこれを大きく上回る濃度であった。一方,同様に処理した種籾およびその籾穀を除去した玄米を薬剤無添加培地にのせ,該菌を分離したところ,種籾からはまったく分離されなかったが,玄米からは約10%分離された。また,種籾に替えてイネばか苗病菌含菌ペーパーディスクを同様に処理した場合にも,100ppm処理区からも若干該菌が再生した。このことからペフラゾエートの作用は静菌的であると推定された。しかし,薬剤処理した菌叢のその後の生育は,水洗の有無にほとんど関係なく著しく抑制された。また,薬剤処理時間が長くなるほど再生程度は低下した。実際の育苗箱での安定した効果は,籾殻および種籾に大量に付着保持されている薬剤が,玄米部位で静菌的に生存している菌に対してbarrierとしての役割を果たし生育を阻止していることによると考えられる。

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