日本植物病理学会報
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57 巻, 4 号
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  • 和田 拓雄, 平松 基弘, 竹中 允章
    1991 年 57 巻 4 号 p. 477-484
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ペフラゾエートはイネの主要種子伝染性病害であるイネばか苗病,ごま葉枯病およびいもち病に高い種子消毒効果を示した。イネばか苗病に対する防除機構を,薬剤の種籾付着保持量および玄米部位への移行量との関係で調べた。20倍10分間浸漬処理した種籾での付着保持量は,浸種後で約140ppm,玄米部位では浸種中に徐々に増加し浸種終了時に約30ppmに達した。200倍24時間浸種処理では,種籾で約70ppm,玄米部位で23ppmであった。ペフラゾエートのイネばか苗病菌に対するMIC値は0.78∼12.5ppmの範囲にあるので,両処理法とも玄米部位でこれを大きく上回る濃度であった。一方,同様に処理した種籾およびその籾穀を除去した玄米を薬剤無添加培地にのせ,該菌を分離したところ,種籾からはまったく分離されなかったが,玄米からは約10%分離された。また,種籾に替えてイネばか苗病菌含菌ペーパーディスクを同様に処理した場合にも,100ppm処理区からも若干該菌が再生した。このことからペフラゾエートの作用は静菌的であると推定された。しかし,薬剤処理した菌叢のその後の生育は,水洗の有無にほとんど関係なく著しく抑制された。また,薬剤処理時間が長くなるほど再生程度は低下した。実際の育苗箱での安定した効果は,籾殻および種籾に大量に付着保持されている薬剤が,玄米部位で静菌的に生存している菌に対してbarrierとしての役割を果たし生育を阻止していることによると考えられる。
  • 角野 晶大, 近藤 則夫, 児玉 不二雄
    1991 年 57 巻 4 号 p. 485-491
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    コムギ眼紋病菌Pseudocercosporella herpotrichoidesの土壌からの選択分離培地を開発した。その組成は,PDAにストレプトマイシン硫酸塩300ppmと硫酸銅800∼1,000ppmを加えたものである。この培地では,ほぼ本菌のみが生育し,特異的な赤褐色の厚い菌叢を形成するが,土壌中の他の細菌や糸状菌の生育を阻害する。したがって,眼紋病菌の検出・判別は非常に容易であると考えられる。胞子を混和した土壌から本菌の検出を試みたところ,ストレプトマイシン硫酸塩加用PDAではまったく検出が不可能であったが,硫酸銅濃度が800∼1,000ppmの本培地では約16∼60%の回収率で検出が可能であった。さらに,本培地を用いて眼紋病発生ほ場の土壌ゆら本菌の検出を試みたところ,乾土1gあたり3,200∼38,000の菌量が検出できた。
  • 山岡 直人, 坂本 裕子, 伊藤 敬, 小林 一成, 久能 均
    1991 年 57 巻 4 号 p. 492-498
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エレクトロポレーションにより,自然界では非宿主植物であるコマツナの遊離細胞にタバコモザイクウイルス普通系統(TMV-OM) RNAが導入できるかどうかを検討した。TMV-OM RNAと遊離細胞の混合液をエレクトロポレーション処理すると感染率は約30%にとどまった。しかしながら,上記混合液を氷中で60分前処理した後にエレクトロポレーション処理を行うと,感染率は約70%にまで上昇した。一方,TMVをコマツナ葉に接種し,接種葉の断面をTMVの蛍光抗体で染色すると,葉肉細胞内にTMVの増殖を示す蛍光が認められたが,接種葉以外の組織ではTMVの増殖は認められなかった。なお,いずれの葉にも病徴はまったく現れなかった。コマツナを宿主として激しい病徴を生じるカリフラワーモザイクウイルスに比べて,コマツナ葉内のTMVの感染率はかなり低かった。以上から,コマツナ葉でTMVによる病徴発現が認められない理由は,ウイルス細胞間移行率の低下と,その結果としてのウイルス増殖量の抑制によるものか,あるいは,病徴発現がウイルス増殖とはまったく別の機構によって制御されていることによると考えられた。
  • Abdul Mannan AKANDA, 津野 和宣, 脇本 哲
    1991 年 57 巻 4 号 p. 499-505
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    バングラデシュ国内各地からウイルス性と思われる病徴を呈した9種のウリ科植物から罹病葉21試料を採集し,真空凍結乾燥あるいは塩化カルシウムを用いた乾葉法により乾燥し,4°Cで保存した。約2年間保存後,大部分の試料ではウイルスの感染性を認めることができなかったので,ウリ科植物に寄生性をもつ7種のウイルスに対する8種の抗血清を供試し,これらの試料中のウイルスをdouble antibody sandwich enzyme-linked immunosorbent assay (DAS-ELISA)およびdot-immunobinding assay (DIBA)によって検出した。その結果,zucchini yellow mosaic virusとcucumber green mottle mosaic virusは検出されなかったが,cucumber mosaic virus, papaya ringspot virus, watermelon mosaic virus 2およびsquash mosaic virusが,それぞれ2, 9, 1および3点の試料から検出され,papaya ringspot virusがバングラデシュ国のウリ科植物にとくに広く分布するものと考えられた。ユウガオ,ツルレイシ,キュウリおよびカボチャの試料のなかには,用いたいずれの抗血清とも反応しないものが認められた。
  • 手塚 信夫, 牧野 孝宏
    1991 年 57 巻 4 号 p. 506-511
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    健全なイチゴのクラウンおよび健全なトマトから分離した非病原性F. oxysporumをイチゴ苗に前接種したところ,イチゴ萎黄病の発病が抑制された。本菌(C-8菌)はイチゴ,トマト,メロンなど10科18種の作物に対して病原性が認められず,他の作物に対して被害を生ずるおそれはないものと考えられた。非病原性F. oxysporumを熱処理して殺菌すると,発病抑制効果は失われた。非病原性F. oxysporumは,PDA培地においてイチゴ萎黄病菌と対峙培養しても拮抗しなかった。非病原性F. oxysporumの接種2ヵ月後にも,イチゴのクラウン部からF. oxysporumが高頻度で分離されたことから,本菌はイチゴ植物体内に感染した後,増殖して長期間生存できるものと考えられた。土壌消毒剤MITCにより,土壌中の病原菌濃度を低くした後に非病原性F. oxysporumの接種を行った場合に,イチゴ萎黄病の発病は著しく抑制された。
  • 宇杉 富雄, 中野 正明, 新海 昭, 林 隆治
    1991 年 57 巻 4 号 p. 512-521
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    汁液接種によりサツマイモから3種のひも状ウイルスが分離された。M分離株はIpomoea spp., Nicotiana tabacum, Datura stramonium, Chenopodium quinoa, C. amaranticolorに,Mo分離株はIpomoea spp., C. quinoaおよびC. amaranticolorに,C分離株はIpomoea spp.にのみ感染した。M, MoおよびCの希釈限界はそれぞれ,1,000∼10,000倍,1,000∼10,000倍および100∼1,000倍であり,保存限界は1日以内であった。また,不活化温度はそれぞれ50∼60°C, 60∼70°Cおよび70∼80°Cであった。M, Moのウイルス粒子はそれぞれ750∼810nm, 850∼880nmに,Cは710∼760nmと1,430∼1,510nmに分布した。ウイルス粒子の幅はいずれもおよそ13nmであった。Mは容易にモモアカアブラムシによって伝搬されたが,MoおよびCは伝搬されなかった。SSEM-PAGによりMと台湾で発生するsweet potato latent virus (SPLV)抗血清との間に,Moとsweet potato feathery mottle virus russet crack strain (SPFMV-RC)との間に血清関係が認められた。しかし,3分離株の間には血清関係は認められなかった。以上の結果から,MおよびMoはそれぞれSPLV(サツマイモ潜在ウイルス)およびSPFMV(サツマイモ斑紋モザイクウイルス)の1系統と考えられた。Cはサツマイモでは未記載のウイルスであり,これをサツマイモシンプトムレスウイルス(SPSV)と命名したい。
  • 有本 裕, 本間 保男, 吉野 嶺一, 斎藤 司朗
    1991 年 57 巻 4 号 p. 522-525
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ種籾をDL-alanine dodecylester HCl溶液(500ppm)に浸漬し栽培したイネでは,葉いもち病だけでなく穂いもちの発生がそれぞれ約75%(温室)および50%(圃場)も少なかった。これはいもち病に対する抵抗性が誘導されたものと考えられた。化学的に誘導された抵抗性は世代を越えて継続され,2代目では61%(温室)および52%(圃場),3代目では72%(温室)いもち病の発生が抑制された。種籾浸漬を1年おきに行うと,いもち病の抑制効果は高く保たれた。抵抗性が誘導されたイネにおけるPyricularia oryzaeの胞子発芽および付着器形成,侵入は無処理イネでのそれらと同じであったが,侵入菌糸は最初に到達した表皮細胞内およびそれに隣接した細胞内に封じ込められた。
  • 川口 悦男, Noemi P. OROLAZA, 柘植 尚志, 西村 正暘, 道家 紀志
    1991 年 57 巻 4 号 p. 526-533
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    トマトアルタナリア茎枯病菌が感染した葉組織および本菌の宿主特異的毒素であるAL毒素を処理した葉組織におけるアミノ酸とアミン含量の変動を感受性と抵抗性品種間で比較検討した。AL毒素は,感受性トマト品種のアスパラギン酸カルバミルトランスフェラーゼ(ACTase)を阻害すると報告されているが,この説が正しいとすれば,AL毒素を処理した感受性植物組織ではアスパラギン酸が蓄積するはずである。しかし,本研究において,AL毒素を処理した感受性および抵抗性トマト品種葉のアスパラギン酸および他のアミノ酸含量を定量した結果,少なくとも処理後24時間目までは,毒素処理葉と無処理葉の間に差は認められなかった。また,茎の基部に本菌胞子を接種して発病させた感受性品種個体において,同一複葉内の病徴を呈した小葉と無病徴小葉とを比較した場合,むしろ前者でアスパラギン酸の含量は低く,他のアミノ酸については両者間で差は認められなかった。これらの結果は,AL毒素の作用がACTase阻害以外にあることを示唆する。一方,感受性品種ではエタノールアミンとフォスフォエタノールアミンが毒素処理後12から24時間の間に著しく蓄積したが,抵抗性品種ではそれらの蓄積が認められなかった。これらアミンの増加は,胞子接種した感受性品種個体の発病小葉においても認められた。これらの結果は,AL毒素が感受性トマト品種細胞においてアミン関連代謝系の異常を誘起することを示唆する。
  • 君島 悦夫, 小林 慶範, 西尾 健
    1991 年 57 巻 4 号 p. 534-539
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    東京都および千葉県において,それぞれ1984年および1989年にカーネーションの苗に根腐れを伴う病害が発生した。被害株の茎葉は褐変・腐敗し,根も腐敗症状を呈していた。形態的特徴から東京都下からの分離菌をPythium irregulare Buisman,千葉県下からの分離菌をPythium aphanidermatum (Edson) Fitzp.と同定した。両菌ともカーネーションに病原性を示した。病名として根腐病を提唱した。
  • 吉田 政博, 小林 研三
    1991 年 57 巻 4 号 p. 540-548
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    メロンがんしゅ病病原放線菌の形態と培養および各種生理生化学的性状を調べ,その分類学的検討を行った。本菌は真正の菌糸を作り,基生菌糸は断裂せず,菌核,分生子殻,胞子のうは形成しないが,疑似胞子のうを形成した。胞子は気菌糸中に胞子鎖として形成され,その色調は灰色系で,胞子表面は平滑,胞子鎖の形態はRetinaculum-apertumに分類された。また,全菌体中にLL型のジアミノピメリン酸を含み,細胞壁型I型に属した。以上の結果より,本菌はStreptomyces属に属することが明らかとなった。がんしゅ病菌は15∼40°C, pH 4.5∼10.0で生育し,とくに生育温度27∼35°C, pH 6.5∼7.7が良好であった。炭素源の資化性は,D-グルコースほか13種の炭素化合物を利用したが,D-マンニトール,D-ソルビトール,サリシン,セルロースは利用しなかった。また,メラニン様色素および硫化水素の産生,キサンチンの溶解は認められないが,ゼラチンの液化,ミルクの分解,スターチの加水分解,硝酸塩の還元,リンゴ酸石灰の溶解は陽性で,食塩耐性濃度は4%であった。さらに,10項目の生理性状とメロンへの病原性について近縁菌種と比較したが,がんしゅ病菌と同一の性質を示すものは認められなかった。よって,メロンがんしゅ病菌をStreptomyces sp.とする。
  • 中嶌 裕之, 佐古 宣道, 城 圭一郎, 堀 勝治, 野中 福次
    1991 年 57 巻 4 号 p. 549-557
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カブモザイクウイルス(TuMV)のアブラムシ伝搬性分離株1のウイルスRNAの3'末端側から1,392塩基と非伝搬性分離株31の3'末端側から1,103塩基の塩基配列を決定した。これらの塩基配列には外被タンパク質をコードする領域とその下流に209塩基の非翻訳領域とが存在した。両分離株の外被タンパク質をコードする領域は864塩基で,分子量がそれぞれ33,061ダルトンと33,132ダルトンの288個のアミノ酸がコードされていた。両分離株の外被タンパク質N末端の切断部位のアミノ酸はグルタミン-アラニンであった。2分離株間では20個の塩基に変異が認められ,これによりN末端付近の6個のアミノ酸に違いがあると思われた。分離株1と他の11種類のポティウイルスRNA外被タンパク質遺伝子の相同性はアミノ酸レベルで47.6∼58.3%であり,また,3'側の非翻訳領域の塩基配列の相同性は28.3∼37.8%であった。
  • 松尾 和敏, 亀谷 満朗, 太田 孝彦
    1991 年 57 巻 4 号 p. 558-567
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    長崎県で分離したメロンえそ斑点ウイルス(MNSV), MNSV-NK, MNSV-NH,と静岡県での分離株,MNSV-S,の生物学的,血清学的ならびに理化学的性状を比較した。寄主範囲は3分離株ともウリ科植物に限られ同じであったが,メロンの子葉に生じる局部病斑の発現までに要する期間やその病徴が異なり,全身感染率もMNSV-NKが9.1%, MNSV-NHが90.1%, MNSV-Sが3.6%で,MNSV-NHがもっとも高かった。寒天ゲル内二重拡散法による血清試験でMNSV-NKとMNSV-NHの間には融合する沈降帯を生じこれらの分離株は血清学的に同一と見なされたが,MNSV-SとMNSV-NKおよびMNSV-NHの間には沈降帯を生じるもののスパーを形成し,MNSV-SはMNSV-NKやMNSV-NHと血清学的に異なっていた。外被タンパク質の分子量はSDS-PAGEによって3分離株とも約41kと推定された。核酸はアガロースゲル電気泳動においてMNSV-Sが3種類の1本鎖RNA (RNA1, 2, 3)から,MNSV-NKおよびMNSV-NHは2種類の1本鎖RNA (RNA1, 2)から構成されることが明らかになり,RNAの分節数に違いが認められた。しかし,各RNAの中で3分離株ともRNA1が病原性を有し,その分子量も1.51×106と推定されほぼ同じであった。その他のRNAの由来は明らかでない。以上のことから,MNSV-NKとMNSV-NHはMNSV-Sとは病原性や血清型が異なる新しい系統であると考えられ,おのおのMNSVのNK系(MNSV-NK), NH系(MNSV-NH), S系(MNSV-S)と呼ぶことを提唱する。さらに,MNSV-NKおよびMNSV-NHの血清型をN型,MNSV-Sの血清型をS型と称したい。
  • 黒点病斑中に生成される傷ホルモン様物質について
    有本 裕, 大澤 富彦, 本間 保男
    1991 年 57 巻 4 号 p. 568-572
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    カンキツは黒点病菌の侵入に対し,自己防衛反応により褐変細胞とコルク層からなる黒点病斑を形成する。褐変細胞に隣接した細胞の異常分裂で形成されるコルク層の形成過程を調べたところ,異常分裂を誘導する傷ホルモン様因子がカンキツの側で生成されたことを見いだし,黒点病斑から細胞分裂誘導因子,CD-4を単離した。本物質は物理的諸性質ならびにカンキツに対する細胞分裂誘導活性が標品と一致することからγ-アミノ酪酸(GABA)と同定した。
  • 佐藤 章夫, 加藤 雅康, Ahmed A. MOSA, 小林 喜六, 生越 明
    1991 年 57 巻 4 号 p. 573-576
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    疫病菌分離のためのジャガイモ罹病葉標本の収集に,新聞紙を折りたたんだサンプルバッグの利用を検討した。罹病葉をサンプルバッグに入れ,-5°Cから30°Cに14日間保存し,経時的に病斑小片をジャガイモ塊茎スライスに接種して疫病菌の生存を検定した。罹病葉は徐々に水分を失い,バクテリアによる腐敗を免がれた。病斑中の疫病菌の生存期間は,保存温度が低いほど長く,30°Cで1∼2日,20°Cで5∼8日,3°Cで14日以上であった。これは郵送で罹病葉を収集するのに十分な日数である。また,実際にこのサンプルバッグを用いて日本全国のジャガイモ産地から郵送された罹病葉標本からも高率に疫病菌が分離され,その有用性が実証された。
  • 厳 在烈, 孫 亨洛
    1991 年 57 巻 4 号 p. 577-581
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    リンゴ樹の組織に含有されているフロリジンは腐らん病菌の体外酵素によって分解され,組織壊死毒素を生ずる。病原菌の菌糸はその毒素に中毒した組織を通って寄主体内を進行するものと考え,酵素作用を阻害する薬剤の探索を試みた。多種の酵素の作用を非特異的に阻害する重金属およびヒ素化合物を人工接種病斑に散布した結果,AsHNa2O4に病斑伸展抑制効果が認められた。そこで,ヒ素系農薬のNeozin液剤の原液(6% a.i.)を109個の自然病斑に対し,削り取りを行わずに,1週間間隔で2回散布した。その結果,病斑によって時間的な差はあったが,最初の処理から約2週間後に病斑の伸展は止まり,病斑の外側に亀裂が生じた。さらに時間が経つとカルスが形成され,病斑はほぼ完全に治癒した。病斑の治癒率は82.5%以上であった。
  • 小坂 能尚, 花田 薫, 福西 務, 亀谷 満朗
    1991 年 57 巻 4 号 p. 582-586
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    京都府のダイズおよびトマトから分離されたアルファルファモザイクウイルス(AMV)の2株(おのおのAM1, AM3)の諸性質を調べた。汁液接種によって5科16種の植物の反応を2株間で比較したところ,トマト,アズキ,ササゲなどで病徴が異なった。とくにトマトでは,AM1は供した5品種に対し局部病斑を生じ,まれに品種によっては頂部えそを生じたが,モザイクを生じることはなかったのに対し,AM3は全品種に全身感染し,4品種にモザイクを,うち2品種にはときどき頂部えそを生じ,1品種に枯死に至る頂部えそを生じた。AMV-C(本田ら,1986)とAMV-T(王ら,1985)およびそれぞれの抗血清を用いた検定では,これらの2株とAM1およびAM3は血清学的に区別できなかった。AM1およびAM3は4種のRNA成分を含んでいたが,4%ポリアクリルアミドゲルでの泳動では,対応するRNA 3とRNA 4の泳動度には明らかな差が認められた。AM1とAM3の間で粒子成分およびRNA成分を交換して検討した結果,トマトの病徴型の決定にはtop bとmiddle両成分が関与していると考えられた。
  • 松本 純一, 大木 理, 井上 忠男
    1991 年 57 巻 4 号 p. 587-590
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ラッカセイ斑葉ウイルス(peanut stripe virus: PStV)分離株PN87Nを純化して得た抗血清を用い,間接ELISA法によって種子保毒と野外発生を調査した。1988年産の種子保毒率は茨城県と鹿児島県の種子では1∼4%であったが,千葉県産では10∼23%と比較的高率であった。発生状況について1989∼90年に茨城,滋賀,千葉の各地で調査したところ,感染個体率の多くは21∼29%であったが,千葉県内の1地域では62%に達していた。また,野外調査でPStVとラッカセイ斑紋ウイルス(PMoV)との重複感染が認められ,PStVとPMoVの間に干渉が起こらないことは実験的にも確かめられた。さらに,種子のウイルス保毒の有無は,磨砕試料をスポット後シートをクロロフォルムまたは四塩化炭素で軽く洗浄すれば,DIBA法により比較的簡便に検定できることがわかった。
  • 松山 宣明
    1991 年 57 巻 4 号 p. 591-594
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ葉葉上から分離された抗糸状菌物質産生性微生物AB-88M株はStreptomyces属菌と同定された。本菌はPyricularia oryzae, Pyricularia sp., Botrytis cinerea, Pestalotia funerea, Helminthosporium maydis, Helminthosporium oryzae, Fusarium roseum f. sp. cerealisに特に強い抗菌活性を示したがFusarium solani f. sp. phaseoli, Fusarium oxysporum f. sp. melonis, Sclerotium rolfsiiにはほとんど活性を示さなかった。本放線菌をベネット液体培地で30°C, 10日間振とう培養後,遠沈上清から活性物質を等量のクロロフォルムまたは酢酸エチルにより振出した。さらに2種の展開溶媒(chloroform-methanol 9:1, benzene-acetonemethanol 28:7:4 v/v)によるシリカゲル薄層クロマトグラフィー,逆相系液体クロマトグラフィー(RP-18, 90% methanol),分取型逆相系高速液体クロマトグラフィー(C-18, 80% methanol)およびn-hexaneによる再結晶により精製し得られた暗赤色不定形結晶をAc-1と呼称した。各種質量分析の結果から,Ac-1の分子量は,MW 536,分子式はC34H16O7と決定された。
  • Pissawan CHIEMSOMBAT, 村山 晶子, 池上 正人
    1991 年 57 巻 4 号 p. 595-597
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Tomato yellow leaf curl virus (TYLCV)(タイ分離株)の純化標品を用いて抗血清を作製した。作製されたTYLCV抗血清は寒天ゲル二重拡散法で,TYLCV純化標品に対して1本の沈降線を形成し,力価は1/128であった。このようなTYLCV抗血清を用いてTYLCVとタバコ巻葉ウイルス(TLCV)(日本分離株)との血清学的な関係を調べたところ,TYLCVはTLCVと同じ抗原決定基をもっていた。TYLCVはタイで分離されたジェミニウイルスであるmungbean yellow mosaic virus (MYMV)と寒天ゲル二重拡散法で分枝線を形成することから,両ウイルスは血清学的に判別できることが証明された。
  • 大塚 範夫, 中沢 靖彦
    1991 年 57 巻 4 号 p. 598-602
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    スライドグラス上にキュウリうどんこ病菌を置床してマシン油乳剤を散布したところ,分生胞子周辺に油膜が形成され,油膜の収縮とともに分生胞子が収縮した。蒸留水を加えても変形した分生胞子は元の形態に回復せず,発芽は認められなかった。同様の現象はキュウリ子葉の上でも観察された。接種直後に本剤を散布し走査電顕で観察すると,油膜に覆われて収縮している分生胞子が観察された。接種2日後に散布した場合は菌糸が変形し,接種5日後では分生子柄上の分生胞子が収縮している状態が観察された。これらのことから,本剤のキュウリうどんこ病菌に対する作用は油膜による形態の収縮・変形によるところが大きいものと考えられた。
  • 受容性および拒否性誘導に影響を及ぼす未知の要因
    久能 均, 加藤 信也, 山岡 直人, 小林 一成
    1991 年 57 巻 4 号 p. 603-608
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    病原菌(Erysiphe graminis)と非病原菌(E. pisi)の胞子がともにオオムギ子葉鞘一細胞に侵入を試みたときに細胞に誘導される受容性と拒否性は,いずれの菌がどれだけ早く侵入するかによって決定されると考えられていた。したがって,もし細胞状態が両菌侵入の順序と時間差のみで決定されるならば,一細胞上に一方の菌を筆接種してもあるいは移植接種しても誘導される細胞状態は影響されないはずである。しかし,本研究で一細胞上にE. graminisを筆接種し,E. pisiをマニピュレーターで移植接種した場合(G-Pの系)と,逆に後者を筆接種し,前者を移植接種した場合(P-Gの系)とを比べてみたところ,接種法が細胞状態に影響を及ぼす場合があることが確認された。すなわち,E. pisiE. graminisよりも0.25∼1.0時間早く侵入した場合には,P-Gの系でG-Pの系よりもはるかに強い拒否性が誘導された。この結果は,一細胞への両菌侵入の順序と時間差以外に細胞状態に影響を及ぼす要因があることを示しているが,その要因の実体は現時点では明らかではない。
  • Chaiwat TO-ANUN, 豊田 秀吉, 西口 勉, 張 順慧, 深溝 慶, 大内 成志
    1991 年 57 巻 4 号 p. 609-612
    発行日: 1991/10/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporum f. sp. lycopersici (race 1)の菌糸からプロトプラストを調製し,その再生条件を検討した。本菌の細胞壁にはキチンおよびキトサンが含まれるので,高収量のプロトプラストを分離するため,ノボザイム234を使用し,さらにキチンデアセチラーゼの作用を抑制する目的で培地に酢酸塩を添加して,プロトプラストの収量に及ぼす影響を調べた。その結果,酢酸塩添加培地で培養した菌体からは,1.9×109個/g生重のプロトプラストが得られ,無添加培地の30倍以上の収量であった。次に,プロトプラストをマンニトール,ソルビトールおよび,サッカロースを加えた培地で培養し,プロトプラストからの菌糸再生条件を検討した。その結果,25%サッカロースを含む培地で最も高い再生効率が得られることが明らかとなった。
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