日本植物病理学会報
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エレクトロポレーションによるコマツナ遊離細胞へのタバコモザイクウイルス普通系統(TMV-OM)RNAの導入とコマツナ植物内におけるTMVの増殖
山岡 直人坂本 裕子伊藤 敬小林 一成久能 均
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1991 年 57 巻 4 号 p. 492-498

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抄録
エレクトロポレーションにより,自然界では非宿主植物であるコマツナの遊離細胞にタバコモザイクウイルス普通系統(TMV-OM) RNAが導入できるかどうかを検討した。TMV-OM RNAと遊離細胞の混合液をエレクトロポレーション処理すると感染率は約30%にとどまった。しかしながら,上記混合液を氷中で60分前処理した後にエレクトロポレーション処理を行うと,感染率は約70%にまで上昇した。一方,TMVをコマツナ葉に接種し,接種葉の断面をTMVの蛍光抗体で染色すると,葉肉細胞内にTMVの増殖を示す蛍光が認められたが,接種葉以外の組織ではTMVの増殖は認められなかった。なお,いずれの葉にも病徴はまったく現れなかった。コマツナを宿主として激しい病徴を生じるカリフラワーモザイクウイルスに比べて,コマツナ葉内のTMVの感染率はかなり低かった。以上から,コマツナ葉でTMVによる病徴発現が認められない理由は,ウイルス細胞間移行率の低下と,その結果としてのウイルス増殖量の抑制によるものか,あるいは,病徴発現がウイルス増殖とはまったく別の機構によって制御されていることによると考えられた。
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