抄録
長崎県で分離したメロンえそ斑点ウイルス(MNSV), MNSV-NK, MNSV-NH,と静岡県での分離株,MNSV-S,の生物学的,血清学的ならびに理化学的性状を比較した。寄主範囲は3分離株ともウリ科植物に限られ同じであったが,メロンの子葉に生じる局部病斑の発現までに要する期間やその病徴が異なり,全身感染率もMNSV-NKが9.1%, MNSV-NHが90.1%, MNSV-Sが3.6%で,MNSV-NHがもっとも高かった。寒天ゲル内二重拡散法による血清試験でMNSV-NKとMNSV-NHの間には融合する沈降帯を生じこれらの分離株は血清学的に同一と見なされたが,MNSV-SとMNSV-NKおよびMNSV-NHの間には沈降帯を生じるもののスパーを形成し,MNSV-SはMNSV-NKやMNSV-NHと血清学的に異なっていた。外被タンパク質の分子量はSDS-PAGEによって3分離株とも約41kと推定された。核酸はアガロースゲル電気泳動においてMNSV-Sが3種類の1本鎖RNA (RNA1, 2, 3)から,MNSV-NKおよびMNSV-NHは2種類の1本鎖RNA (RNA1, 2)から構成されることが明らかになり,RNAの分節数に違いが認められた。しかし,各RNAの中で3分離株ともRNA1が病原性を有し,その分子量も1.51×106と推定されほぼ同じであった。その他のRNAの由来は明らかでない。以上のことから,MNSV-NKとMNSV-NHはMNSV-Sとは病原性や血清型が異なる新しい系統であると考えられ,おのおのMNSVのNK系(MNSV-NK), NH系(MNSV-NH), S系(MNSV-S)と呼ぶことを提唱する。さらに,MNSV-NKおよびMNSV-NHの血清型をN型,MNSV-Sの血清型をS型と称したい。