1993 年 59 巻 4 号 p. 375-386
トマトの萎ちょう病菌を防除するため,抗菌性根面棲息性細菌とキチン分解性放線菌を併用した生物防除法を確立した。まず,トマト根磨砕液から分離した根面細菌(Serratia marcescens)をlux遺伝子およびテトラサイクリン抵抗性遺伝子で標識し,トマト種子をコーティングした後,土壌に播種してその挙動を追跡した。本菌は新たに形成されたトマト根にも定着したが,その細菌密度は根の伸長とともに低下した。そこで,本菌がキチン分解産物を資化できることに着目し,コーティング種子をキチン分解性放線菌(Streptomyces anulatus)を優先化させたキチン添加土壌に播種した。その結果,伸長した根においても高密度の根面細菌が分離され,萎ちょう病に高い防除効果を示したので,キチン分解性放線菌によって得られた分解産物が根面細菌の増殖を促進したことにより効果的な防除結果が得られたものと考え,本法をBinary microbe systemと名付けた。