日本植物病理学会報
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イネ白葉枯病菌の菌体外多糖質産生変異株の病原力と宿主イネ体内における増殖・移行
渡部 光朗山口 正樹古澤 巖堀野 修
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1993 年 59 巻 5 号 p. 544-550

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抄録

トランスポゾンTn4431の挿入により,イネ白葉枯病菌(Xanthomonas campestris pv. oryzae, T7174R)の菌体外多糖質(EPS)産生変異株の作出を行った。得られた変異株のEPS産生量は親株の約2~40%であった。変異株をイネ(Oryza sativa cv. IR24)に針接種して病原力の検定を行ったところ,接種後28日目において親株による発病指数は5.4であったのに対してEPS変異株の発病指数は0.4~3.2であった。EPS産生量が最も少ない菌株でも病原力を完全に失うことはなく,接種後28日目には病斑が形成された。イネ体内におけるEPS変異株の増殖と移行について調べたところ, EPS産生量が親株の約5%の菌株でも,接種部位近傍における増殖は親株と差異が認められなかった。しかし,接種部位から3cm以上離れた部位におけるEPS変異株の細菌数は親株と比較して顕著に少なく, EPS産生量の低下がイネ体内における白葉枯病菌の移行に影響を及ぼすことが示唆された。以上の結果から, EPS産生能力の差異はイネ体内における細菌の増殖・移行に影響し,本病の病徴発現に間接的に関与すると考察した。

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