1995 年 61 巻 1 号 p. 44-48
タバコモザイクウイルスを黒ボク土壌に混合した後,土壌からウイルスの再分離・検出を試みたが,ウイルスはほとんど分離できなかった。この土壌を超高分解能走査電子顕微鏡で観察したところ,土壌粒子表面に多数のウイルス粒子が付着していた。黒ボク土壌から粘土を精製すると,吸着されるウイルス粒子数は増加し,逆に,土壌から非晶質粘土鉱物(アロフェン)を除去すると,吸着されるウイルス量は著しく低下した。また,非アロフェン質黒ボク土や灰色低地土ではウイルス吸着量は少なかった。以上から黒ボク土壌中のアロフェンがウイルスの土壌吸着の主因であることがわかった。