日本植物病理学会報
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61 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 寺見 文宏, 本田 要八郎, 福本 文良
    1995 年 61 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    アマゾンユリ(Eucharis grandiflora,ヒガンバナ科)のモザイク病株から検出された長さ約760nmのひも状ウイルスの分離・同定を行った。病株からChenopodium quinoaでの単病斑分離によって得られたウイルス株は,C. amaranticolorに局部病斑を生じ,Nicotiana benthamianaに全身感染してモザイク症状を起こした。同じヒガンバナ科のアマリリスおよびNerine sariniensisを含む12科38種の植物には感染が認められなかった。アマゾンユリの無毒株に本ウイルスを接種したところ,数種ウイルスが重複感染している原株よりも軽いモザイク症状が現れた。本ウイルスはモモアカアブラムシによって容易に伝搬された。アマゾンユリの感染葉の細胞質にはpotyvirus特有の封入体が観察された。C. quinoaの感染葉から得られた純化ウイルスを用いてRNAおよび外被タンパクの分子量を推定した結果,それぞれ約3.32×106および約35,000であった。アマゾンユリで報告のあるアマリリスモザイクウイルスを含む他の14種のpotyvirusとの血清学的類縁関係を微滴法により調べた結果,いずれのウイルスとも近縁ではなかった。以上の結果から,本ウイルスは未記載のpotyvirusであると考えられたので,アマゾンユリモザイクウイルスAmazon lily mosaic virusと命名した。
  • 吉岡 博文, 早川 幸江, 道家 紀志
    1995 年 61 巻 1 号 p. 7-12
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ジャガイモ疫病菌の非親和性レースをエイジングしたジャガイモ塊茎に接種すると,フェニルアラニンアンモニア・リアーゼ(PAL) mRNAの一過的な蓄積が誘導されたが,親和性レースを接種した場合では僅かに誘導されるのみであった。一方,エリシターである疫病菌菌体壁成分で塊茎組織を処理すると30分以内にPAL mRNAの蓄積が誘導されたが,親和性レースに由来するサプレッサーで処理すると著しく蓄積が抑制された。非親和性レースのサプレッサーをエリシターと与えるとエリシター単独で処理した場合より早い段階でPAL mRNAの蓄積誘導が見られた。これらの蓄積動向はPAL活性動向とよく符合するものであった。サプレッサーによる防御反応の抑制効果とジャガイモ疫病におけるレース・品種間の特異性との関係について論じた。
  • 那須 公雄, 吉岡 博文, 一瀬 勇規, 山田 哲治, 奥 八郎, 白石 友紀
    1995 年 61 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    健全エンドウ苗中に存在する内生サプレッサーは,エンドウ褐紋病菌のエリシターで誘導されるピサチン蓄積を抑制し,本サプレッサーで処理されたエンドウには非病原菌が感染できるようになる。本報告では,抵抗反応の一つと考えられるキチナーゼとβ-1, 3-グルカナーゼの活性化に及ぼす内生サプレッサーの影響について調べた。エンドウ,インゲン,ダイズの胚軸組織をエリシターで処理すると,両酵素の活性化が誘導された。しかし,内生サプレッサーの共存下には,供試植物中エンドウでのみ活性増高が抑制された。一方,インゲンおよびダイズでは,内生サプレッサーの単独処理においても,両酵素の活性増高が誘導された。これらの結果は,植物防御応答に対する内生サプレッサーの作用が種特異的であり,作用様式において褐紋病菌サプレッサーと酷似することを示している。
  • 兼松 誠司, 内藤 繁男
    1995 年 61 巻 1 号 p. 18-21
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ダイズ葉腐病菌Rhizoctonia solani AG-2-3が遺伝的類縁性を解析する手法によっても既知のAG-2サブグループから識別できるか否かを検討した。AG-2-3の17株を含む35株のAG-2株についてポリメラーゼ連鎖反応によりリボソームDNA反復単位内のinternal transcribed spacer (ITS)領域を増幅し,得られた断片について4種の制限酵索(EcoRI, HaeIII, MspI, TaqI)による切断片長多型を解析した。その結果,AG-2サブグループ間で明らかな多型性が確認され,AG-2-3は既知のAG-2サブグループ(AG-2-1およびAG-2-2)から遺伝的に独立していることが示唆された。
  • 水野 明文, 対馬 誠也, 門田 育生, 西山 幸司
    1995 年 61 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    P. gladioli pv. gladioli MAFF 302545のEcoRI消化DNAからショットガンクローニングにより,17.6kb, 8.3kb, 7.3kb, 10.5kb, 5.0kb, 8.7kbのDNA断片を得た。ドットハイブリダイゼーションにより,8.3kbのDNA断片はP. gladioli 61菌株中56菌株と反応し,近縁細菌5種47菌株とは反応しなかった。しかし,その他5つのDNA断片はこれら近縁の供試細菌とは反応しなかったが,P. gladioliに対しても一部の菌株としか反応しなかった。8.3kbのDNA断片と反応した56菌株のゲノミックDNAをEcoRIで消化し,サザンハイブリダイゼーションを行った結果,これらの菌株には8.3kbの位置に共通して1本のバンドが検出された。このことから,これらの菌株が8.3kb DNA断片と塩基配列およびEcoRIサイトが共通である極めて保存性の高い領域を保持していることが示唆された。これらの結果から,8.3kbのDNA断片はP. gladioliの検出および同定に有効であると考えた。
  • 田辺 憲太郎, 朴 杓允, 柘植 尚志, 甲元 啓介, 西村 正暘
    1995 年 61 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ナシ黒斑病菌Alternaria alternata (Fr.) Keissler Japanese pear pathotypeは,酢酸から1, 8-ジヒドロキシナフタレンを経て黒色メラニンを生産することが知られている。本菌の分生胞子に突然変異原としてN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグアニジンを処理し,菌叢色が親株と異なる突然変異株AKT88-1 (Alm-), AKT88-2 (Brm1-)およびAKT88-3 (Brm2-)を選抜した。親株の菌叢が黒色であるのに対して,突然変異株はそれぞれ白色,淡褐色および褐色の菌叢を形成した。菌体中のメラニン生合成中間代謝物の蓄積について調査した結果,AKT88-2株の菌体にはサイタロンが,AKT88-3株の菌体には1, 3, 8-トリヒドロキシナフタレン(1, 3, 8-THN)の酸化物2-ヒドロキシジュグロン(2-HJ)がそれぞれ蓄積していた。AKT88-1株の菌体には,1, 3, 8-THN, 2-HJだけでなく1, 3, 6, 8-テトラヒドロキシナフタレン(1, 3, 6, 8-THN)の酸化物フラビオリンの蓄積も検出できなかった。一方,AKT88-1株はサイタロン添加培地で培養した場合,菌体のメラニン化が誘起された。以上の結果から,突然変異株のメラニン生合成系における欠損部位は,AKT88-1株が酢酸から1, 3, 6, 8-THN, AKT88-2株がサイタロンから1, 3, 8-THN, AKT88-3株が1, 3, 8-THNからバーメロンをそれぞれ合成する段階であると推定した。メラニン欠損変異株の二十世紀ナシ葉に対する病斑形成能力は,親株と同程度であった。また,メラニン生合成阻害剤トリシクラゾールは,本病原胞子の二十世紀ナシ葉に対する病斑形成能力やセロハン膜における侵入行動には全く影響しなかった。以上の結果,メラニンはナシ黒斑病菌の病原性発現における必須因子でないと考えられる。
  • 眞岡 哲夫, 河野 伸二, 宇杉 富雄
    1995 年 61 巻 1 号 p. 34-37
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    宮古島のウイルス罹病パパイアからパパイア奇形葉モザイクウイルス(PLDMV)抗血清に反応しないひも状ウイルス(P126)が分離された。P126はパパイア,ウリ科植物およびアカザ科植物に感染した。P126, PLDMV (P56)およびPRSV-P (HA)はいずれも,パパイアでは奇形およびモザイクを生じ各分離株を区別するのは困難であったが,Chenopodium amaranticolor, C. quinoa, Cucumis metuliferus (Acc. 2459)およびキュウリ(ハウスキングL)ではP126, PRSV-P (HA)とPLDMV (P56)の感染性または病徴が異なり,両者を区別できた。P126の粒子長は800-820nmであった。P126はPRSV-Pと極めて近い血清関係が認められたが,PLDMVとの間には血清関係が認められなかった。これらの結果から,P126はPRSV-Pと同定され,わが国でのPRSV-Pの初発生が確認された。奄美大島,沖縄本島,宮古島および石垣島における両ウイルスの分布状況をELISA法,汁液接種,電顕観察などにより調べたところ,PLDMVは調査した全ての島から高率に検出されたが,PRSV-Pは宮古島および石垣島でわずかに検出され,南西諸島のパパイアにはPLDMVが多く発生しPRSV-Pの発生は少ないことが明らかになった。
  • 何 学友, 後藤 正夫
    1995 年 61 巻 1 号 p. 38-40
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    中国で1977年に発表されたPseudomonas cunninghamiaeによるコウヨウザン葉枯細菌病は,病原細菌の学名が国際細菌命名規約の改定によって失効したまま現在に至っている。筆者等は1992年に福建省南部地方で発見されたコウヨウザンの細菌病について,病徴,病原菌の細菌学的性質および寄生性の検討を行った。その結果,本病害は病徴および病原菌の性質から上記の葉枯細菌病と同一の病害と認められた。本病原細菌はインゲンに寄生性を示さず,Agathis heterophyllaおよびPodocarpus nagiに病原性を示す点でP. cunninghamiaeの記載と異なった。細菌学的性質は炭素源としてβ-アラニンおよび2-ケトグルコン酸を利用する点を除いてP. syringae pathovarsのそれに一致した。そこで本細菌をP. syringae pv. cunninghamiae pv. nov.と命名し,PC1菌株(ATCC51416, ICMP11894)を基準菌株に指定する。
  • Gilda J. MIRANDA, M.L.M. YAMBAO, Pepito Q. CABAUATAN, S. Raja VENKITES ...
    1995 年 61 巻 1 号 p. 41-43
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Rice tungro spherical virus (RTSV)の部分純化および純化試料の外被蛋白質をウエスタンブロット法を用いて解析した。その結果RTSV外被蛋白質は3種あり,そのうち最も分子量の大きいCP3蛋白質が純化中のドリセラーゼ処理により分解を受けていることが判明した。
  • 岡部 郁子, 鳥山 重光
    1995 年 61 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    タバコモザイクウイルスを黒ボク土壌に混合した後,土壌からウイルスの再分離・検出を試みたが,ウイルスはほとんど分離できなかった。この土壌を超高分解能走査電子顕微鏡で観察したところ,土壌粒子表面に多数のウイルス粒子が付着していた。黒ボク土壌から粘土を精製すると,吸着されるウイルス粒子数は増加し,逆に,土壌から非晶質粘土鉱物(アロフェン)を除去すると,吸着されるウイルス量は著しく低下した。また,非アロフェン質黒ボク土や灰色低地土ではウイルス吸着量は少なかった。以上から黒ボク土壌中のアロフェンがウイルスの土壌吸着の主因であることがわかった。
  • 小林 享夫, 渡嘉敷 唯助
    1995 年 61 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    種子島でパパイアの葉の両面に白色類円状の病斑を生じる病害が,観察・採集された。病原菌の分離と分離菌の接種による病原性の確認,および菌学的検討の結果,新種Cercosporidium insulare Kobayashi et Tokashikiによる新病害として記載した。また,ブラジルとハワイから記録のあるCercospora mamaonis Viégas et Chuppを,その形態的特徴からPseudocercospora属に移し,P. mamaonis (Viégas et Chupp) Kobayashi et Tokashiki, comb. nov.とした。
  • 中村 茂雄, 本藏 良三, 宇垣 正志, 大島 正弘, 大橋 祐子
    1995 年 61 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    遺伝子組換えによるウイルス抵抗性植物作出を目的として,リボザイムの実用性を検討した。キュウリモザイクウイルス(CMV) RNA3の3a遺伝子内を1か所または2か所切断するようにデザインしたハンマーヘッド型リボザイムを作製し,そのin vitro転写RNAをCMV全RNAと混合してインキュベートしたところ,予想されたRNA3の切断片が確認された。このリボザイムをバイナリーベクターに挿入し,アグロバクテリウムを用いてタバコを形質転換した。得られた形質転換後代を用いて,CMVに対する抵抗性検定を行ったところ,リボザイムを発現する植物は対照としたアンチセンスを発現する植物より強い抵抗性を示した。
  • 森田 昭
    1995 年 61 巻 1 号 p. 57-62
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    キウイフルーツ花腐細菌病は長崎県の各産地で発生し,多く発生する年と少なく発生する年が隔年的にみられ,このことは前年度の着果数と密接に関係していることが認められた。また,1983年から1989年の調査では,本病の初発生は,4月第5半旬から5月第3半旬の間におこった。本病の発生と降雨量の関係では,キウイフルーツの落葉期である11月から12月および萌芽期の3月の降雨量とに有意性が認められた。
    本病が蕾に発生すると,すべて奇形果になるかまたは落蕾した。花に発生した場合,重症のときにはすべて落花し,中症のときには健全果は7%,軽症のときのそれは11%であった。本病の発生と収量の関係には高い相関が認められ,本病の発病率が46%以上になると収量が目標の10a当たり2.5トン(1個の果実重量100g, 1m2当たり25個の果実)以下となり,大きな減収をもたらした。
  • 第3報 イネ各種菌核病菌のイネ体上における分布
    門脇 義行, 磯田 淳, 塚本 俊秀
    1995 年 61 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    イネ各種菌核病菌の上位葉鞘への進展経路を解明するためイネ株上の各菌核病菌の分布について調査した。本田中期には褐色紋枯病,赤色菌核病および褐色菌核病の発病茎では当該菌核病菌のほかに数種の菌核病菌が根,不伸長茎部や枯死葉鞘などから検出された。これらの発病株やイネ株間に自生した無病徴イネの根部,不伸長茎部や下位葉鞘からは各種の菌核病菌が検出され,本田中期には各種菌核病菌が株元を中心に生息していることを確認した。褐色紋枯病,褐色菌核病,灰色菌核病の成熟期における発病茎では,病斑が下位葉鞘に一度形成されると,最上位葉鞘の病斑まで各葉鞘に連続して形成されていた。いずれの菌核病発病茎も病斑形成の有無にかかわらず,地際付近の枯死葉鞘から最上位葉鞘の病斑部まで菌糸は連続して分布していた。このように,イネ疑似紋枯病に関与する各種菌核病菌は根部や下位葉鞘等株元に早い時期から生息しており,登熟期以降に上位葉鞘に進展し,病斑形成に至ることが明らかとなった。
  • 水野 明文, 野津 祐三, 門田 育生, 西山 幸司
    1995 年 61 巻 1 号 p. 69-74
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Curtobacterium flaccumfaciensに特異的に反応するモノクローナル抗体(MAb)の作製を試みた。抗原としてC. flaccumfaciens pv. flaccumfaciens NCPPB 390からDe Boer and Wieczorekの方法(P-1)とYakrus and Schaadの方法(P-2)で抽出した粗菌体タンパク質を用い,常法によって11種(P-1由来7種,P-2由来4種)のMAbを得た。これらのうちP-2由来の3種のMAbはイソタイプがIgG3で他の8種のMAbより高い種特異性が認められ,中でも3P2はC. flaccumfaciens pv. oortiiの1菌株を除き,C. flaccumfaciens 12菌株の生菌体と反応した。その他の8種のMAbはイソタイプがIgMでCurtobacterium属ほか3属に属する多数の供試グラム陽性細菌と反応した。P-1由来のMAb 1P1およびP-2由来のMAb 3P2に対するP-1およびP-2の抗原性はglucoamylase処理では失活しなかったが,さらにproteinase Kあるいはtripsin処理することで失活または低下した。よって,これら2種のMAbが認識する抗原物質はタンパク質であると推定した。また,ウエスタンイムノブロット法による検定から,これら2種のMAbが認識している抗原は2本のバンドとして検出され,そのうち分子量が約59Kのバンドは両MAbに共通していた。
    以上の結果から,3P2はC. flaccumfaciensの特異的検出に利用できると考えた。さらにこれら11種のMAbはいずれもC. flaccumfaciensに近縁な各種グラム陽性細菌の抗原解析へ利用できると判断した。
  • 吉田 重信, 白田 昭, 吉田 滋実, 小林 享夫
    1995 年 61 巻 1 号 p. 75-81
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    全国の15県より収集した罹病クワ葉から,炭そ病菌の分離・同定を行ったところ,Colletotrichum dematiumが35菌株,Glomerella cingulata (=C. gloeosporioides)が11菌株,C. acutatumが10菌株得られ,いずれも未記載の種であった。そこでこれら分離菌株の菌叢片を接種源とし,切り取ったクワの葉に対する病原性を検定した。病斑形成割合は有傷および無傷接種とも,C. dematium, C. acutatumの菌株で高率であったのに対し,G. cingulataでは低率であった。3種ごとに,菌叢片接種試験で比較的強い病原力を示した数菌株を供試し,感受性クワ品種に対する分生子の病原性を調べた。有傷接種の場合,C. dematiumは菌叢片接種試験と同様に顕著な病斑を形成した。G. cingulataも比較的強い病原力を示したが,C. acutatumの病原力は弱かった。無傷接種の場合もほぼ同様であったが,C. acutatumでは病斑形成が認められなかった。このように接種条件によって病原力に変動が見られたが,3種ともクウ葉に対して病原性を示し,特にC. dematiumは強い病原性を示すことが判明した。なお,これまでクワ炭そ病菌として知られていたC. morifoliumは,その分生子の形態的比較から今回分離されたC. dematiumと同一種であると判断されたため,C. dematiumの異名であると提案した。
  • 有本 裕, 本間 保男
    1995 年 61 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1995/02/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    晴天日(1987年2月)の午後2時に切り取った,ガラス温室で栽培したキュウリ苗の葉からは3.38mMの果糖,3.25mMのブドウ糖および10.19mMのしょ糖が検出された。このキュウリ苗を1日遮光下に保つと,これらの糖類はいずれも検出されなくなった。糖類を消費した(糖フリー)キュウリ苗の根を遮光下で2%しょ糖溶液に浸漬したところ,24時間後には葉から1.6mMのしょ糖が検出された。48時間後になるとしょ糖(4.5mM)だけでなく,果糖(17.6mM)およびブドウ糖(15.0mM)が検出された。ガラス温室で栽培しているキュウリ葉上に接種されたS. fuliginea分生子は発芽し,48時間後には菌糸長が1593μmに達し,96時間後は64.8個の吸器が形成され,7日後にはコロニーの中心に74.3本/mm2の分生子柄が形成された。これに対し,糖フリーキュウリ葉上でも分生子は発芽したが,菌糸を71.4μm伸長し,吸器を1個形成したが,その後の生育はほぼ完全に停止した。この状態でキュウリ苗の根を2%しょ糖溶液に浸漬すると,2時間後には菌糸が10.9μm伸長した。蒸留水浸漬では0.2μmの伸長であった。糖フリーキュウリ葉上でのS. fuligineaの生育は根を浸漬したしょ糖溶液の濃度によった。0.5%では7日後にコロニーの中心に15.5本/mm2の分生子柄が形成された。1.0%では21.6本,2.0%では72.6本,4.0%では82.8本/mm2の分生子柄が形成された。
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