日本植物病理学会報
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ピーマンに発生した葉脈黄化病とその病原ウイルス,ピーマン葉脈黄化ウイルス(新称)について
与那覇 哲義豊里 哲也河野 伸二尾崎 武司
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1995 年 61 巻 3 号 p. 178-184

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抄録

1981年3月,沖縄県北中城村のハウス栽培のピーマンに葉脈黄化病が発生した。その病徴より本病はウイルスに起因するものと考えられた。その病原は汁液接種では伝染しなかったが,接ぎ木伝染し,また2種のアブラムシ,モモアカアブラムシ(Myzus persicae Sulz.),ワタアブラムシ(Aphis gossypii Glover.)により永続的に伝搬された。この病原の宿主範囲は狭く,トウガラシ属植物(ピーマン,トウガラシ)にのみ感染し,感染した植物は葉脈黄化,葉巻症状を示し,また奇形果も観察された。感染ピーマンを用いた部分純化標品中に直径約25nmの球状粒子が観察された。同様に感染ピーマン葉を用いた超薄切片では宿主の師部細胞にのみウイルス様粒子が観察された。寒天ゲル内拡散法,ELISAを用いて血清学的関係を調査したところ,オオムギ黄萎ウイルス,ジャガイモ葉巻ウイルス,タバコえそ萎縮ウイルス,ビート西部萎黄ウイルスの各Luteovirus抗血清とは反応しなかった。以上の実験結果から,本ウイルスはLuteovirus groupに属する新しいウイルスと考えられ,本病をピーマン葉脈黄化病,本ウイルスをピーマン葉脈黄化ウイルス(Pepper vein yellows virus)と命名したい。

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