日本植物病理学会報
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選択培地およびELISAとの併用による植物根圏からのPseudomonas cepaciaの直接的特異検出法
土屋 健一本間 善久河本 征臣鈴井 孝仁
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1995 年 61 巻 4 号 p. 318-324

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抄録
土壌伝染性病害の生物防除素材として有望視されているPseudomonas cepacia (Pc)を植物根圏から効率的に得るために,選択培地(S-PC-1)および高感度簡易ELISA法とを組合せた直接的特異検出法を開発した。各地圃場から採取したダイズ,ネギ,オオムギ,ハクサイ,レタスおよびタバコから,それぞれ調製した根部および根圏土壌試料をS-PC-1に塗布し,40°Cで4日間,続いて28°Cで3日間,2段階培養した場合,いずれからも約103∼104cfu/gの割合で細菌コロニーが検出された。特に,ネギ根部からは約104∼106cfu/gと,他に比べ高い頻度で検出された。Pc特異抗体を用いたELISA検定では,102∼103cfu/gの感度で検出された。S-PC-1培地から無作為に選抜した細菌コロニーの80%以上が同抗体と反応し,またELISA陽性試料からの同80∼100%が40°Cで同選択培地に生育し,両手法の併用によりPcの特異的検出は増幅された。併用法により選抜された41分離株は,タマネギ腐敗能ならびに細菌学的諸性質からいずれもP. cepaciaと同定された。これらはPhytophthora capsiciおよびP. solanacearum等の重要病原菌に対して抗菌作用を示すとともにダイコン種子へのバクテリゼーションによりRhizoctonia solani AG-4による苗立枯病(damping-off)を抑制した。以上により,本法は生物防除素材としてのP. cepaciaの効率的特異検出および動態解析に有効であると判断された。
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