日本植物病理学会報
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61 巻, 4 号
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  • 有江 力, 林 義雄, 米山 勝美, 長谷 あきら, 古谷 雅樹, 山口 勇
    1995 年 61 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    フザリウム菌と属レベルで特異的に反応するモノクローナル抗体(MoAb) API9-2を用いて,植物組織内のフザリウム菌を血清学的に検出する手法の確立を試みた。本抗体はFusarium spp.の菌糸とのみ反応し,小型分生子,大型分生子,厚膜胞子とは反応しなかった。植物組織内のF. oxysporum菌体の検出の方法として,蛍光抗体(IFA)法,direct tissue-blotted immunobinding assay (DT-IBA)法を用いた。感染植物の茎や根の組織片をMoAb API9-2およびFITC標識抗マウスIgMを用いてIFA法により蛍光抗体染色したところ,植物組織中の菌糸が組織と明確に区別されて観察できた。一方,罹病あるいは健全植物の切片をDT-IBA法で検定したところ,約4時間の短時間のうちに罹病植物のみが陽性反応を示した。IFA法は植物組織内の病原菌の観察に,DT-IBA法は苗の早期簡易検診に有効であると考えられた。
  • 土屋 健一, 本間 善久, 河本 征臣, 鈴井 孝仁
    1995 年 61 巻 4 号 p. 318-324
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    土壌伝染性病害の生物防除素材として有望視されているPseudomonas cepacia (Pc)を植物根圏から効率的に得るために,選択培地(S-PC-1)および高感度簡易ELISA法とを組合せた直接的特異検出法を開発した。各地圃場から採取したダイズ,ネギ,オオムギ,ハクサイ,レタスおよびタバコから,それぞれ調製した根部および根圏土壌試料をS-PC-1に塗布し,40°Cで4日間,続いて28°Cで3日間,2段階培養した場合,いずれからも約103∼104cfu/gの割合で細菌コロニーが検出された。特に,ネギ根部からは約104∼106cfu/gと,他に比べ高い頻度で検出された。Pc特異抗体を用いたELISA検定では,102∼103cfu/gの感度で検出された。S-PC-1培地から無作為に選抜した細菌コロニーの80%以上が同抗体と反応し,またELISA陽性試料からの同80∼100%が40°Cで同選択培地に生育し,両手法の併用によりPcの特異的検出は増幅された。併用法により選抜された41分離株は,タマネギ腐敗能ならびに細菌学的諸性質からいずれもP. cepaciaと同定された。これらはPhytophthora capsiciおよびP. solanacearum等の重要病原菌に対して抗菌作用を示すとともにダイコン種子へのバクテリゼーションによりRhizoctonia solani AG-4による苗立枯病(damping-off)を抑制した。以上により,本法は生物防除素材としてのP. cepaciaの効率的特異検出および動態解析に有効であると判断された。
  • (1) 発生,病徴,分離,病原性
    佐藤 允通, 渡邊 恒雄, 古木 市重郎, 森田 儔
    1995 年 61 巻 4 号 p. 325-329
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    1975年静岡県下のハウスメロンに根が褐変し,コルク化を伴う根腐病が発生した。この罹病植物の根部組織から分離された6属の糸状菌の中で,Nodulisporium melonisは優占種であった。接種試験によりN. melonisはメロンに病原性を示したが,他の菌には全く病原性が認められなかった。N. melonisを接種した人為汚染土壌ではメロンとウリ科所属の5作物が発病したが,ヘチマや他の18供試作物は健全であった。
  • (2) 同定
    渡邊 恒雄, 佐藤 允通
    1995 年 61 巻 4 号 p. 330-333
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    メロン根腐病の病原糸状菌Nodulisporium melonis sp. nov.の形態を記載,図示した。本菌のPDA培養菌叢は,白色,均一で,裏面は淡褐色またはクリーム色,分生子柄は直立,無色,単純,輪生または不規則に分岐,45-280×1.2-2.3μm,各分枝先端の胞子形成部位に分生胞子をシンポジロ状に2-9個を集合して形成,胞子離脱後は抜歯後状となる。分生胞子は無色,単胞,楕円形または不整形,2.5-13.8×1.2-3.0μm,離脱胞子には袴,または分生子柄の一部(3.0-10.0×0.4-1.0μm)が残る。
  • 積木 久明, 梁井 秀樹, 青木 孝之
    1995 年 61 巻 4 号 p. 334-339
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    先に著者らは,ニカメイガ幼虫の消化管から氷核活性を有する糸状菌(Fusarium属菌)を初めて分離する事に成功した。しかし,種名までは明らかにできなかった。本実験において,その種名を同定するとともに,農業生物資源研究所が保有するFusarium属菌の中から氷核活性を有する菌株を探索した。ニカメイガより分離された氷核糸状菌は,Fusarium moniliforme var. subglutinansと同定された。本糸状菌の菌体懸濁液と無細胞培養液に氷核活性(凍結温度:-5°C付近)がみられた。調べたFusarium属14種37菌株中,F. moniliforme 2菌株,F. avenaceum 2菌株,F. tricinctum 1菌株に活性がみられた。これらの5菌株の氷核活性はニカメイガ由来の菌株とよく似ていた。しかし,F. moniliformeF. avenaceumの各1菌株は液体培地で継代培養すると短期間で氷核を生産しなくなった。この原因については現在研究中である。
  • 遠山 明, 林 邦博, 谷口 尚樹, 成瀬 知詠子, 小沢 佳子, 獅山 慈孝, 津田 盛也
    1995 年 61 巻 4 号 p. 340-345
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Alternaria alternataによるオクラ果実黒斑病(新称)を記載した。本病は流通市場でよく検出された。病原菌の生育適温は20°C以上であったが,本病の病徴は低温下でよく発達した。また,接種により品種との関係を調べた結果,どの品種でもよく発生が認められた。従来オクラの低温障害として記載記録されてきた品種低下の一部は本病による可能性が示唆された。
  • 遠山 明, 林 邦博, 谷口 尚樹, 津田 盛也
    1995 年 61 巻 4 号 p. 346-349
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Alternaria alternataによるオクラ果実黒斑病の発生と圃場での本病原菌の行動の関係を調査した。本病病原菌は圃場条件下でよく飛散していた。また,オクラ以外から分離したAlternaria alternataやその他のAlternaria属菌の接種によっても本病徴が発現した。したがって,圃場に普遍的に分布するAlternaria属菌は,オクラに付着し発病原因となることが明らかである。なお,圃場で生育途上にあるオクラ果実にA. alternataの分生子を接種した結果,収穫後の貯蔵中に高率に発病した。
  • Chaiwat TO-ANUN, Henry NELSON, 大内 成志
    1995 年 61 巻 4 号 p. 350-356
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Fusarium oxysporumに属する6種の分化型(f. sp. lycopersici, radicis-lycopersici, melonis, cucumerinum, fragariae, spinaciae)を用いて,プロトプラストを調製することなく,直接菌体から染色体DNAを遊離させ,パルスフィールド電気泳動によって分画する方法について検討した。ジャガイモ・ブドウ糖液培地で培養して得た小型分生胞子および発芽胞子を低温固形化アガロースに包埋し,endo-β-1, 3-glucanase, chitinase, chitosanase, Novozym 234で処理したのち,SDS存在下でprotease消化したものを泳動用試料とした。これら試料につき,染色体DNAの大きさに応じた4条件下でクロスフィールド電気泳動を行い,ethidium bromide染色によってDNAを検出した。その結果,endo-β-1, 3-glucanase処理が菌体からのDNAの放出に最も適していることが明らかとなった。また,供試11菌株から検出された染色体サイズDNA数は9∼15本,染色体DNAの大きさは0.8∼7.4Mb,ゲノムの大きさは36.0∼56.3Mbであると推定された。本法は他の糸状菌の染色体DNAの分離・分画にも適していると考えた。
  • 中島 隆, 内藤 繁男
    1995 年 61 巻 4 号 p. 357-361
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Microdochium nivaleはマイコトキシン生産菌として知られていたが,nivalenolが初めて単離されたFn-2B菌株の同定の誤りが指摘され,本来のM. nivaleのマイコトキシン生産能が疑問視されているため日本の菌株について再検討した。5種の植物から伝染環に基づいて収集した分離後2年以内の30菌株を供試し米培地で20°C・2週間および0°C・50日間,コムギ粒培地で20°C・2週間および0°C・50日間それぞれ培養した。また,コムギ穂に接種後20°C・4日間加湿した接種箱に静置したサンプル,圃場から採取したオーチャードグラス紅色雪腐病の被害茎葉も分析に供試した。その結果,全ての菌株・培養法で既知のマイコトキシン(deoxynivalenol, 3-acetyldeoxynivalenol, nivalenol, fusarenon-X, T-2 toxin, neosolaniol, zearalenone)は検出されなかった。Fn-2B菌株の菌糸生長温度はM. nivaleより高温性で,Fn-2B菌株は積雪下でコムギに対する病原性はなかった。
  • 内藤 繁男, 持田 秀之, 中島 隆, 大藤 泰雄
    1995 年 61 巻 4 号 p. 362-368
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Thanatephorus cucumeris (Rhizoctonia solani AG-2-3)の担子胞子を人為的にダイズ葉に接種すると,胞子は付着器を形成して角皮より侵入したのち組織内にstroma様菌糸塊を形成した。この菌糸塊より菌糸が組織内を放射状に生育し,接種6日あるいは7日後にはじめて直径1mmまたはそれ以下の一次病斑を生じた。さらに湿室に保つと,その病斑から葉面に伸び出した菌糸が気孔より侵入し,周囲に円形∼不定形の二次病斑を生じた。その病斑から葉面に現れた菌糸により感染が繰り返されて,病斑は大形化した。秋播きコムギ立毛時に間作したダイズ畑では,感染源のAG-2-3の担子胞子は刈取り前のコムギ茎に多数見られた。圃場でもstroma様菌糸塊を持つ一次病斑とその周囲に不定形の二次病斑とが胞子接種実験と同様な経過で観察された。発病はコムギの刈取り時期が遅れるほど,またダイズの栽植密度が高いほど多い傾向にあった。
  • 天野 政史, 豊田 和弘, 一瀬 勇規, 山田 哲治, 白石 友紀
    1995 年 61 巻 4 号 p. 369-375
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    エンドウ褐紋病菌のサプレッサーは宿主エンドウの原形質膜ATPase活性を抑制する。本報告では,可溶化・部分精製したエンドウ原形質膜ATPaseをリボソームに再構成し,ATPaseとプロトンポンプ活性に対するエリシターとサプレッサーの影響について調べた。再構成膜におけるプロトンポンプ活性はATPとMg2+に依存し,ATPaseの阻害剤で抑制されることからATPase依存性であることが推察できた。また,プロトンの勾配はプロトンイオノフォアやNH4Clの添加で打ち消された。本活性に対するエリシターとサプレッサーの影響を調べたところ,エリシターは全く影響を及ぼさなかったが,サプレッサーは濃度依存的に活性を抑制した。さらに,ホスファチジルイノシトール2リン酸は本活性を上昇させたが,その作用点はサプレッサーの作用点とは異なることが示唆された。これらの結果から,エンドウ褐紋病菌はサプレッサーを分泌し,エンドウ細胞におけるホメオスタシスを攪乱することにより抵抗反応を抑制し,感染に成功するものと考察した。
  • 上運天 博
    1995 年 61 巻 4 号 p. 376-380
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    ビワがんしゅ病菌NAE6は約25, 52および60メガダルトン(Mdal)の3つのプラスミドを有しており,それらプラスミドと病原性との関連を検討した。NAE6を生育最高温度の32°Cで培養することにより得られた52 Mdalプラスミド欠落株は常に病原性を失っていた。アガラーゼ処理によりアガロースゲルから分離した52 MdalプラスミドDNAをBamHIで消化し,広宿主範囲を示すコスミドベクターpLAFR3のBamHIサイトに連結し,パッケージング後,大腸菌に導入した。DNA断片が挿入された25のpLAFR3をヘルパープラスミドpRK2013を用いて,3つのプラスミドが欠落し病原性を失ったビワがんしゅ病菌に導入し,ビワ茎に接種した。その結果,約23kbのDNA断片が挿入されたpVIR6を導入した菌株は病原性を回復していた。また,ハイブリダイゼーションの結果は23kbのDNA断片が52 Mdalプラスミド由来であることを示していた。以上の結果より,52 Mdalプラスミドは病原性と関連することが明らかとなった。
  • ホップ矮化,カンキツエクソコーティス,リンゴさび果ウイロイドの実用的診断のためのリターン-PAGE及びDIG標識DNA・RNAプローブを用いたハイブリダイゼーションの比較
    李 世訪, 小野寺 清子, 佐野 輝男, 吉田 幸二, 王 国平, 四方 英四郎
    1995 年 61 巻 4 号 p. 381-390
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    圃場等で採集した多数の試料のウイロイド診断を行うため,リターン-PAGEとDIG標識DNA, RNAプローブによるハイブリダイゼーションについて,それぞれの検出感度とその実用性を比較検討した。検定材料として日本あるいは中国で発生しているホップ矮化ウイロイド(HSVd)に感染したホップ,ブドウ,カンキツ,カンキツエクソコーテイスウイロイド(CEVd)に感染したカンキツ(エトログシトロン)及びリンゴさび果ウイロイド(ASSVd)に感染したリンゴとナシを供した。リターン-PAGEはHSVd感染ホップ,CEVd感染シトロン及びASSVd感染リンゴからウイロイドを検出するのに有効であり,0.5∼0.05gの組織に相当する核酸試料を1レーンに泳動することで確実に検出できた。しかし,HSVd感染ブドウ,シトロン及びASSVd感染ナシではウイロイド濃度が低いので検出できなかった。またリターン-PAGEの欠点は,ホップ試料に見られたように複数のウイロイド(HSVdとHLVd)が感染している作物では,バンドの有無のみではウイロイドの同定までできない点にあった。DIG標識DNAプローブはリターン-PAGEに比べ2.5∼25倍検出感度が高かったが実用性は同程度であった。DIG標識RNAプローブを用いたハイブリダイゼーションは,DIG標識DNAプローブの25∼125倍,リターン-PAGEの100∼625倍以上鋭敏であり,HSVd感染ホップ,CEVd感染シトロン及びASSVd感染リンゴの他,HSVd感染ブドウの検出も可能であり,それぞれ2∼0.4mg程度の感染葉から確実に検出可能であった。しかし,HSVd感染シトロン及びASSVd感染ナシからウイロイドを検出することはできず,陰性の試料はキュウリ検定やRT-PCR等のより鋭敏な手法で再検査した方が確実な診断結果が得られると考えられた。以上の結果,DIG標識RNAプローブを用いたハイブリダイゼーションによる診断が最も鋭敏であり,信頼性,実用性も高く,特にHSVd感染ホップ,CEVd感染シトロン,ASSVd感染リンゴ及びHSVd感染ブドウの圃場診断等に有効と考えられた。
  • 岡根 泉, 柿島 真
    1995 年 61 巻 4 号 p. 391-394
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    日本産エンバク冠さび病菌Puccinia coronata var. avenaeの精子・さび胞子世代宿主を明らかにするため,エンバク上の冬胞子を用いて国内産および外国産のクロウメモドキ科植物への接種試験を行った。その結果,国内産のクロウメモドキ科植物には感染が認められず,北米,北欧においてエンバク冠さび病菌の精子・さび胞子世代宿主とされているRhamnus catharticaおよびR. cathartica f. dahuricaefolia上にのみ精子器およびさび胞子堆が形成された。このことから,エンバク冠さび病菌は国内において精子・さび胞子世代を形成せず,その感染にはエンバク上の夏胞子が重要な役割を果たしているものと考えられる。また,接種試験により形成された精子・さび胞子世代の形態観察を行った結果,さび胞子の表面には,他のイネ科植物の冠さび病菌と比較して小型で密な疣が存在することが明らかとなったため,他の胞子世代の形態も含めて,エンバク冠さび病菌の形態学的および分類学的再検討が必要であると考える。
  • 鈴木 一実, 杉本 光二, 林 博之, 光明寺 輝正
    1995 年 61 巻 4 号 p. 395-398
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    フルアジナム(フロンサイド®)のハクサイ根こぶ病に対する作用特性を検討した。1ppm以上のフルアジナム存在下で休眠胞子を培養したとき,遊走子発芽はほとんど観察されなかった。フルアジナムに接触させた休眠胞子を接種した場合には根毛感染の頻度が減少した。フルアジナムを土壌施用したところ,根毛感染および根こぶ形成は著しく阻害された。根毛感染成立後,第二次遊走子放出前にフルアジナム含有非汚染土壌にハクサイ苗を移植した場合,根こぶ形成は阻害されたが,皮層感染成立後では防除効果は認められなかった。以上から,フルアジナムは休眠胞子に殺菌的に作用するとともに根毛感染および皮層感染を阻害し,その結果根こぶ形成阻害をもたらすことが示唆された。
  • 鈴木 一実, 西村 昭廣, 杉本 光二, 光明寺 輝正
    1995 年 61 巻 4 号 p. 399-404
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    北海道各地から分離した豆類灰色かび病菌のフルアジナム,プロシミドン,チオファネートメチルおよびジエトフェンカルブに対する感受性を比較検討した。1990年および1991年に北海道各地の圃場から採集したインゲン,アズキの灰色かび病罹病莢から302菌株を単胞子分離し,4薬剤についてPSA培地上での菌糸生育阻害とインゲン葉での予防効果を調べた。フルアジナムに対する感受性は供試した菌株すべてでほとんど変わらず,菌糸生育阻害のEC95値および予防効果の最低有効濃度はそれぞれ1ppm以下および31ppm以下であった。プロシミドンとチオファネートメチルに対する感受性には菌株によって差異が認められ,実用濃度での防除効果の低下が問題になる耐性株が存在していた。さらに,フルアジナムはプロシミドンおよびチオファネートメチルに対する耐性株に対して感受性株と同様に高い抗菌活性を示した。これらのことから,フルアジナムは既存の薬剤に耐性を示す豆類灰色かび病の防除薬剤として有効であることが示唆された。
  • 曵地 康史, 江上 浩
    1995 年 61 巻 4 号 p. 405-409
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    オキソリニック酸(5-ethyl-5, 8dihydro-8-oxo [1, 3] di-oxolo [4, 5-g] quinoline-7-carboxylic acid,スターナ®)による出穂期における処理と種子処理,および種子の塩水選を組み合わせた体系による防除を2ヵ年にわたり行った。本防除体系は,イネもみ枯細菌病とイネ苗腐敗症に対して高い防除効果を示した。また,小穂,もみおよび種子に生存するPseudomonas glumaeの菌数が著しく減少した。よって,本防除体系はP. glumaeの伝染環に大きな影響を与えており,イネもみ枯細菌病とイネ苗腐敗症に対する総合防除法を確立する上で基本になると考えられる。
  • 茫 永堅, 山下 修一, 土居 養二
    1995 年 61 巻 4 号 p. 410-413
    発行日: 1995/08/25
    公開日: 2009/02/19
    ジャーナル フリー
    Cucumber mosaic virus (CMV) occurred widely in maize (Zea mays) and also rarely in teosinte (Euchlaena mexicana) in Kanto area, Japan. Isolates from maize plants were classified into two types (I and II) on their biological and serological properties. Isolate II, but not isolate I, infected to barley and wheat plants by sap inoculation. It suggested that the isolate I is closely to leguminous strain, but isolate II (tentatively named maize strain) may be a previously undescribed strain, on their host range and symptomatology. Isolates from teosinte plants appeared to be related to yellow (Y) strain on tabacco symptoms. We propose to designate teosinte necrotic mosaic for the disease.
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