日本植物病理学会報
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日本産エンバク冠さび病菌Puccinia coronta var. avenaeの精子・さび胞子世代
岡根 泉柿島 真
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1995 年 61 巻 4 号 p. 391-394

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抄録

日本産エンバク冠さび病菌Puccinia coronata var. avenaeの精子・さび胞子世代宿主を明らかにするため,エンバク上の冬胞子を用いて国内産および外国産のクロウメモドキ科植物への接種試験を行った。その結果,国内産のクロウメモドキ科植物には感染が認められず,北米,北欧においてエンバク冠さび病菌の精子・さび胞子世代宿主とされているRhamnus catharticaおよびR. cathartica f. dahuricaefolia上にのみ精子器およびさび胞子堆が形成された。このことから,エンバク冠さび病菌は国内において精子・さび胞子世代を形成せず,その感染にはエンバク上の夏胞子が重要な役割を果たしているものと考えられる。また,接種試験により形成された精子・さび胞子世代の形態観察を行った結果,さび胞子の表面には,他のイネ科植物の冠さび病菌と比較して小型で密な疣が存在することが明らかとなったため,他の胞子世代の形態も含めて,エンバク冠さび病菌の形態学的および分類学的再検討が必要であると考える。

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